持久走大会の​練習は​何を​する?​走るのが​好きではない​子と​過ごす1か​月

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ゆっくり走る子どもと道の線画イラスト

秋にお便りが配られて、持久走大会の日付が決まる。走るのが得意な子ではないので、走り方より当日をどんな気持ちで迎えるかが気にかかる。この記事は、そこから始めます。

先に答えを置きます。小学校の体育で示されている持久走は、長くても5〜6分程度の運動です。文部科学省の学習指導要領解説が示しているのは距離ではなく時間で、高学年は「無理のない速さで5〜6分程度の持久走をすること」と例示されています。低学年は2〜3分程度、中学年は3〜4分程度のかけ足です。

学年別に示された時間の目安。1・2年は2〜3分、3・4年は3〜4分、5・6年は5〜6分
文部科学省の学習指導要領解説で例示されている時間の目安です。大会の距離や区切り方は学校ごとに決まるため、この時間がそのまま大会の長さになるとは限りません。

大会そのものは、教科の体育とは別に、学校行事として各学校が計画しています。距離にも区切り方にも全国共通の基準はありません。公表されている学校の例を並べます。

表:持久走大会の距離・時間の例(公表されている3校)

大会の例1・2年3・4年5・6年
距離で区切る学校①800m1,000m1,200m
距離で区切る学校②1,000m1,300m2,000m
時間で区切る学校3分4分5分

※ 富山県魚津市立清流小学校/聖徳大学附属小学校/滋賀県愛荘町立秦荘西小学校が公表している記載から作成しました。3校の例であって、全国の分布ではありません。

ですから、家で何をするかを決める前に、まず学校からのお知らせで距離(または時間)を確かめてください。ここが決まらないと、練習の形も決まりません。

「走るのが​好きではない」のは、​めずらしい​ことでは​ありません

小学5年生の1つのクラス(28人。男児12人・女児16人)で、持久走の授業のやり方を3種類比べた研究があります(黒川・西山, 2024)。授業を実施する前から持久走に好意的だったのは、男児は8割ほど、女児は4割ほどでした。授業のあとはどちらも上がりましたが、3つのやり方の間に差はつきませんでした。

1つの学級での報告なので、これが全国の姿だとは言えません。それでも、「走るのは好きじゃない」と言う子が教室の中で少数派ではないこと、とくに女の子でその割合が高かったことは読み取れます。

ここでお伝えできるのは、嫌いを直す方法ではありません。大会までの1か月を、当日の見通しが少しでも立つように使う——その組み立て方です。苦手そのものへの関わり方は、体育の「できた」を助ける声かけに整理しています。

大会の​前に、​いちど​確かめて​おきたい​こと

ぜん息のあるお子さんについては、注意が要る条件が示されています。日本臨床スポーツ医学会の学術委員会小児科部会がまとめた提言では、「特に冷たく乾燥した環境で4-5分以上続けて運動すると、呼吸により気管支の熱、水分が喪失し、運動誘発喘息が起こる」とされています(本村ほか, 2020)。冬に行われる持久走大会は、この条件と重なりやすい場面です。予防のしかたは一人ひとり違うため、大会の前に主治医にご相談ください。

心臓の病気やぜん息など、運動に制限がありうる持病がある場合は、主治医が記入する「学校生活管理指導表」という書式があります(日本学校保健会)。学校はこれをもとに参加のしかたを決めますので、学校にも早めに伝えておくと話が進みます。

持病がない場合も、当日の朝に熱やかぜの症状があるときは、無理をさせないでください。走っている最中に、胸が苦しい・息が吸いにくい・ゼーゼーする・気分が悪い、といったことがあれば、その場でやめて大人に伝えるよう、あらかじめ話しておきます。なお、走っていて痛みを訴えたときは、その日は練習を中止し、痛みが続く場合は医療機関にご相談ください。

大会まで​1か月で​できる​こと、​できない​こと

正直に書きます。体の持久力そのものを1か月で作り替えるのは、難しいところです。学校で行われた運動プログラムを集めて調べた報告では、持久力の指標をみたプログラムは、平均で約14週間・週に2.7回ほど続けられていました(Wu et al., 2023)。1か月は、その長さに届きません。

では何ができるのか。大会まで1か月でできるのは、体力を作り替えることではなく、当日を「知っている道」にしておくことです。

ペースの配り方については、64の研究をまとめた報告があります(Menting et al., 2022)。同じ課題を何度か繰り返した7件では、そのすべてで、走り慣れていない人のペースの配り方が変わっていったと報告されています。年齢による違いもあり、9歳くらいまでは出せるだけ出して落ちていく走り方が多く、10歳を過ぎるころから、速く入って中盤で落ち、最後に上げる形へ変わっていくとされています。

伝え方にも手がかりがあります。12歳前後の子ども38人を対象にした実験では、子どもは時間の手がかりよりも、距離や場所の手がかりのほうが使いやすいと報告されました(Chinnasamy et al., 2013)。「5分がんばれ」より「あの角までは抑えて、最後の1周で上げよう」のほうが届きやすい、と考えられます。

ここから先は、研究の結論ではなく指導上の目安です。大会と同じ時間、または同じ距離を、歩きが混じってもいいので1〜2回だけ通しておく。できれば当日と同じコースで、難しければ家の近くの決まった道で。

距離を確かめる、同じ長さを1〜2回通す、当日の合言葉を決める、の3つの手順を並べた図
大会までの1か月の進め方(指導上の目安)。研究が直接確かめた手順ではありません。

走る回数を増やすことより、「これで終わり」という区切りを体で知っておくことを勧めます。

「ゆっくり走ってね」だけでは、​たぶん​伝わりません

さきほどの小学5年生の研究では、「やや軽い〜ややきつい」くらいの強さで走るよう伝えたやり方も比べています。「ゆっくり走ってね」と伝えても、心拍数は走り始めから高いままでした。走っている間はおおむね180台から190台で、ほかのやり方との差はありませんでした(黒川・西山, 2024)。

言葉だけで強さを下げるのは、子どもには難しい。だとすれば当日の合言葉は、「ゆっくり走る」ではなく「歩いてもいいから、止まらずに戻ってくる」のほうが実行しやすくなります。

走り方そのものを整えたいときはかけっこの姿勢、残りの週数から練習を組み立てたいときは運動会のかけっこ練習、いつから始める?が近い内容です。

よく​ある​質問

Q. 前日と当日の朝は、何をすればいいですか。

走り込みを足す時期ではありません。前の晩の睡眠、朝ごはん、集合時刻と持ち物、靴ひも。この段取りを親子で一緒に確認しておくだけで、子どもの不安は減ります。朝に熱やかぜの症状があるときは、走らせずに学校へ伝えてください。

Q. 毎日走らせたほうがいいですか。

日本陸上競技連盟が1998年に示したガイドラインでは、練習は週2日ないし3日、1日の総走行距離は5kmを超えないこととされています。28年前のもので、その後の改訂は確認できませんでしたが、現在も同連盟のサイトに掲載されています。大会前でも、週2〜3回を上限の目安にします。

Q. 歩いてしまうのは、よくないことですか。

歩くのを混ぜる進め方を子どもで確かめた研究は、調べた範囲では見当たりませんでした。続けて走れる時間から始めて、走る時間を少しずつ延ばすやり方を勧めます。これは研究で確かめられた手順ではありません。大会でも「歩いてもいいから、止まらずに戻ってくる」で十分です。

Q. 持久走の平均タイムは、何分くらいですか。

小学生の持久走の全国平均は、公的な調査には見当たりません。全国で毎年測られている小学生の8種目(握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・50m走・立ち幅とび・20mシャトルラン・ソフトボール投げ)に、持久走が入っていないためです。平均が公表されている種目もあり、たとえば50m走の平均タイムは年度ごとに出ています。比べる相手が手元にないときは、先月の自分と比べるほうが確かです。

今日の​一歩

今日は、お便りに書かれた距離(または時間)を確かめてみてください。そのうえで、同じ長さを大会までに1回通しておく。歩きが混じってかまいません。速く走るためではなく、「これくらいで終わる」を体で知っておくための1回です。

目標の日から予定を並べたいときは、いつから始めるかを逆算するカレンダーが使えます。

そして当日の帰り道。走り切ったこと、歩いてでも戻ってきたこと。そちらを先に言葉にしてあげてください。

参考文献

  1. 文部科学省(2017)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編』(学年ごとの時間の例示)— PDF
  2. 黒川隆志・西山健太(2024)「小学校高学年児童の持久走における3種類の指導方法の比較」『体育学研究』69, 73-88. — doi:10.5432/jjpehss.23055
  3. Wu J, Yang Y, Yu H, Li L, Chen Y, Sun Y (2023). Comparative effectiveness of school-based exercise interventions on physical fitness in children and adolescents. Frontiers in Public Health, 11, 1194779. — doi:10.3389/fpubh.2023.1194779
  4. Menting SGP, Edwards AM, Hettinga FJ, Elferink-Gemser MT (2022). Pacing Behaviour Development and Acquisition. Sports Medicine - Open, 8, 143. — doi:10.1186/s40798-022-00540-w
  5. Chinnasamy C, St Clair Gibson A, Micklewright D (2013). Effect of spatial and temporal cues on athletic pacing in schoolchildren. Medicine & Science in Sports & Exercise, 45(2), 395-402. — doi:10.1249/MSS.0b013e318271edfb
  6. 本村知華子・伊藤浩明・坂本龍雄・赤澤晃・相原雄幸・馬場礼三(2020)「アレルギーを持つ子どもの運動参加に関する提言」日本臨床スポーツ医学会 学術委員会小児科部会『日本臨床スポーツ医学会誌』28(1) — PDF
  7. 公益財団法人 日本学校保健会「学校生活管理指導表」— 出版物ページ
  8. 日本陸上競技連盟 小学生長距離検討会議(1998)「小学生の長距離・持久走についてのガイドライン」— PDF
  9. スポーツ庁「体力・運動能力調査」(小学生の実施種目。持久走は含まれない)— 新体力テスト実施要項(6歳〜11歳対象)PDF
  10. 富山県魚津市立清流小学校「持久走大会・短距離走大会」— ページ
  11. 滋賀県愛荘町立秦荘西小学校「11月8日 持久走大会に向けて」— ページ
  12. 聖徳大学附属小学校(2021)「マラソン大会の距離は1・2年生1km、3・4年生1.3km、5・6年生2kmでした。」— ページ
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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