子どもの​走り方が​気に​なる​とき——かけっこの​姿勢、​家庭で​見る​3つ

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走り出す構えをする子どもの線画イラスト

運動会や公園で走っている後ろ姿を見て、なんとなく走り方が気になった。他の子と何か違う気がするけれど、どこをどう見ればいいのかは浮かばない。

先に答えを置きます。家で見るのは3つだけです。走る前の立ち姿、目線、一歩目。この順に、上から下へ見ていきます。

表:家庭で見る3つ(指導上の目安)

見るところいつ、どこから見るかかける言葉の例
1 立ち姿走る前に、横から10秒「おへそを軽く引っこめて」
2 目線走っているところを、正面か横から「あそこを見て走ってごらん」
3 一歩目走り出しの数歩を、横から「前の足で地面を押して」

※ 3つを同時に直そうとせず、気になった1つから声をかけてください。走りやすさや育ちのペースには個人差があります。

そのうえで、正直なところを1つ。「姿勢を直せば速くなる」と言い切れる根拠は、それほど強くありません。この記事がお渡しするのは、速さの約束ではなく、走りの土台を崩さないための見方です。

この記事は走り方の見方をまとめたもので、発達の評価はしていません。走り方のほかにも気がかりがあるとき(言葉のやりとり、手先の使い方、ふだんの様子など)は、園や学校の先生、かかりつけの小児科など、お子さんの様子を続けて見てもらえる相手にご相談ください。ここで扱うのは、走る前の立ち姿から一歩目までの見方だけです。

なお、走っていて痛みを訴えたときは、その日は練習を中止し、痛みが続く場合は医療機関にご相談ください。立ち姿や歩く練習の途中で痛がるときも同じです。

家庭で​見る​3つの​ポイント

1|まっすぐ​立てているか

走る前の立ち姿から始めます。足を腰の幅くらいに開き、頭のてっぺんが糸で上に引っぱられているイメージで背筋を伸ばす。肩に力が入って上がっていないか、あごが前に突き出ていないかを、横から見てあげてください。「まっすぐ」と言われると、胸を張りすぎて腰を反らせることがあります。そこで「おへそを軽く引っこめて」と一言添えると、自然な位置に戻りやすい。

立てたら、その姿勢のままかかとからつま先へ静かに10歩、公園の直線を歩いてみます。保てるようなら、同じ姿勢でゆっくり走る順に。手順はまっすぐ姿勢づくりのガイドにまとめました。姿勢の作りやすさには個人差があり、体幹が発達の途中にある子ほど、まっすぐを保ち続けるのは難しいものです。長く止めさせると嫌がるので、「今のまっすぐ、いいね」と一瞬をほめるくらいの気軽さで十分です。

2|目線は​どこを​見ているか

足元やすぐ手前の地面を見て走ると、背中が丸まり、あごが引けて、いわゆる「前かがみでバタバタ」した走りになりやすい。逆に目線が高すぎると、体が起き上がりすぎて力が前に伝わりにくくなります。

一つの目安は、数メートルから十数メートルほど先の地面に目線を置くくらいです。走る先にコーンや目印を置いて「あそこを見て走ってごらん」と伝えると、定まりやすい。下を向きすぎず、上を向きすぎず。ただ、意識させすぎると首や肩に力が入る子もいるので、細かく矯正するより、走ったあとに「どこ見て走った?」と振り返るくらいのほうが身につきやすい傾向があります。

3|スタートの​一歩目​(軽い​前傾)

ここは姿勢の中でも、速さとの関わりが指摘されている部分です。大人を対象にした研究ですが、まっすぐ立った姿勢から上体を軽く前に傾けて走り出したときのほうが、加速が速くなる傾向があったと報告されています(Jakeman et al., 2023)。体の重心が前に移り、地面を後ろへ押して進みやすくなる、という考え方です。成人での結果なので、そのまま子どもに当てはまるとは言い切れません。

コツは「軽く」です。深くお辞儀のように傾ける子がいますが、傾けすぎると一歩目でつまずいたり、上体だけ前に倒れて足がついてこなかったりします。角度そのものより、「前の足でしっかり地面を押して出る」感覚のほうを目安にします。

構えの作り方と、家での練習のしかた(「よーい、ゴー!」で5mだけを3本)はスタートダッシュを速くする「よーい」の構えにまとめました。腕の振り方が気になる場合はかけっこの腕振りで扱っています。

くわしい​数字:8〜9歳と​11〜12歳を​比べた​研究

8〜9歳と11〜12歳の男の子のスプリント動作を比較した研究では、走りの技術(動きのかたち)そのものは2つの年齢グループでほとんど差がなく、地面を押す力の大きさには差があって年長のほうが大きかったと報告されています(Wdowski et al., 2020)。速さの差には、動きのかたちよりも地面を押す力など体力面の差が関わった可能性がある、と研究者らは述べています。サッカークラブに所属する男児18名を2つの年齢群で比べた小規模な研究で、技術が何歳で「決まる」かを追跡したものではありません。

表の「力積」は、地面をどれだけ強く、どれだけ長く押したかをまとめて表した量です。

比較した項目U9(8〜9歳)U12(11〜12歳)報告された差
走り出しの動きのかたち(技術・姿勢)グループ間で有意差なし
垂直方向の力積(体重で標準化)0.22 BW·s0.25 BW·sU12が大きい(P=0.027)
水平方向の力積(体重で標準化)0.07 BW·s0.09 BW·sU12が大きい(P=0.043)
0〜5mのタイム基準約6.1%速いU12が速い
0〜15mのタイム基準約5.9%速いU12が速い
発達段階による走りの変化(Wdowski et al., 2020 の報告値にもとづく整理)。動きのかたち=技術には差が見られず、力の大きさに差が出ていた点に注目。BW·s は体重で標準化した力積の単位。値はサッカークラブに通う男児 U9=10名・U12=8名という小規模な対象での報告であり、すべての子どもに当てはまる数値ではありません。

この研究は「姿勢を直したら速くなった」という介入を確かめたものではありません。2つの年齢グループの比較で、この対象では技術に差が見られず、力には差があった。それだけの観察です。

では姿勢に取り組む意味はないのか。そうではありません。研究の著者ら自身も、子どもが年齢とともに獲得していく力を活かすために、走りの技術練習を取り入れることを勧めています。崩れた姿勢のまま全力で走り込む習慣がつくと、あとから直すのに時間がかかりやすくなります。速さを保証するためではなく、土台を崩さないために姿勢を見る。ここは研究の結論ではなく、指導上の考え方としてお読みください。

よく​ある​質問

Q. 走り方は、あとからでも直せますか。

直しにくくなる、という研究を示すことはできません。年齢が上がってから走り方に手を入れて、動きが変わることもあります。ただ、崩れた姿勢のまま全力で走り込む時間が長いほど、その形が本人にとって「いつもの走り」になり、変えるのに時間がかかりやすくなります。急いで直すというより、早いうちから良い姿勢の感覚に触れておく、という位置づけです。

Q. 何回言っても直りません。

3つを同時に伝えていないか、まず確かめてみてください。渡す言葉は1回に1つで足ります。走っている最中に細かく言うより、走り終えてから「どこ見て走った?」と本人に振り返らせるほうが残ります。スマートフォンで横から10秒だけ撮って一緒に見ると、本人のほうが先に気づくこともあります。

Q. タイムを縮めたいときは、姿勢からでいいですか。

姿勢は速さの近道ではありません。いまのタイムが同じ学年のどのあたりかを先に見ておくと、力の入れどころが決めやすくなります(50m走の平均タイム)。運動会など目標の日が決まっているなら、残りの週数から練習を並べるいつから始めるかを逆算するカレンダーもどうぞ。

まとめと、​次の​一歩

  • 家で見るのは3つだけです。走る前の立ち姿、目線、一歩目。3つ同時ではなく、気になった1つから。
  • 引用した研究は同じ子どもを追跡したものでも、姿勢の改善を試したものでもないため、「姿勢を直せば速くなる」とは言えません。そのうえで、8〜9歳群と11〜12歳群の走りの動きのかたちに明確な差は見られず、地面を押す力には差が報告されました(Wdowski et al., 2020)。
  • それでも早い時期から良い姿勢の感覚に親しんでおく意味はあります(研究の結論ではなく指導上の考え方です)。土台を崩さないために姿勢を見る、という位置づけです。
  • ポイント1「まっすぐ立てているか」は、反りすぎ・肩の力みに注意しながら、一瞬をほめる気軽さで。
  • ポイント2「目線」は、下を向きすぎず上を向きすぎず、数メートルから十数メートル先の地面を目安に。
  • ポイント3「スタートの一歩目」は軽い前傾を。成人では前傾と加速の関連が報告されていますが(Jakeman et al., 2023)、傾けすぎず「前足で押して出る」感覚を大切にします。
  • この記事は走り方の見方をまとめたもので、発達の評価はしていません。気がかりがあるときは、園や学校の先生、かかりつけの小児科にご相談ください。
  • 走りやすさや発達には個人差があります。痛みが出たときは中止し、続くようなら医療機関にご相談ください。

次に公園へ行ったときは、走る前の立ち姿を横から10秒だけ見てみます。3つを同時に直そうとせず、気になった1つから声をかけてみてください。

関連リンク


参考文献

  1. Wdowski, M. M., Noon, M., Mundy, P. D., Gittoes, M. J. R., & Duncan, M. J. (2020). “The Kinematic and Kinetic Development of Sprinting and Countermovement Jump Performance in Boys.” Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, 8, 547075. doi:10.3389/fbioe.2020.547075
  2. Jakeman, B., Clothier, P. J., & Gupta, A. (2023). “Transition from upright to greater forward lean posture predicts faster acceleration during the run-to-sprint transition.” Gait & Posture, 105, 51–57. doi:10.1016/j.gaitpost.2023.07.280
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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