足底腱膜炎​(足裏・かかとの​痛み)と​ランニング——研究で​報告されている​ことと、​負荷の​考え方

出典7件・すべて一次情報にリンク

足の裏を押さえる人の線画イラスト

朝、ベッドから下りた最初の一歩でかかとが刺すように痛む。走り出しはつらいが、少し走ると紛れる。そこで名前が挙がるのが足底腱膜炎(そくていけんまくえん)ですが、走行を再開してよいかどうかの可否と時期は、医療機関の領域です。この記事では、何がどこまで報告されているかを踏まえて、走る量のほかに何を見ればよいかを整理します。

かかと・足裏の痛みは、走った距離だけを見ていても見当がつきません。だから、定義と報告値を先に押さえてから、負荷の話に入ります。診断・治療・リハビリの処方は扱いません。ご自身の状況を判断するための材料をお渡しする記事です。

足底腱膜炎とは​——​「最初の​一歩」の​痛みと、​ランナーでの​報告値

足底腱膜は、かかとの骨(踵骨)から足指の付け根に向かって張る厚い線維の膜で、足の内側の縦アーチを支えています。足底腱膜炎は、その踵骨側の付着部あたりに生じる痛みを指します。典型的な現れ方として、朝の最初の一歩で痛みが出ること、圧痛がかかとの内側前方(踵骨の前内側)に限られることが挙げられています(Trojian & Tucker, 2019)。しばらく座っていた後の歩き出しで痛むという訴えも同じ系統です。ただし、これは診療の場で用いられている記述であって、典型とされる現れ方に当てはまるかどうかを読者が自分で判定するための基準ではありません。

日本語では「足底腱膜炎」「足底筋膜炎」がほぼ同じ状態を指して使われます。英語圏では、名称に含まれる -itis(炎症)に対して、実態は炎症というより変性を伴う病態と考えられており、fasciopathy/fasciosis という語が使われるようになってきていると報告されています(Rhim et al., 2021)。この記事では、日本語で通りのよい「足底腱膜炎」を用います。

そして、この記事の射程をはっきりさせておきます。「かかとの痛み(plantar heel pain)」は、末梢神経の絞扼や踵骨棘の存在など、幅広い病態を含む総称であると同レビューは述べています(Rhim et al., 2021)。足底腱膜炎はその一つであって、かかとが痛む=足底腱膜炎ではありません。この点は最後の「受診を考える線引き」で詳しく触れます。

では、どのくらいのランナーに起きているのか。数字の前に、指標の定義を分けておきます。発生率は調査期間中に新たに発症した人の割合、有病率はある時点や期間に症状がある人の割合。どちらも「%」で表されますが、測っているものが違います。

ランナーの故障を調べた8件の研究(延べ3,500名)をまとめたシステマティックレビュー(Lopes et al., 2012)では、足底腱膜炎の発生率は4.5〜10.0%、有病率は5.2〜17.5%の範囲で報告されています。発生率のほうを人数に置き換えると、20人のランナーを追いかけて新たに1〜2人、という規模感です。同レビューは、シンスプリント(MTSS)・アキレス腱障害・足底腱膜炎の3つを、ランナーの主な故障として挙げています。

ランナーで報告されている主な故障の発生率と有病率の範囲。シンスプリントは発生率13.6〜20.0%・有病率9.5%、アキレス腱障害は発生率9.1〜10.9%・有病率6.2〜9.5%、足底腱膜炎は発生率4.5〜10.0%・有病率5.2〜17.5%。
ランナーの主な故障について報告されている割合の範囲。発生率(調査期間中に新たに発症した割合)と有病率(ある時点・期間に症状がある割合)は別の指標です。8件の研究の報告値をまとめたもので、研究ごとに対象・追跡期間・診断の定義が異なります。範囲の広さはその不確実性を含んでおり、故障どうしの順位づけに使える数字ではありません。MTSSの有病率9.5%は範囲ではなく単一の報告値です(出典: Lopes et al., 2012)。

別の角度からの報告もあります。スポーツ医学のクリニックを受診したランナーの故障2,002件を2年分さかのぼって分類した研究(Taunton et al., 2002)では、足底腱膜炎は、膝蓋大腿部の痛み(膝のお皿まわり)と腸脛靱帯炎に次いで3番目に多い故障として挙げられています。ただしこれは受診した人の集計であり、走っている人全体に占める割合ではありません。前述のレビューとは対象も調査方法も異なるため、両者を並べて比べられるものではありません。

何が​関連しているか​——体重・足首まわりと、​「走行距離」の​扱い

身体的に活動的な人を対象に、足底腱膜炎の関連要因を調べた16件の研究をまとめたメタ分析(Hamstra-Wright et al., 2021)があります。統合されたのはうち6件の横断研究で、801名(足底腱膜炎あり181名・なし620名)、6件中5件はランナー、1件は軍関係者です。統計的に差が示されたのは3つでした。

統合された指標症状のある群となし群の平均差95%信頼区間
足関節の底屈可動域(つま先を下げる方向)7.04度 大きい5.88〜8.19
BMI2.13 大きい1.40〜2.86
体重4.52kg 重い0.55〜8.49
週あたりの走行距離1.66km 多い(差は示されず)−4.95〜8.27
足関節の背屈可動域(つま先を上げる方向)差は示されず(P=0.57)引用せず(下の注を参照。I²=68.3%)

表:足底腱膜炎のある人とない人を比べた統合結果(出典: Hamstra-Wright et al., 2021)。上の3項目は統計的に差が示されたもの、下の2項目は示されなかったものです。体重は信頼区間の下限が0.55と0に近く、推定の幅が広い点に注意が必要です。統合されたのはいずれも横断研究(ある時点で両群を比べた研究)であり、これらが原因であることを示すものではありません。背屈可動域は研究間のばらつきが大きく、原著が示す信頼区間は点推定と整合しない表記のため、ここでは引用していません。

体重・BMIについては、別のシステマティックレビューでも同じ方向の報告があります。51件の研究(前向き1件・症例対照46件・横断4件)を統合したメタ分析(van Leeuwen et al., 2016)では、BMIが27を超えることのオッズ比が3.7(95%信頼区間2.93〜5.62)と報告され、臨床的な要因のうち一貫した関連が示されたのはこれだけでした。ただし著者らは、この関連は非アスリートの集団でより強かったと述べています。アスリートやランナーにそのまま同じ強さで当てはまる関連ではありません。同レビューは、足部・足関節の機能を測る臨床的・力学的な指標については根拠が乏しいとも述べています。

足首の硬さに触れた古典的な研究もあります。足底腱膜炎の患者50名と、年齢・性別を合わせた対照を比べた症例対照研究(Riddle et al., 2003)では、膝を伸ばした状態での足関節背屈が0度以下の人のオッズ比が23.3(95%信頼区間4.3〜124.4)と報告されました。BMIが30を超える人のオッズ比は5.6(1.9〜16.6)、勤務時間の大半を立って過ごす人のオッズ比は3.6(1.3〜10.1)です。ただし背屈の信頼区間は4.3〜124.4と極端に広く、23.3という点推定をそのまま受け取れるほど推定は確かではありません。一般の患者を対象にした研究で、ランナーに限った調査でもありません。前述のメタ分析では背屈可動域に差が示されておらず、対象集団もデザインも異なるため、どちらが正しいかを比べられる関係にはありません。

研究が報告しているのは、足底腱膜炎のある集団とない集団を比べたときに、体重・BMI・足首の可動域といった項目に差が見られた、という関連です。そこから言えないのは、これらが原因だという結論と、値を変えれば発症を防げるという予防効果。統合された研究の多くは横断研究で、痛みが出た後に測定しているため、原因と結果の順序を判断できません。著者らも、研究の質や定義の不一致を限界として挙げています。指導上の目安として言えるのは、足裏に体重がかかる場面の総量(走る量だけでなく、立ち仕事の時間も含めて)を、一度書き出して眺めてみる価値はある、という程度です。効果や体の反応には個人差があります。

走る​量の​ほかに​何を​見るか​——再開後の​目安と、​受診の​線引き

週あたりの走行距離に差が示されなかったことから、「距離は関係ない」と読むのは行き過ぎです。この解析が比べているのは、ある時点で申告された週間距離の平均であって、距離をどう増やしてきたかという時間的な変化は測っていません。量そのものと、量の変わり方は別の話です。医療者に確認が取れてランニングを再開したあと、量を戻していく段階でも見る対象は変わりません。走る量の組み立て方は走る距離の増やし方ACWRという考え方で整理しています。

かかと・足裏の痛みでは、走行距離より先に1週間の立ち時間を確かめます。足裏に体重がかかる時間は、練習日誌に載らないからです。

走る量の変化と、それ以外の変化が同じ時期に重なることがあります。木曜にシューズを下ろし、日曜に不整地のコースへ変え、その週から職場が繁忙期に入る。こうした要素が同じ週に2つ3つ重なっているときは、走った距離だけを並べても手がかりになりません。ただし、これは検証された因果関係ではありません。走る土台として下半身を整える視点は走る人の下半身筋トレにまとめていますが、これは健康な状態からの土台づくりの話で、痛みがある状態で何をどこまで行ってよいかは医療者の判断が優先されます。

インソールやシューズの変更については、この記事では推奨も否定もしません(道具側で何が報告されているかはランニング用インソールの考え方で整理しています)。前述のとおり、足部・足関節の機能を測る指標についての根拠は乏しいと評価されており(van Leeuwen et al., 2016)、自分に合うかどうかは足の状態を実際に診た専門家の判断によります。

そのうえで、線引きです。かかとが痛むとき、その原因は足底腱膜炎とは限りません。かかとの痛みの鑑別では、踵骨の疲労骨折、踵骨骨端症、踵骨骨折、骨腫瘍といった骨性の原因も検討すべき対象として挙げられています(Trojian & Tucker, 2019)。同文献は、3か月を超えて痛みが続き、治療に反応しない場合には、別の診断が隠れていないかを確かめる目的で画像検査が役立ちうるとも述べています。これは医療機関での検査に関する記述であって、受診を先延ばしにしてよい期間を示すものではありません。

痛みが一点に強く限局している、腫れや熱感がある、歩くだけでも痛む、安静にしていても痛む、夜間に痛む——こうした場合は、自己判断で様子を見ず、整形外科など医療機関にご相談ください。ひねった・落下したなど外傷の心当たりがある、日を追って強くなっているといった場合も同様です。これらは注意したい特徴の例であって、当てはまらなくても、痛みが続く・繰り返す・走行に支障がある場合は受診をご検討ください。すねの痛みでも同じ考え方をとります(シンスプリントと走行再開の目安膝の外側が痛いとき)。

経過については、手術によらない治療を受けた足底腱膜炎の患者のおよそ80%が12か月以内に改善すると紹介されています(Trojian & Tucker, 2019)。これは集団での割合であり、個人の経過を保証する数字ではありません。何をもって「改善」とするかの定義も、受けた治療の内容も、元の研究によって異なります。また「時間が解決するから受診しなくてよい」という意味でもありません。読み取れるのは、この状態は数日単位で片づく話ではないことがある、という時間感覚の目安までです。この数字だけから、個人の治療の要否や受診のタイミングを判断することはできません。

よく​ある​質問

Q. 痛みがありますが、走ってよいでしょうか? A. この記事で判断することはできません。走り続けてよいかどうかは痛みの原因や程度によって異なるため、まず、その痛みが何によるものかを医療機関で確認することが先になります。

Q. 「足底筋膜炎」と「足底腱膜炎」は違うものですか? A. 日本語では、ほぼ同じ状態を指して両方が使われています。英語圏では、炎症より変性を伴う病態と考えられることから fasciopathy/fasciosis という語も使われるようになっていると報告されています(Rhim et al., 2021)。名称の違いが病態の違いを表しているわけではありません。

Q. 走る距離を減らせば治りますか? A. 治療について本記事で答えることはできません。研究の側から言えるのは、活動的な人を対象としたメタ分析(Hamstra-Wright et al., 2021)で、週あたりの走行距離に統計的な差が示されなかったということまでです。報告値は平均差1.66km/週、95%信頼区間−4.95〜8.27 です。横断研究を統合した結果であり、距離を減らすことの効果を検証したものではありません。

Q. 体重を落とせば予防できますか? A. 予防できると断定できる根拠は確認できていません。BMIとの関連は複数のレビューで一貫して報告されています(van Leeuwen et al., 2016;Hamstra-Wright et al., 2021)。ただしいずれも集団での関連であり、体重を変える介入で発症が減るかを検証した研究ではありません。またこの関連は非アスリート集団でより強かったと報告されています。

まとめと、​次の​一歩

ここで並べているのは、多くが横断研究——ある時点で両群を比べた研究——の統合です。原因を特定したものではなく、ご自身の痛みが何によるものかを判定できる材料でもありません。そのうえで、要点を整理します。

  • 足底腱膜炎は、かかとの内側前方に出る、朝の最初の一歩で強い痛みが典型とされています(Trojian & Tucker, 2019)。ただし「かかとの痛み」は幅広い病態を含む総称であり、かかとが痛む=足底腱膜炎ではありません(Rhim et al., 2021)。
  • ランナーでは、発生率4.5〜10.0%、有病率5.2〜17.5%と報告されています(Lopes et al., 2012)。発生率と有病率は別の指標で、研究ごとに対象や定義が異なります。クリニック受診者の集計では3番目に多い故障です(Taunton et al., 2002。対象・方法が異なるため両者は直接比較できません)。
  • 活動的な人を対象としたメタ分析では、足関節の底屈可動域(平均差7.04度、95%信頼区間5.88〜8.19)、BMI(2.13、1.40〜2.86)、体重(4.52kg、0.55〜8.49)に差が示され、週あたりの走行距離と足関節の背屈可動域には差が示されませんでした(Hamstra-Wright et al., 2021)。BMIとの関連は51件を統合したレビューでも報告されていますが(BMI>27でオッズ比3.7、95%信頼区間2.93〜5.62)、非アスリート集団でより強く、アスリートにそのまま当てはまる関連ではありません(van Leeuwen et al., 2016)。
  • 一点に限局した痛み、腫れ・熱感、安静時痛、夜間痛、外傷の心当たりがある場合は、自己判断で走り続けず医療機関にご相談ください。これらは注意したい特徴の例であって、当てはまらなくても、痛みが続く・繰り返す場合は受診をご検討ください。踵骨の疲労骨折など、別の対応が必要な病態も鑑別に挙げられています(Trojian & Tucker, 2019)。経過には個人差があります。

直近1週間の「足裏に体重がかかっていた時間」を、走った時間と立っていた時間に分けて書き出してみてください。走行距離だけを見ていたときとは、違う週が浮かび上がることがあります。

関連リンク


参考文献

  1. Lopes, A. D., Hespanhol Júnior, L. C., Yeung, S. S., & Costa, L. O. P. (2012). “What are the main running-related musculoskeletal injuries? A systematic review.” Sports Medicine, 42(10), 891–905. doi:10.1007/BF03262301
  2. Hamstra-Wright, K. L., Huxel Bliven, K. C., Bay, R. C., & Aydemir, B. (2021). “Risk Factors for Plantar Fasciitis in Physically Active Individuals: A Systematic Review and Meta-analysis.” Sports Health, 13(3), 296–303. doi:10.1177/1941738120970976
  3. van Leeuwen, K. D. B., Rogers, J., Winzenberg, T., & van Middelkoop, M. (2016). “Higher body mass index is associated with plantar fasciopathy/‘plantar fasciitis’: systematic review and meta-analysis of various clinical and imaging risk factors.” British Journal of Sports Medicine, 50(16), 972–981. doi:10.1136/bjsports-2015-094695
  4. Riddle, D. L., Pulisic, M., Pidcoe, P., & Johnson, R. E. (2003). “Risk factors for plantar fasciitis: a matched case-control study.” The Journal of Bone and Joint Surgery (American Volume), 85(5), 872–877. doi:10.2106/00004623-200305000-00015
  5. Rhim, H. C., Kwon, J., Park, J., Borg-Stein, J., & Tenforde, A. S. (2021). “A Systematic Review of Systematic Reviews on the Epidemiology, Evaluation, and Treatment of Plantar Fasciitis.” Life, 11(12), 1287. doi:10.3390/life11121287
  6. Trojian, T., & Tucker, A. K. (2019). “Plantar Fasciitis.” American Family Physician, 99(12), 744–750. PMID: 31194492
  7. Taunton, J. E., Ryan, M. B., Clement, D. B., McKenzie, D. C., Lloyd-Smith, D. R., & Zumbo, B. D. (2002). “A retrospective case-control analysis of 2002 running injuries.” British Journal of Sports Medicine, 36(2), 95–101. doi:10.1136/bjsm.36.2.95
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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