運動会のお知らせをもらって日付が決まると、最初に数えるのは「あと何週間あるか」だと思います。
残り4週間以上あるかどうかで、練習の組み立ては変わります。どの残り週数でも、1回10〜15分を週に2〜3回が一つの目安です。残りの期間ごとに、現実的にできることを並べます。
表:本番までの残りでみる、練習の組み立て(一つの目安)
| 本番までの残り | 時期の並び | 今週の1回(10〜15分)でやること |
|---|---|---|
| 4週間以上 | 土台づくり → 仕上げ → 調整 | 遊びの延長で全身を使う(どうぶつ歩き・スキップ・ケンケン) |
| 2〜3週間 | 仕上げ → 調整 | 課題を「スタートと加速」に1〜2個しぼる(よーいの構え・腕振り) |
| 1週間 | 調整だけ | 姿勢・腕振り・よーいの形を軽く確認する。新しいことは足さない |
| 数日 | 調整だけ | 走る量は増やさない。睡眠と当日の段取りを整え、合言葉を1つ決める |
※ 残りは週に切り上げて数えてください(残り10日なら「2〜3週間」の行、残り6日以内なら「数日」の行)。逆算カレンダーも同じ数え方です。
※ 残りが4週間以上あるときは、最後の1週間を調整に当て、その手前のうち4割ほどを仕上げ、前半を土台づくりに配分しています。当スクールの練習期分けの目安です。時期の名前(土台づくり・仕上げ・調整)の中身は、この記事の後半にまとめています。
この記事に書いてあるのは、「なぜその配分になるのか」と「その週に何を見るか」です。運動会の日付から週ごとの予定に落とすところは、いつから始めるかを逆算するカレンダーのほうが速く済みます。日付を入れると、上の表と同じ配分で今週の分から順に並びます。
なお、走っていて痛みを訴えたときは、その日は練習を中止し、痛みが続く場合は医療機関にご相談ください。
残りが短くても、詰め込みには変えない
運動会が近づくと出てくるのが、「あと何週間あれば間に合いますか」という問いです。
ここで日数だけを気にすると、たいてい直前の詰め込みになります。直前に長く走らせると、子どもが「走るのは疲れるもの」と感じてしまい、本番の意欲がしぼむ場面があります。たとえば夕方の公園で30分走らせた翌日に、「今日はやらない」と言い出す。
短く楽しく終われる練習を早めに始めるほうが、結果として回数を重ねられる傾向があります。運動技能の学習に関する研究では、練習を一度に詰め込む「集中練習」よりも、間隔をあけて繰り返す「分散練習」のほうが、技能の定着に有利だと報告されています(Donovan & Radosevich, 1999)。ここでいう定着とは、あとで思い出して使えることです。
研究が支えているのは「一度に詰め込まず、間隔をあけて繰り返す」という考え方です。表に置いた週数や分数は、その考え方を小学生のかけっこに当てはめた当スクールの指導上の目安であり、研究が直接検証した数値ではありません。
3つの時期、それぞれの中身
やることを時期で変えるのは、走りが姿勢・腕振り・脚の動き・スタートといった複数の要素の積み重ねでできているからです。土台の動きが整う前に本番そっくりの全力走ばかり繰り返すと、崩れた動きのまま固まってしまうことがあります。
子どもの体づくりには、成長段階に応じて身につけるべき動作の優先順位が変わるという長期的な枠組みが提案されています(Lloyd & Oliver, 2012)。長期発達モデル(Youth Physical Development Model)と呼ばれる考え方です。小学生の時期は、専門的な走り込みよりも、基本的な動作の習得やコーディネーション(体を思いどおりに動かす力)の土台づくりが先に来ると考えられています。これは一般的な枠組みで、適した内容はお子さんの発達や経験によって変わるものです。
表:3つの時期と、それぞれの重点(練習期分けの目安)
| 時期 | この時期の重点 | 主なドリル例 |
|---|---|---|
| 土台づくり期(前半) | 「正しく」より「楽しく」。全身を使う遊び系の動きづくり | まっすぐ姿勢づくり/どうぶつ歩き/スキップ/ケンケン/ジャンプ&やわらか着地 |
| 仕上げ期(中盤) | 課題を「スタートと加速」に絞る(1回に1〜2個) | 腕振り/もも上げ/スタートの構え(よーい)/クイックステップ→ダッシュ/加速走 |
| 調整期(直前の週) | 詰め込むより整える。新しいことは足さない | まっすぐ姿勢づくり/腕振り/よーいの構え/ライン走 |
※出典:Lloyd & Oliver(2012)の長期発達モデル(成長段階に応じて重点が変わる考え方)に基づき、当スクールの練習期分けとして整理
土台づくりは遊びの延長、仕上げは一点集中。中盤は「今日はスタートだけ」と決めてしまうほうが身につきやすい傾向があります。直前の週は新しいことを足さず、形を軽く確認する程度にとどめてください。全力走(30m)のような負担の大きい練習は、体をよく温めてから本数を控えめに。低学年ほど、時間や本数より「楽しく終われること」を優先してあげてください。
スタートの構えを詳しく見たいときは「よーい」の構え、腕の振り方が気になるときはかけっこの腕振りが近い内容です。今の速さが同じ学年のどのあたりかは、50m走の平均タイムにまとめています。
よくある質問
Q. 早く始めすぎることはありますか。
かけっこの練習として組み立てるなら、本番の3〜6週間ほど前からが一つの目安です。それより前から始めるなら、運動会のための練習という形にせず、遊びの中で体を動かす時間を続けるほうが続きやすくなります。同じメニューを何週間も繰り返すと、本番の前に飽きてしまう場面があります。
Q. 残り2週間しかありません。間に合いますか。
焦って一気に走り込む必要はありません。仕上げと調整の2つに絞り、スタートの構えと姿勢の確認を中心に、1回10分ほどを数回。短期間だからこそ、疲れをためずに本番を元気な状態で迎えるほうが、当日の走りに効いてくる場面があります。
Q. 毎日やったほうがいいですか。
週に2〜3回が目安です。毎日続けると、練習そのものが「疲れるもの」になりやすい。間隔をあけて繰り返すほうが技能の定着に有利という報告も、この目安の背景にあります。
Q. 前日と当日の朝は、何をすればいいですか。
走力を上げようとするより、持っている力を出しやすくすることに目を向けると落ち着いて臨めます。前の晩の睡眠、当日の朝ごはん、集合場所や靴ひもの確認。この段取りを親子で一緒にしておくだけで、子どもの不安は減ります。靴が合っているかどうかが気になるときは、子どもの靴のサイズの選び方に測り方をまとめています。
Q. 当日は、どんな声をかければいいですか。
「ゴールの少し先まで走り抜けよう」が一つの目安です。ゴール手前で減速する癖がつくと、最後にほかの子へ抜かれやすくなるためです。スタートでは、練習した「よーい」の構えを思い出させてあげれば足ります。細かい指示を一度にたくさん伝えるより、合言葉を1つに絞るほうが、本番では体が動きやすい。
まとめと、次の一歩
- 何週間前が最適かを比べた研究があるわけではないので、日数そのものを断定はできません。研究が支えているのは「一度に詰め込まず、間隔をあけて繰り返すほうが技能の定着に有利」という考え方までです(Donovan & Radosevich, 1999)。
- そのうえで「本番の3〜6週間前から、1回10〜15分を週2〜3回」を、当スクールの指導上の目安としています。
- 残り4週間以上なら3つの時期を通し、2〜3週間なら仕上げと調整、1週間なら調整だけ。残りが短いほど、足すより整えるほうへ寄せます。
- 直前1週間は走り込むより睡眠と段取りを整え、当日の合言葉は1つに絞る。
- 痛みが出たときは練習を中止し、続くようなら医療機関にご相談ください。取り組みの結果には個人差があります。
本番までの残り週数を数えて、最初の表で自分の行を見つけてください。そのうえで、今週の1コマをカレンダーに書き込む。日付から週ごとの予定に落とすなら逆算カレンダーが使えます。
そして当日の帰り道。順位より、過程を認める声かけを先に置きます。当日の結果は、組み合わせやコンディション、そして発達の個人差に大きく左右されます。そこを本人の努力の評価とすり替えてしまうと、走ること自体から遠ざかる子がいるからです。
関連リンク
- 関連ツール:運動会のかけっこ練習、いつから? 逆算カレンダー——日付を入れると、この記事と同じ配分で週ごとに並びます
- 関連記事:持久走大会の練習は何をする?——秋から冬の大会に向けて
- 関連ガイド:スタートの構え(よーい) / 加速走(だんだん速く) / ライン走(まっすぐ走る)
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- ご家庭だけでは不安なとき:子ども向け指導のご案内
参考文献
- Donovan, J. J., & Radosevich, D. J. (1999). “A meta-analytic review of the distribution of practice effect: Now you see it, now you don’t.” Journal of Applied Psychology, 84(5), 795–805. https://doi.org/10.1037/0021-9010.84.5.795
- Lloyd, R. S., & Oliver, J. L. (2012). “The Youth Physical Development Model: A New Approach to Long-Term Athletic Development.” Strength and Conditioning Journal, 34(3), 61–72. https://doi.org/10.1519/SSC.0b013e31825760ea
