体力テストの記録カードを持ち帰ってきて、「50m走、9秒6だった」と言われる。その9秒6が同じ学年のどのあたりなのかは、すぐには見当がつきません。表と図を先に置きます。
表:小学生の50m走の平均タイムと、「まんなかの幅」(秒)
男子
| 学年 | 平均 | まんなかの幅 |
|---|---|---|
| 小1(6歳) | 11.59 | 10.6〜12.6 |
| 小2(7歳) | 10.69 | 9.8〜11.6 |
| 小3(8歳) | 10.19 | 9.3〜11.1 |
| 小4(9歳) | 9.70 | 8.9〜10.6 |
| 小5(10歳) | 9.38 | 8.5〜10.3 |
| 小6(11歳) | 8.90 | 8.1〜9.8 |
女子
| 学年 | 平均 | まんなかの幅 |
|---|---|---|
| 小1(6歳) | 11.95 | 10.9〜13.0 |
| 小2(7歳) | 11.07 | 10.2〜12.0 |
| 小3(8歳) | 10.43 | 9.5〜11.3 |
| 小4(9歳) | 10.04 | 9.2〜10.9 |
| 小5(10歳) | 9.64 | 8.8〜10.5 |
| 小6(11歳) | 9.24 | 8.4〜10.1 |
同じ数字を横向きに並べると、学年が上がるにつれて平均だけでなく幅ごと左(速い側)へ動いていくのが見えます。
※ 平均は、スポーツ庁「体力・運動能力調査」令和6年度(2024年度)の年齢別の結果から作成しました(2025年10月12日公表、前の年度分が毎年10月ごろに出ます)。調査は年齢別ですが、小学生は6〜11歳の6区分なので、6歳=小1、11歳=小6として読めます。 ※ 「まんなかの幅」は、同じ資料に載っているばらつきの大きさを表す数字を使い、平均の前後にその1つ分をとって、0.1秒の単位にそろえたものです。まんなかを中心に左右へ同じだけ散らばっているとすれば、幅の中におよそ3人に2人が入ります。実際の散らばり方は公表されていないため、幅も割合も目安です。
学校の記録は0.1秒の単位です。小4の男子なら、平均を「9.7秒くらい」と読み替えて見比べれば足ります。
平均より速いのか、ゆっくりなのか——3つに分けて読む
平均と比べるだけなら簡単です。手元の秒数が表の平均より小さければ、その学年の平均より速い。大きければ平均よりゆっくり。ここに線を引くこと自体は、ためらう必要がありません。
ただし平均は1本の線なので、0.1秒違うだけで左右が入れ替わります。そこで幅を重ねます。同じ学年の子を並べたときのまんなかのかたまりが「まんなかの幅」で、これを境に3つに分かれます。
- 平均よりはっきり速い側 — 幅の左端より速い(小4男子なら8.9秒より速い)
- まんなかの幅 — この中に、同じ学年のおよそ3人に2人(小4男子なら8.9〜10.6秒)
- 平均よりはっきりゆっくりな側 — 幅の右端よりゆっくり(小4男子なら10.6秒よりゆっくり)
幅の左端より速ければ、同じ学年の中では平均よりはっきり速い側にいます。幅の右端よりゆっくりなら、その反対側です。幅の中にはまだ幅があり、平均より少し速い子も少しゆっくりな子も、どちらもここに入ります。小4の男子で9.2秒なら、平均(9.70秒)より速く、位置としてはまんなかのかたまりの中。
3つのゾーンは、順位をつけるための線ではなく、いまいる場所を確かめるための目盛りです。なお、この調査の測定は5〜7月。学校の体力テストとほぼ同じ時期なので、持ち帰った記録カードとそのまま並べられます。
0.1秒の差は、気にしすぎなくて大丈夫です
1. 書き方の決まりがある。 実施要項では、0.1秒より細かい部分を切り上げて書きます。9.51秒でも9.6秒として残るので、0.1秒の差は書き方の決まりだけでも生まれます。
2. 同じ学年に、生まれ月が最大11か月違う子が並ぶ。 4月生まれと翌年3月生まれが同じ「小3」の欄に入ります。体の大きさに差が出やすい低学年ほど、この11か月は効いてきます(育ちのペースの個人差はゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ?でも触れました)。
3. 測るのは1回だけ。 ストップウォッチでの手動計時で、走路や風の条件も学校ごとに違います。同じ子が同じ日にもう1本走れば、数字は動きます。
学校でもらう紙の「得点」と、いちばん速いあたり
学校によっては、記録カードに「50m走 6点」のような点数が入って返ってきます。これは全国の平均と比べた点数ではなく、次の1枚の表にあてはめた数字です。
表:50m走の得点(新体力テスト・小学生用、秒)
| 得点 | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| 10点 | 8.0以下 | 8.3以下 |
| 9点 | 8.1〜8.4 | 8.4〜8.7 |
| 8点 | 8.5〜8.8 | 8.8〜9.1 |
| 7点 | 8.9〜9.3 | 9.2〜9.6 |
| 6点 | 9.4〜9.9 | 9.7〜10.2 |
| 5点 | 10.0〜10.6 | 10.3〜10.9 |
| 4点 | 10.7〜11.4 | 11.0〜11.6 |
| 3点 | 11.5〜12.2 | 11.7〜12.4 |
| 2点 | 12.3〜13.0 | 12.5〜13.2 |
| 1点 | 13.1以上 | 13.3以上 |
※文部科学省「新体力テスト実施要項(6歳〜11歳対象)」より作成。
ここで誤解されやすい点が2つあります。
1つめ。この表は、学年で分かれていません。小1も小6も、同じ1枚の表で点数がつきます。 ですから低学年ほど点数は低く出ます。さきほどの平均をあてはめると、まんなかの子の得点は小1で3点、小6で7点(男女とも)。同じ「まんなかの子」でも、学年が上がるだけで4点動きます。小1の3点は、遅いという意味ではなく、同じ学年のまんなかあたりの位置です。
2つめ。「A」「C」のような段階は、8種目の得点を全部足した合計(満点80点)に対して付きます。 合計のほうの基準は年齢ごとに決まっています。50m走だけでA〜Eが出ることはありません。
いちばん速いあたりは、何秒くらいか
では、いちばん速い子は何秒で走るのか。個人の最高記録は公表されていません。この調査から分かるのは、学年ごとの平均とばらつきまでです。
かわりに位置の目安になるのが、いま見た表の上端です。公式に用意されている物差しの上端は10点の帯で、男子8.0秒以下・女子8.3秒以下。こちらも学年で分かれていないので、小1でも小6でも同じ秒数です。
小6の男子なら、まんなかの幅が8.1〜9.8秒。8.0秒以下はその左端の外側に出ます。小4の男子は幅の左端が8.9秒ですから、0.9秒ぶん外側。学年が下がるほど、この帯は幅のずっと外側へ離れていきます。
よくある質問
Q. タイムを縮めるには、何をすればいいですか。
この記事は「いまどのあたりか」を読むためのもので、練習の中身までは扱っていません。走り方から手をつけるなら、かけっこの姿勢と腕振りの2本が入口です。運動会など目標の日が決まっているなら、残りの日数から練習の並べ方を組めるいつから始めるかを逆算するカレンダーもどうぞ。走り方の変化が記録に表れるまでの時間には、個人差があります。
Q. 中学生になると、どのくらいですか。
同じ調査では、12歳(中1にあたる年齢)の平均が男子8.41秒・女子9.07秒、14歳(中3にあたる年齢)で男子7.47秒・女子8.66秒です。ただし、表を上から下へつなげて読むときには注意が1つ。小学生はスタンディングスタート、中学生からはクラウチングスタート(手を地面についた低い姿勢)で測ります。小6と中1の差には、体の育ちだけでなくスタートのしかたの違いも混ざっています。
記録カードを、子どもと一緒に見る
記録カードは、子どもと一緒に見てみてください。そのうえで、今日の秒数をどこかに書き留めておく。比べる相手を「同じ学年の平均」から「先月の自分」に変えると、次に見る数字が決まります。
数字は、順番をつける道具にも、自分の変化を見る道具にもなります。どちらとして手渡すかを決めているのは、たいてい大人のほうです。
この記事の数字は、次の公的な資料から取りました。
参考文献
- スポーツ庁「体力・運動能力調査」令和6年度(2024年度)/統計表「1 年齢別テストの結果」(statInfId=000040358868、2025年10月12日公表)— e-Stat 政府統計の総合窓口
- スポーツ庁「令和6年度体力・運動能力調査 報告書 3.統計数値表」— PDF
- 文部科学省「新体力テスト実施要項(6歳〜11歳対象)」(50m走の得点の表、総合評価の仕組み、記録の切り上げ、スタートのしかた)— PDF
- 文部科学省「新体力テスト実施要項(12歳〜19歳対象)」(中学生以上のスタートのしかた)— PDF
