「寒くなってから外遊びが減って、家の中ではゲームばかり」。冬に出てきやすい悩みです。
遊びを決める前に、場所のほうを整えます。家の中は学校の体育館と条件が違い、硬い角・階段・ガラス・段差が生活動線の中にあります。
表:遊ぶ前に決める5つ(この記事の要点)
| 決めること | 中身 | 詳しくは |
|---|---|---|
| 1 遊ぶ範囲 | テーブルの角・テレビ台・ドアノブ・ガラス扉をどける。ストーブ・ファンヒーター・加湿器の周辺と、窓・網戸のそばは範囲に入れない | 遊ぶ範囲を先に決める |
| 2 床と足元 | 靴下は滑るので裸足かすべり止めつきに。ずれるラグは外す。床を横切るコード類はまとめる | 同上 |
| 3 倒れてくるもの | 家具・テレビの固定を確認する。階段・踊り場・玄関の段差は範囲に入れない。窓際に足場を作らない | 家具・テレビの転倒以下 |
| 4 人数と順番 | きょうだいで一緒にやるときは、同時に走らせず順番制にする。押し合い・引っぱり合いは座ったままに固定する。投げる遊びは室内で行わない | きょうだいで一緒にやるとき |
| 5 やめどき | 痛み・こわがっている・体調不良のときは中止。頭や首を打った場合は先に医療機関へ(意識がもうろうとする・繰り返し吐く・けいれん等は直ちに救急要請) | 終わり方と、中止の目安 |
※ この記事は、室内で体を動かすときの安全の確認点をまとめた受け皿です。遊びそのものの中身(どうぶつ歩き・片足立ち・座ったままの押し合いなど、跳ばずに音が出にくい遊び)はゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ?の「家庭でできる遊び」にまとめました。
跳ぶ遊びを入れるときは、これに加えてもう1つ。跳ぶ前に、照明器具・吊り下げ物・鴨居・棚の角など頭の上にあるものを確認してください。集合住宅では、ずれたりめくれたりしないよう固定できるマットを使い(滑るラグは使いません)、時間帯を選び、短時間にとどめてください。固定できるものがない場合は、跳ぶ遊びは外してください。音を気にして途中で止める回数が増えると、遊び自体が続かなくなります。跳ぶ遊びの候補は、その場スキップ(スキップのガイド)、縄を持たずに跳ぶリズムだけを取り出す遊び(縄跳びが跳べないとき)、着地の音を小さくする練習(ジャンプ&やわらか着地のガイド)です。
そのうえで、量の話を1つ。冬に落ちた分を冬のうちに取り戻そうとするより、動く場面を1日1つ残しておくほうが現実的です。季節による活動量の違いについて報告されていることと、「1日60分」という数字の出どころは、この記事の後半に整理しました。
安全の確認点——学校と同じ設備も監督もありません
家の中は体育館と違って、硬い角・階段・ガラス・段差が生活動線の中にあり、広さも見ている大人の人数も学校とは違います。学校でできている遊びをそのまま家庭に持ち込めるという前提には立たず、遊びの内容を決める前に場所のほうを整えてください。
順番は、場所が先、遊びは後です。
遊ぶ範囲を先に決める
遊ぶ範囲をあらかじめ決め、その範囲からテーブルの角、テレビ台、ドアノブ、ガラス扉をどけます。窓・網戸のそばは範囲に入れず、換気中はとくに近づかない形にしてください。動かせないものがあるなら、範囲のほうを変えてください。冬に特有の点として、ストーブ・ファンヒーター・加湿器の周辺は範囲から外してください。床は、靴下だと滑ります。裸足かすべり止めのついた靴下にし、ずれるラグは外すほうが安全です。暖房器具の延長コードなど、床を横切るコード類もまとめておいてください(つまずくと器具ごと倒れます)。
家具・テレビの転倒
消費者庁は「家具やテレビの転倒に気を付けましょう!」(2017年11月10日)で、「家具やテレビは固定して使用しましょう」「家具の引き出しには鍵やストッパーなどを付けましょう」「玩具など子どもの興味をひくものを家具の上に置かないようにしましょう」の3点を挙げ、「これらの事故は、場合によっては、死に至ることもあります(これは起こりうる結果の記述で、発生率を示すものではありません)」としています。室内で体を動かす遊びは、家具にぶつかる場面と、引き出しや箱を踏み台にする場面の両方を増やしがちです。遊ぶ前に固定の状態を見ておくと安心です。
階段・段差
こども家庭庁の資料では、東京消防庁のデータをもとに、「落ちる」事故は各年齢層で起きており特に0〜5歳に多いこと、発達段階によって場所が変わり、乳幼児期はベッドや椅子から、成長すると階段・窓・ベランダからの転落が目立つことが整理されています。対策としてはベビーゲートの設置と管理が挙げられています。階段・踊り場・玄関の段差は、遊ぶ範囲に入れないでください。
窓・ベランダ
消費者庁「窓やベランダからの子どもの転落事故に御注意ください!」(2020年9月4日)では、事故情報の分析結果として「夏頃から転落事故が増加」「3~4歳の転落事故が最も多い」「2階からの転落でも入院が必要な中等症と診断されている事例が多い」「窓が開いた部屋で子どもだけで遊んでいて発生する事例が多い」ことが示されています。防止のポイントとしては、手すり付近に足場になるものを置かないこと、「窓や網戸には、子どもの手の届かない位置に補助錠を付けましょう」「窓を開けた部屋やベランダでは子どもだけで遊ばせない」ことが挙げられています。
この注意喚起は「夏頃から増加」を示したもので、冬に転落が多いと述べた資料ではありません。ただ、冬でも換気で窓を開ける場面はありますし、室内遊びは椅子や箱を動かす場面と相性がよいものです。窓際に足場を作らないという点は、季節を問わず確認しておきたいところです。
きょうだいで一緒にやるとき
年齢差があると、体格差がそのまま衝突の強さになります。指導上は、(1)同時に走らせず順番制にする、(2)押し合い・引っぱり合いは座ったままに固定する、(3)投げる遊びは室内で行わない、の3つを先に決めておきます。勝ち負けを競う形にすると力の加減が消えやすいので、回数や秒数を数える形のほうが落ち着く傾向があります。
終わり方と、中止の目安
痛みを訴えたとき、こわがっているとき、体調がすぐれないときは、その日は中止してください。発熱や咳などがあるときは行わないでください。頭や首を打った場合は、様子を見るより先に医療機関にご相談ください。意識がもうろうとする・繰り返し吐く・けいれん・手足のしびれや動かしにくさがあるときは、首をむやみに動かさず、直ちに救急要請してください。これらは例示であり、当てはまらなくても痛みや不調が続くときは受診をご検討ください。
続けるための工夫と、無理にさせない線引き
冬に落ちた分を、冬のうちに取り戻さなければいけないのでしょうか。量を取り戻すより、動く場面を1つ残すほうを優先します。押し切って1回やらせた日より、次に誘ったときに乗ってくる状態のほうが、春まで持つからです。
- 時間で決めず、場面に結びつける:「毎日20分」より「お風呂の前に1つ」のほうが再開しやすい傾向があります。記録するなら「やった日」だけで十分です。
- 大人が一緒にやる:子どもだけに任せる形は、冬の室内でとくに続きにくくなります。
- 嫌がるときは強制しない:運動が「できる」経験は意欲につながり、逆にうまくいかない経験が続くと運動の場面そのものを避けやすくなる方向にも働き得る、と整理されています(Stodden et al., 2008)。押し切って1回やらせるより、次に誘ったときに乗ってくる状態を残すほうを優先します(体育の「できた」を助ける声かけ)。
育つ速さや得意・不得意には大きな個人差があります(発達期の考え方はゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ?で扱っています)。冬に遊びの量が減ること自体を、心配の材料にしすぎる必要はありません。進め方に迷うときは、子ども向け指導のご案内もご検討ください。
くわしい整理:季節差と「1日60分」の読み方
ここから先は、数字の出どころの話です。今日の遊びを決めるだけなら、ここは読まなくても足ります。
「冬は活動量が減る」と言い切れるか
季節によって子どもの活動量が変わることは複数の国で報告されています。ただし変化の向きと大きさは地域や気候によって異なり、「冬はどこでも減る」と一般化できる状態ではありません。日本の子どもを対象に季節を比べた調査は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。
英国のミレニアムコホート研究(同じ子どもたちを長期間追いかけた調査)のデータを使った研究(Atkin et al., 2016)では、7〜8歳の704人(開始時の平均年齢7.6±0.3歳)が加速度計を7日間ずつ5回装着しました。中高強度身体活動(MVPA:少し息が上がる程度以上の強さで体を動かしている時間)は春に比べて秋と冬で低く、その差の大きさは平日か週末か、性別、体重の区分、都市か地方か、世帯収入によって異なったと報告されています(いずれも交互作用の p<0.05)。総座位時間は春に比べて秋・冬で長く、季節の影響は平日より週末で強かったとされています(交互作用 p<0.01)。1年の変化を連続的な関数で推定すると、MVPAは12月に最も少なく6月に最も多いと予測されました。最も少ない日と最も多い日の1日あたりの差は、MVPAで14分(女子)から24分(週末)、座位時間で週末55分・平日39分です。14分と24分は報告された範囲の下端と上端であり、冬に減る量そのものではありません。英国の1つのコホートでの推定値です。
他の国の報告も、「向き」を見るための一覧として並べます。
表:季節による活動量の違いを扱った研究(報告された向き)
| 研究 | 対象 | 報告された向き |
|---|---|---|
| Atkin et al., 2016(英国) | 7〜8歳 704人 | 春に比べ秋・冬でMVPAが低く、座位時間が長い |
| Chang et al., 2020(中国・長沙市) | 幼稚園の1クラス 65人 | 総活動量とMVPAは春に最高・冬に最低。座位行動は逆。低強度は季節差なし |
| Danielsen et al., 2021(ノルウェー北極圏) | 小学1・3・5・7年生 178人 | MVPAは極夜と極昼で差なし(すべて p≥0.073)。総活動量は極夜613±154cpm(cpm=1分あたりのカウント数。加速度計が記録する動きの量の単位)、極昼704±269cpm(p<0.001) |
| Sit et al., 2019(香港・特別支援学校13校) | 5つの障害種別の児童 270人 | 学校にいる間のMVPAは冬4.5%(18.6分)、夏4.0%(15.6分)で冬のほうが高い |
※各研究の抄録に報告された値・記述に基づき作成(いずれも加速度計による測定)。対象・測定条件・気候が異なるため、行どうしを直接比較することはできません。Sit et al. (2019) は特別支援学校に通う児童を対象とし、学校にいる時間だけを測ったものです。
これらはいずれも活動量の季節差を記述した研究であって、冬の活動量が少ないことがその後の健康や体力にどうつながるかを検証したものではありません。北極圏や香港のように冬に下がらない報告もあります。「今のうちに動かさないと将来こうなる」という材料としては読まないほうがよさそうです。
冬に外遊びが減る家庭もありますが、通学の距離、習い事の有無、雪が積もる地域かどうかで事情はまったく違います。
「1日60分」はどこから来た数字か
日本のガイドがまず置いているのは「少しでも行う」という一文です。「1日60分」はWHOのガイドラインの推奨として紹介されている数値で、室内遊びだけでこの60分を作る、という趣旨のものではありません。
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の推奨シート(こども版)は、まず「身体を動かす時間が少ないこどもには、何らかの身体活動を少しでも行うことを推奨する。」と書いています。そのうえで「WHOの『身体活動および座位行動に関するガイドライン』では、次のようなことが推奨されている」として3点を紹介しています。
- 「こどもは、中強度以上(3メッツ以上)の身体活動(主に有酸素性身体活動)を1日60分以上行う。」
- 「高強度の有酸素性身体活動や、筋肉・骨を強化する身体活動を週3日以上行う。」
- 「座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイム(テレビ視聴やゲーム、スマートフォンの利用など)を減らす。」
同じシートに添えられているのは、「激しすぎる運動やオーバーユース(使いすぎ)に注意する。」という一文です。メッツは運動の強さを表す指標で、安静に座っている状態を1メッツとし、3メッツは「少し息が上がるくらいの強度」と説明されています。
就学前のお子さんについては、文部科学省の「幼児期運動指針」(2012年)に「幼稚園、保育所などに限らず、家庭や地域での活動も含めた一日の生活全体の身体活動を合わせて、幼児が様々な遊びを中心に、毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましい。」と示されています。園での活動や移動も含めた、一日の生活全体の合計としての60分です。
家庭の室内遊びだけで積み上げる想定の数字ではありませんし、毎日測って達成・未達成を判定する必要もありません。
まとめと、次の一歩
- 遊びを決める前に、場所のほうを整えます。遊ぶ範囲・床と足元・倒れてくるもの・人数と順番・やめどきの5つです。
- 家庭では、どうぶつ歩き・片足立ち・座ったままの押し合い・だるまさんがころんだなど、跳ばずに音が出にくい遊びが扱いやすいです。これらは指導上の扱いで、研究が検証した手順ではありません。候補はゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ?にまとめました。
- 安全が先です。学校と同じ設備も監督もない前提で、遊ぶ範囲から硬いもの・暖房器具をどける、家具やテレビの固定を確認する(消費者庁, 2017)、階段や段差を遊ぶ範囲に入れない(こども家庭庁)、窓際に足場を作らない(消費者庁, 2020)。痛み・強い怖さ・体調不良のときは中止し、頭や首を打った場合は医療機関へ(意識がもうろうとする・繰り返し吐く・けいれん等があれば、首をむやみに動かさず直ちに救急要請)。
- 紹介した研究はいずれも活動量の季節差を記述した研究で、冬の活動量が少ないことがその後の健康や体力にどうつながるかを検証したものではありません。日本の子どもを対象に季節を比べた調査は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。
- 季節による活動量の違いは複数の国で報告されていますが、向きと大きさは地域や気候によって異なります。英国では春に比べ秋・冬でMVPAが低く座位時間が長いと報告された一方(Atkin et al., 2016)、北極圏ではMVPAに明確な季節差がなく(Danielsen et al., 2021)、香港の特別支援学校では学校にいる間のMVPAが冬のほうが高いと報告されています(Sit et al., 2019)。
- 「1日60分」は、厚生労働省のこども版推奨シートにWHOのガイドラインの推奨として紹介されている数値です。日本のガイド本体がまず置くのは「少しでも行う」で、幼児期運動指針の60分も「一日の生活全体」の合計です。室内遊びだけで埋めるものではありません。
今夜、遊ぶ範囲を1つ決めて片づけてみてください。テーブルの角とドアノブをどけて、暖房器具の周辺を外す。そこまでで足ります。
関連リンク
- 関連記事:ゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ? / 体育の「できた」を助ける声かけ / 縄跳びが跳べないとき
- 関連ガイド:どうぶつ歩き / スキップ / ジャンプ&やわらか着地 / 子ども向け種目ガイド一覧
- ご家庭だけでは不安なとき:子ども向け指導のご案内
参考文献
- Atkin, A. J., Sharp, S. J., Harrison, F., Brage, S., & van Sluijs, E. M. F. (2016). “Seasonal Variation in Children’s Physical Activity and Sedentary Time.” Medicine and Science in Sports and Exercise, 48(3), 449–456. doi:10.1249/MSS.0000000000000786
- Chang, Z., Wang, S., & Zhang, X. (2020). “Seasonal variations in physical activity and sedentary behavior among preschool children in a Central China city.” American Journal of Human Biology, 32(6), e23406. doi:10.1002/ajhb.23406
- Danielsen, K. H., Vårnes, T. K., Sagelv, E. H., Heitmann, K. A., & Mathisen, G. E. (2021). “Seasonal variations in physical activity among Norwegian elementary school children in Arctic regions.” International Journal of Circumpolar Health, 80(1), 2004688. doi:10.1080/22423982.2021.2004688
- Sit, C. H. P., Huang, W. Y., Yu, J. J., & McKenzie, T. L. (2019). “Accelerometer-Assessed Physical Activity and Sedentary Time at School for Children with Disabilities: Seasonal Variation.” International Journal of Environmental Research and Public Health, 16(17), 3163. doi:10.3390/ijerph16173163
- Stodden, D. F., Goodway, J. D., Langendorfer, S. J., Roberton, M. A., Rudisill, M. E., Garcia, C., & Garcia, L. E. (2008). “A Developmental Perspective on the Role of Motor Skill Competence in Physical Activity: An Emergent Relationship.” Quest, 60(2), 290–306. doi:10.1080/00336297.2008.10483582
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:こども版(健康日本21アクション支援システム). 推奨シート:こども版
- 文部科学省 (2012).「幼児期運動指針」. 幼児期運動指針(文部科学省)
- 消費者庁 (2017).「家具やテレビの転倒に気を付けましょう!-下敷きになった子どもが死亡する事故も-」(平成29年11月10日). 注意喚起ページ
- 消費者庁 (2020).「窓やベランダからの子どもの転落事故に御注意ください!-網戸に補助錠を付ける、ベランダに台になる物を置かないなどの対策を-」(令和2年9月4日). 注意喚起ページ
- こども家庭庁「身の回りに潜む転落事故の危機」. こども家庭庁 こどもの事故防止
