日差しの強い時期になると、サングラスは「色が濃いほうが目に効くのか」という形で話題になります。売り場に並んでいるものを見比べれば、そう思うのも自然です。
ただ、日本の公的機関が市販品を実測したデータを読むと、色の濃さと紫外線カットの性能はつながっていませんでした。先に結論を書きます。見るのは色の濃さではなく、紫外線透過率の表示と、顔との隙間です。どちらも、公的な実測や研究で裏づけがあります。この記事では特定の商品の推奨や順位づけはしません。
目も日焼けする。急性と慢性は分けて見る
肌の日焼けと似たことが、目の表面でも起こります。ただし短時間で出る影響と、長い年月をかけて出る影響は、分けて考える必要があります。研究の量も、言える強さも違うからです。
短時間のほうは光角膜炎(こうかくまくえん)と呼ばれます。英国検眼士協会の臨床ガイドラインは、これを「防護のない状態で紫外線を浴びたことによる、角膜上皮細胞の障害」と定義しています(The College of Optometrists, 2025)。挙げられている症状は、目のごろつき、痛み、充血、まぶしさ、まぶたのけいれん、涙、かすみです。曝露から6〜12時間ほど遅れて出ることが多く、通常は24〜48時間で治まり、永久的な障害は残らないとされています。
ここで大事なのは条件のほうです。平地のロードを走っていてこれに至る、という話ではありません。関係してくるのは反射の強い場所です。WHOは、草地・土・水面が反射する紫外線は入射量の10%未満、砂は約15%、海のあわは約25%としています。そして新雪は特に反射しやすく、浴びる紫外線量をほぼ倍増させるとしています。標高が1,000m上がるごとに紫外線量は約10%増える、とも書かれています。雪の残る高地のトレイルや、真夏の海沿いのコースは、この条件に近づきます。
強い日射を浴びたあとに目の痛みや見えにくさが出た場合は、自分で判断せず眼科を受診してください。この記事は、症状から原因を見分けるためのものではありません。
長期のほうで、どれくらい関係があるかまで調べられているのは翼状片(よくじょうへん)です。白目の側の組織が角膜のほうへ伸びてくるもので、屋外で過ごす時間との関連が繰り返し報告されています。2026年に出た103研究・11,720,289人のメタ解析では、2023年時点の世界の有病率は8.22%と推計され、関連要因は次のように報告されました。
| 要因 | 報告されたオッズ比 |
|---|---|
| 農村に住んでいる(都市と比べて) | 2.20 |
| 屋外での仕事 | 1.66 |
| ドライアイの症状 | 1.37 |
| 男性(女性と比べて) | 1.26 |
| 眼鏡の使用 | 0.73 |
| 日よけ用品の使用 | 0.47 |
表:翼状片と関連が報告された要因。103研究・11,720,289人をまとめた値です。オッズ比が1より小さいほど、その要因を持つ人で翼状片が少なかったことを示します。観察研究をまとめた値であり、サングラスが病気を防ぐことを示したものではありません。(出典: Shan et al., 2026)
日よけ用品を使っている人で0.47という数字は目を引きます。ただしこれは観察研究のプール値です。日よけ用品を使う人と使わない人では、屋外にいる時間も職業も生活習慣も違います。その差を取り除けていないので、「かければ翼状片が半分になる」とは読めません。
曝露の量と発症の関係を見た古い研究もあります。西オーストラリアで行われた症例対照研究では、1日に目が受ける日射量が最も多い群のオッズ比は6.8(95%信頼区間 2.6〜19.7)でした(Threlfall & English, 1999)。27年前の研究で、曝露量は面接による聞き取りです。それでも、著者が結論に書いた一文は今も引かれます。目の防護はどの年代でも有益である、というものです。
白内障については、屋外作業者を対象とした研究のレビューがあり、サブタイプによって日射との関連の強さが異なると報告されています(Modenese & Gobba, 2018)。WHOと国際労働機関は、職業性の紫外線曝露と白内障について評価を進めている段階です。
限界を先に書いておきます。ランナーを対象に目の病気を調べた疫学研究は、今回探した範囲では見つかりませんでした。ここにあるのは、屋外で過ごす時間についての疫学です。ランナーの目が実際にどれだけ浴びているかを測ったデータではありません。
色の濃さと紫外線カットは、別のもの
日本の公的機関が市販品を実測したデータから始めます。神奈川県の消費生活課は2019年(令和元年)の10月から11月に、市販の22銘柄を試験機関に出して調べました。品名表示が「サングラス」のもの10種類と、それ以外の12種類です。
結果はこう書かれています。「紫外線透過率については、レンズの濃度に関係がなく、すべて表示値を満たしていました」(神奈川県, 2019)。
一方で、可視光線透過率——つまり見た目の濃さのほうは、表示どおりでないものも認められた、と報告されています。県のアドバイスも、ファッション性だけでなく実際に試着したうえで好みの濃さを選ぶように、という書き方です。
この非対称が、そのまま選び方になります。濃さの表示はあてが外れることがあり、紫外線の表示は全銘柄で守られていた。だから濃さは自分の目で確かめ、紫外線は表示を読む、という順番になります。
なぜ「表示を読む」なのか。日本の制度が、性能ではなく表示を管理しているからです。サングラスは家庭用品品質表示法の対象で、雑貨工業品品質表示規程に「五 サングラス」の項があります。表示が義務づけられているのは、品名、レンズの材質、わくの材質、可視光線透過率、紫外線透過率、使用上の注意、表示者名と連絡先です。測定はJIS T 8141(遮光保護具)の方法によります。
許される誤差も決まっています。可視光線透過率は表示値との差が±7以内、紫外線透過率は表示値の±10%以内です。
ここが誤解されやすいところです。サングラスの表示を定めた日本の法令に、紫外線カット率の最低基準はありません。決まっているのは「表示すること」と「表示がどれだけずれてよいか」だけです。ですから「安全基準を満たしたサングラス」という言い方には、対応する国内の基準がありません。できるのは、表示された数値を自分で読むことです。
品名の欄も、思ったより多くを教えてくれます。
| 品名の表示 | 意味 |
|---|---|
| サングラス | 屈折力が±0.125Dの範囲内で、平行度が0.166プリズムディオプトリ以下のもの |
| 偏光サングラス | 上に加えて、偏光度90%以上・偏光軸のずれ15度以下のもの |
| ファッション用グラス | 上のどちらにも当てはまらないもの。あまり長い時間目にかけない旨を表示する義務がある |
表:家庭用品品質表示法(雑貨工業品品質表示規程 五 サングラス)が定める品名の3区分。視力補正用の眼鏡は、この規程の対象から外れています。(出典: 消費者庁)
この3つを分けているのは、レンズの光学的な精度(屈折力と平行度)と偏光の性能で、紫外線を遮る力ではありません。紫外線透過率の表示義務は、3区分に共通してかかります。違うのは使用上の注意のほうで、「ファッション用グラス」にだけ、あまり長い時間目にかけない旨を表示する義務があります。パッケージの品名欄は、いちばん短時間で確かめられる情報です。
「UV400」の表示についても触れておきます。これは400nmまでの紫外線を遮るという意味の任意表示で、公的な認証制度ではありません。眼光学の規格では紫外線A波の上限が380nmに置かれているので、400という数字はそれより20nm広い範囲を指しています。研究者からも、最低基準を満たすだけでなくUV400の性能を目指すべきだという提案が出ています(Masili et al., 2024)。ただし日本で売られているものには紫外線透過率の数値表示があるので、そちらを読むほうが直接的です。
価格についても一つ。値段が高いほど紫外線を遮る、という関係は確認できていません。米国眼科学会は、サングラスが安全で効果的であるために高価である必要はない、としています。同学会が比べているのは価格そのものではなく表示の有無で、紫外線を100%遮ると表示されたドラッグストアの製品を選ぶほうがよい、という書き方です(AAO, 2026)。ここでの100%はレンズ単体についての表示であり、目に届く量がゼロになるという意味ではありません。この点は後の節で扱います。先に見た神奈川県の試験でも、銘柄によらず紫外線透過率は表示値を満たしていました。安い製品が危ないとも、高い製品なら間違いないとも書けません。見るのは値札ではなく表示欄です。
「濃いのにUVカットがないと危ない」は、理由のほうが更新された
定番の説明を先に再現します。暗いレンズをかけると視界が暗くなり、瞳孔が開く。開いた瞳孔からより多くの紫外線が入るので、紫外線を遮らない濃いレンズは、かけないより危ない。この説明を否定するために書いているのではありません。表示のない濃いレンズを避けるという結論のほうは、いまも支持されています。更新されたのは理由です。
2024年に、この主張を定量的に検証した研究が出ました。研究チームは実測したレンズ214枚を使い、瞳孔の大きさと視野の広さの両方を計算に入れて、目に入る紫外線の量を推計しています(Masili et al., 2024)。抄録には、この議論はメディアでも専門文献でも語られてきたが、きちんと定量化された文献はなかった、と書かれています。
結果は、瞳孔径が紫外線の流入に果たす役割は大きくない、というものでした。主役は視野で、その寄与は瞳孔の寄与を最大314.3%上回っていました。長く言われてきた説明のほうが、否定された形です。
では何が起きているのか。明るい屋外で、人は無意識に目を細めています。その細めた状態そのものが、太陽光を減らす自然な仕組みとして働いている。サングラスをかけると視界が暗くなり、この無意識のまぶたの反応が起こりにくくなる。結果として視野が広がり、目に入る紫外線が増える。研究チームはそう説明しています。その理由は瞳孔ではなく、まぶしさで細めていた目を開かせてしまうことだと報告されています。
結論の側も見ておきます。この研究は、紫外線A波の防護が86%未満のレンズでは、かけないほうが目に入る紫外線が少なくなる可能性がある、としています。ただし86%は計算モデルの上で出た境界値で、人で確かめられた閾値ではありません。「86%以上のものを買えばよい」という買い方に読み替えないでください。日本での実務的な言い方は、やはり紫外線透過率の表示を確認する、になります。
日本で普通に売られている製品については、神奈川県の実測が「濃度に関係なく、すべて表示値を満たしていた」と示しています。表示欄を見て買う限り、この問題に当たる場面は多くないと考えられます。確かめようがないのは、紫外線透過率の表示が見当たらない製品のほうです。
ランニング用として見るのは、規格・大きさ・隙間
「ランニング用サングラス」というカテゴリーには、国際規格が実在します。ISO 12312-3:2022(2022年5月12日発行)です。日本語の名称は「目及び顔の保護-サングラス及び関連眼鏡類-第3部:ランニング,サイクリングおよび同様のアクティブなライフスタイルのためのサングラス」です。
適用範囲には、日射・風・ほこり・雨といった環境要素からの保護、と書かれています。ここは期待してよい範囲です。一方で、高い耐衝撃性が求められる競技用途は適用範囲外だと明記されています。設計の考え方も、事故のときに装着者への二次的な危害を減らすことであって、高い耐衝撃性を与えることではない、とされています。眼鏡の形では難しいから、という理由まで書かれています。
つまり、ランニング用サングラスは飛来物から目を守る防具ではありません。ランニング中の目の外傷について、数値で示せる疫学データも見つかりませんでした。規格が想定しているのは、日射・風・ほこり・雨と、転んだときに壊れ方で怪我を増やさないことです。なお、これは国際規格であって、日本国内で売るために適合が求められるものではありません。
次に大きさです。ここは数字ではっきり差が出ます。帽子の記事で使ったのと同じ研究グループが、同じ3Dモデルの手法で、サングラスの形状別に目が受ける紫外線量を予測しています(Backes et al., 2019)。単位のJ/m²は紅斑加重紫外線量で、日焼け(紅斑)を起こす力で重みづけした量です。
無防護の1718.4 J/m²に対し、中サイズのサングラスで160.7、大サイズで133.8、ゴーグルでは0.3でした。防護率に直すと、角膜では中サイズ90.6%、大サイズ92.2%です。正面から入る光については、中と大でそれほど変わりません。
差がはっきり出るのは横です。側方の眼窩周囲、つまり目のまわりの皮膚では、中サイズの予測防護率60%に対して大サイズは81.4%でした。側方の眼部でも73.4%と81.6%です。大きいレンズの利点は、正面の性能ではなく、横からの光にどこまで届いているかの側にあります。
頭の向きの影響も報告されています。無防護で正午に上を向いた場合、角膜が受ける量は908.1 J/m²と推計されました。大サイズのサングラスでは、この上向きの分がモデル上は遮られたと報告されています。ただし特定の姿勢・条件での予測値です。
この研究は3Dモデルによる予測で、走行中の人体で測った値ではありません。帽子の記事で引いたBackes et al.(2018)と同じ制約です。著者らの結論も慎重で、防護の効き方は形状・装用位置・頭の向き・曝露条件に強く左右されるとしています。そして、サングラスは紫外線を完全には遮らず、他の防護手段と組み合わせるべきだとされています。
そして、この記事でいちばん実務的な数字がここです。38年前に、安価なサングラス32組を使った実測研究があります(Rosenthal et al., 1988)。レンズ単体の紫外線B波の透過率は、32組すべてが2%未満でした。ところが、そのサングラスをマネキンの頭に装着して目に届く量を測ると、入射した紫外線の最大14.1%が到達していました。さらに額から6mm浮かせた状態にすると、到達する割合は3.7%から44.8%まで広がりました。
レンズの数値は、目に届く量を保証しません。効いているのは、レンズと顔の間の隙間です。顔に沿った形が勧められるのは、見た目の問題ではなく、この隙間の問題です。ただし38年前の研究で、対象は安価な製品32組、測ったのはマネキンでした。走っている人間で確かめたものではありません。
横からの光については、もう一つの説明もあります。側方から入った光が角膜で屈折して鼻側に集まる、という指摘です。翼状片が鼻側にできやすいことの説明として引かれ、横を遮る形が勧められる理由の一つとされています。ただし、この理論には再検討を求める報告もあります。ここでは数値までは書きません。先に見た隙間の数字を踏まえると、そこがいちばん効いています。
帽子とは、代替ではなく補完
帽子の記事で見た数字と並べておきます。3Dモデルの予測では、夏の正午に帽子をかぶらない場合の顔全体の紫外線量は平均3.3SED、鼻は6.1SEDでした。広いつばの帽子では顔全体平均1.7SEDまで下がりますが、比較された帽子の形では予測防護率は最大でも76%です。散乱した紫外線は、つばの形にかかわらず入ってくるためです(Backes et al., 2018)。
帽子は上からの光を、サングラスは目そのものを引き受けます。どちらも単独では完結しません。「帽子とサングラスで何%カット」という合成の数値は原典に存在しないので、この記事では書きません。言えるのは、代替関係ではなく補完関係だということです。帽子の側の話はランニングの帽子と暑さ対策グッズにまとめています。
見え方と快適さは、性能とは別の話
偏光レンズはどうか。正視の学生45人を対象に、制御されたまぶしさの条件で視機能を測った研究があります(Ebrahimi et al., 2025)。サングラスなし・非偏光・偏光の3条件で、遠見と近見の視力はいずれも0.00 logMARで差がありませんでした。立体視は94.33/105.67/101.33秒角で有意差なし、斜位も有意差なしです。
ただしこれは室内での視機能検査です。偏光レンズが本来ねらう水平面からの反射、つまり濡れた路面や水面のぎらつきを減らす働きは、この実験では十分に再現されていません。ですから「偏光は意味がない」とは書けません。書けるのは、視力や立体視といった基本的な視機能は偏光の有無で変わらなかった、というところまでです。米国眼科学会も、偏光そのものが紫外線防護を与えるわけではなく、特定の活動での見え方を良くするものだとしています(AAO, 2026)。
レンズの色についても、比較した実験があります。クリケット選手21人が、クリア・ブルー・ローズ・レッドの4種の色で、屋内で18球を捕球した研究です(Christie et al., 2023)。捕球数に条件間の有意差はなく(p = 0.424)、捕球の質にも差は出ていません。レッドだけは、視覚的な快適性と標的の見やすさが有意に劣っていました。
屋内でまぶしさのない条件の実験なので、屋外にそのまま当てはめることはできません。それでも、色でパフォーマンスが上がるという説明に実験的な裏づけは乏しい、とは言えます。著者らも、サングラスによる能力向上を支持する経験的な証拠は限られている、と書いています。
風と乾燥についても、期待を正確にしておきます。ドライアイの疑いのある14人に10分間の風を当てた実験では、眼鏡なしと通常の眼鏡で、涙の蒸発量とまばたきの回数が有意に増えました。増えなかったのは、顔に密着して保湿材を備えた特殊な眼鏡の条件だけです(Ogawa et al., 2018)。
つまり「サングラスをかければ目が乾かない」とは言えません。通常の眼鏡形状では抑えられなかった、というのがこの実験の核心です。風で涙が蒸発すること自体は確認されていて、顔との隙間が小さいほど抑えられる方向、というところまでが現在分かっていることになります。
「生涯の紫外線の80%は18歳まで」は、原典で否定されている
子どもの話になると、決まって出てくる数字があります。生涯に浴びる紫外線の80%は18歳までに浴びる、というものです。「WHOによると」という枕詞がつくこともあります。
この数字は、2003年の研究で否定されています。Godarらは曝露量を計算し直し、アメリカ人は18歳までに生涯の紫外線量の25%未満しか浴びていない、と報告しました(Godar et al., 2003)。同じ結論は、オーストラリア・英国・オランダについても示されています。
誤解の出どころも特定されています。もとになったのは「18歳までSPF15以上の日焼け止めを使えば、生涯の非黒色腫皮膚がんの罹患を78%減らせる」という発がんリスクの計算でした。この皮膚がんのリスクは紫外線量の2乗に比例するというモデルに基づく数字です。この「リスクの減り方」が、いつのまにか「紫外線量そのものの配分」として語られるようになった、というのが著者らの説明です。
この訂正は、保護者にとって悪い知らせではありません。むしろ逆です。「子どものうちに浴び切ってしまう」のではなく、「何歳から減らしても意味がある」ということだからです。前に引いた翼状片の症例対照研究も、目の防護はどの年代でも有益である、と結論に書いています(Threlfall & English, 1999)。
そのうえで、子どもの目について報告されていることを一つ。若年成人42人を対象に、315nmの紫外線を感知できるかを測った研究では、全員が感知でき、その感度の個人差は30倍以上に及びました(Hammond & Renzi-Hammond, 2018)。虹彩の色や黄斑色素の密度との関連はなく、男性のほうが感受性が高い傾向でした。同じ年代でも、これだけ違うということです。
なお、子どもの目のほうが紫外線を通しやすいという説明もよく見かけます。ただし根拠として引かれるのは1960年代に少数の摘出眼で測られた古い研究で、この記事では数値を扱いません。
では子どもにサングラスをかけさせるべきか。日本の学会や公的機関がそう推奨した文書は、今回探した範囲では見つかりませんでした。ですからこの記事では「かけさせるべき」とは書きません。書けるのは、帽子・日陰・時間帯の工夫と合わせて考える材料になること、そして子ども用の製品でも、大人向けと同じように紫外線透過率の表示欄を読めるということです。玩具に近い子ども用のグラスが「ファッション用グラス」の区分に入っている場合、パッケージには、あまり長い時間目にかけない旨が書かれているはずです。子どもの外遊びそのものについては発達期の遊びの考え方で扱っています。
よくある質問
Q. 紫外線カット率は何%以上のものを選べばいいですか。 A. 「◯%以上」という基準は、サングラスの表示を定めた日本の法令にはありません。あるのは表示の義務と、表示値からのずれの許容範囲(紫外線透過率で±10%以内)だけです。市販22銘柄の実測では、濃さに関係なく全銘柄が表示値を満たしていました。数値の大小より、表示欄があるかどうかを先に見てください。
Q. 色は何色を選べばいいですか。 A. 屋内で色だけを比べた実験では、捕球の成績に差は出ていません(Christie et al., 2023)。屋外の路面の見え方を色別に比べた研究は見つかりませんでした。濃さの好みは表示より試着のほうが当てになるので、実際にかけて選ぶのが現実的です。
Q. 走っているとずり下がります。少し浮いていても大丈夫ですか。 A. 額から6mm浮かせた実験では、目に届く紫外線の割合が最大44.8%まで広がりました(Rosenthal et al., 1988)。マネキンでの38年前の測定ですが、隙間が効くという方向ははっきりしています。ずれにくさは、見た目ではなく防護の一部だと考えてください。
Q. 度付きの眼鏡を使っています。 A. 家庭用品品質表示法のサングラスの規程は、視力補正用の眼鏡を対象から外しています。度付きの製品は別の枠組みの話になるので、この記事では扱いません。眼科や眼鏡店にご相談ください。
Q. 目が痛い、まぶしくて開けにくい、見えにくいときは。 A. 眼科を受診してください。強い日射のあとに遅れて症状が出ることがあると報告されていますが(The College of Optometrists, 2025)、症状から原因を判断できる記事ではありません。道具の話と、受診が要る話は別のものです。
まとめ
限界を先に書きます。ランナーの目の紫外線曝露を直接測った研究はなく、ランナーを対象にした眼の病気の疫学もありません。形状別の防護は3Dモデルの予測値で、隙間の実測は38年前のマネキン実験です。日本の市販品を実測した公的データは、確認できた範囲で2019年の22銘柄だけでした。そのうえで、見る順番はつけられます。
- 見るのは濃さではなく表示。市販22銘柄の実測では「紫外線透過率については、レンズの濃度に関係がなく、すべて表示値を満たしていました」(神奈川県, 2019)。一方で濃さの表示はずれることがあります
- サングラスの表示を定めた日本の法令に、紫外線カット率の最低基準はありません。決まっているのは表示の義務と誤差の範囲だけです。紫外線透過率の表示は品名の3区分に共通してかかるので、まず表示欄を探すことになります
- 「瞳孔が開くから危ない」は、機序としては否定されました。その理由は瞳孔ではなく、まぶしさで細めていた目を開かせてしまうことだと報告されています(Masili et al., 2024)
- 大きさと隙間で桁が変わる。3Dモデルの予測では角膜の紫外線量が1718.4から133.8 J/m²に下がり、実測では隙間の有無で目に届く割合が3.7%から44.8%まで動きました
- 帽子とは補完関係。サングラスは紫外線を完全には遮らず、他の防護手段と組み合わせるべきだとされています(Backes et al., 2019)
いま持っているサングラスのパッケージか、なければ製品ページを開いて、品名欄と紫外線透過率の表示を確かめてみてください。持っていない方は、売り場で最初に手に取るのを色ではなく表示欄にしてみてください。濃さのほうは、そのあと鏡の前で決めれば足ります。
関連リンク
- ランニングの帽子と暑さ対策グッズ——帽子の防護と、冷却グッズの効き方
- 夏のランニング——暑さ指数で練習を判断する
- ランニングウェアの選び方——素材・重ね方・夜に見えること
- 走り始めに何を買うか——最初に要る3つと、後でいい5つ
- ゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ?——保護者の方へ
参考文献
- 神奈川県. サングラスの紫外線透過率等の商品テスト(令和元年10月〜11月実施、試験機関: 一般財団法人日本眼鏡普及光学器検査協会). https://www.pref.kanagawa.jp/docs/r7b/cnt/f370222/p1224229.html(2026年8月確認)
- 消費者庁. 雑貨工業品品質表示規程(五 サングラス). https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/law/law_07/item_005.html(2026年8月確認)
- 消費者庁. 家庭用品品質表示法 品目別品質表示の手引き「サングラス」. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_24.html(2026年8月確認)
- JIS T 8141:2016 遮光保護具. 日本規格協会. https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/?bunsyo_id=JIS+T+8141:2016
- ISO 12312-3:2022. Eye and face protection — Sunglasses and related eyewear — Part 3: Sunglasses for running, cycling and similar active lifestyles. https://www.iso.org/standard/72628.html
- ISO 12312-1:2022. Eye and face protection — Sunglasses and related eyewear — Part 1: Sunglasses for general use. https://www.iso.org/standard/77321.html
- Masili M, Duarte FO, Ventura L. Calculation of solar ultraviolet influx in the eye considering the field of view and pupillary dilation due to sunglasses. Scientific Reports. 2024;14:6604. doi:10.1038/s41598-023-50831-9
- Backes C, Religi A, Moccozet L, Vuilleumier L, Vernez D, Bulliard JL. Sun exposure to the eyes: predicted UV protection effectiveness of various sunglasses. Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology. 2019;29(6):753-764. doi:10.1038/s41370-018-0087-0
- Backes C, Religi A, Moccozet L, Vuilleumier L, Vernez D, Bulliard JL. Facial exposure to ultraviolet radiation: predicted sun protection effectiveness of various hat styles. Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine. 2018;34(5):330-337. doi:10.1111/phpp.12388
- Rosenthal FS, Bakalian AE, Lou CQ, Taylor HR. The effect of sunglasses on ocular exposure to ultraviolet radiation. American Journal of Public Health. 1988;78(1):72-74. doi:10.2105/ajph.78.1.72
- Shan S, Wu J, Liu X, Zhou J, Zheng Y, Rudan I, Song P. Global, regional, and national prevalence of pterygium in 2023: a systematic review and modelling analysis. Journal of Global Health. 2026;16:04271. doi:10.7189/jogh.16.04271
- Threlfall TJ, English DR. Sun exposure and pterygium of the eye: a dose-response curve. American Journal of Ophthalmology. 1999;128(3):280-287. doi:10.1016/s0002-9394(99)00161-0
- Modenese A, Gobba F. Cataract frequency and subtypes involved in workers assessed for their solar radiation exposure: a systematic review. Acta Ophthalmologica. 2018;96(8):779-788. doi:10.1111/aos.13734
- The College of Optometrists. Clinical Management Guideline: Photokeratitis (ultraviolet [UV] burn, arc eye, snow blindness). Version 15, 2025. https://www.college-optometrists.org/clinical-guidance/clinical-management-guidelines/photokeratitis_ultraviolet_uv_burn_arceye_snowblin(2026年8月確認)
- World Health Organization. Radiation: Ultraviolet (UV) radiation(Q&A、2016年3月9日更新). https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-ultraviolet-%28uv%29
- Ogawa M, Uchino M, Kawashima M, et al. Evaluation of the effect of moist chamber spectacles in patients with dry eye exposed to adverse environment conditions. Eye & Contact Lens. 2018;44 Suppl 2:S174-S179. doi:10.1097/ICL.0000000000000431
- Ebrahimi F, Kangari H, Akbarzadeh-Bagheban A, Rahmani S. Effect of polarized sunglasses on visual functions. International Journal of Ophthalmology. 2025;18(12):2325-2330. doi:10.18240/ijo.2025.12.14
- Christie CJ, Nellemann S, Davies T, Fourie JL, Davy JP. Sunglass tint does not impact the indoor catching performance of cricket fielders. Frontiers in Sports and Active Living. 2023;5:1188270. doi:10.3389/fspor.2023.1188270
- Godar DE, Urbach F, Gasparro FP, van der Leun JC. UV doses of young adults. Photochemistry and Photobiology. 2003;77(4):453-457. PubMed: 12733658
- Hammond BR Jr, Renzi-Hammond L. Individual variation in the transmission of UVB radiation in the young adult eye. PLoS ONE. 2018;13(7):e0199940. doi:10.1371/journal.pone.0199940
- American Academy of Ophthalmology. How to choose the best sunglasses to avoid sun damage(2026年7月20日更新). https://www.aao.org/eye-health/glasses-contacts/sunglasses-3
