故障予防の​考え方​——なぜ​「休む」が​練習に​なるのか

出典25件・すべて一次情報にリンク

練習ノートを開いて週の予定を書き込むランナーの線画イラスト

すねが痛い。膝の外側が痛い。かかとが痛い。このサイトのケア・リカバリーの記事は、部位ごとの話から書き始めました。11本たまったところで、その手前にあるはずの記事をまだ書いていないことに気づきました。どの部位の話にも共通する、負荷と体の関係のとらえ方です。

この記事で扱うのは5つ。ランナーの故障はどれくらい起きているのか。負荷と適応をどうとらえるか。「急に増やす」の何が問題なのか。予防で確かめられたことと、確かめられていないこと。そして、それを週の練習にどう落とすか。

休むことは、失うことではありません。 運動の翌日、体は前日の負荷に対していちばん活発に作り直しをしていた、という実測があります。ここから始めます。

何%の​ランナーが​故障するのか、と​いう​問いに​一つの​答えは​ない

「ランナーの何%が1年で故障するか」。この問いに、研究は一つの数字を返してくれません。

この分野の起点としていまも引用され続ける系統的レビュー(van Gent et al., 2007。19年前の研究です)は、下肢の故障の発生率を19.4%から79.3%の幅で報告しました。86本の論文をまとめた後年のレビューでは、練習を休むことになった故障の割合が、クロスカントリー走者の3.2%から初心者ランナーの84.9%まで開いています(Kluitenberg et al., 2015)。

幅の正体は、ランナーの違いだけではありません。「何をケガと数えるか」の違いです。1日走れなければケガなのか。1週間か。医療機関にかかったときだけか。線の引き方が研究ごとに違えば、割合も動きます。

この点については、研究者112人による合意定義が作られています(Yamato et al., 2015)。「7日以上、または連続3回の練習に支障が出る。あるいは医師など医療者に相談する必要が出る」。ただしこれは研究の定義であって、受診の基準ではありません。自分の状態を言葉にするための物差しとして使ってください。

なお、日本の市民ランナーを前向きに追いかけた発生率のデータは、今回の調査範囲では見つかりませんでした。以下はすべて欧米・豪州・北欧の数字です。

研究報告された値対象と測り方
van Gent et al., 200719.4〜79.3%系統的レビュー。下肢の故障の発生率の幅
Kluitenberg et al., 20153.2〜84.9%86論文。練習を休むことになった故障の割合
Desai et al., 202145.9%(1年)市民ランナー224人、週平均15km
Videbæk et al., 201517.8 と 7.7(1000時間あたり)13研究2,248人。初心者と市民ランナー

同じ「故障の割合」でも、ケガの定義・追跡期間・対象が違えば数字は動きます。出典: van Gent et al. 2007/Kluitenberg et al. 2015/Desai et al. 2021/Videbæk et al. 2015

日本の市民ランナーに条件が近いものを1つ挙げるなら、週平均15kmで走る224人を1年追った研究でしょう(Desai et al., 2021)。1年間の累積発生割合は45.9%(95%信頼区間 38.4〜54.2)。多かった部位は膝(75件中20件)と、アキレス腱・ふくらはぎ(75件中19件)でした。

この研究でもう一つ目を引くのは、有意な関連が見つかった因子が1つしかなかったことです。過去のケガ。既往のある人の故障率は1.9倍(95%信頼区間 1.2〜3.2)でした。年齢も、性別も、BMIも、走ってきた年数も、週の距離も、統計的に有意な関連を示していません。

走った時間をそろえて比べると、走り始めの時期の位置がはっきりします。

ランナーの種類別に1000時間あたりの故障発生率を95%信頼区間つきで並べた横棒グラフ。初心者ランナー17.8(16.7から19.1)、市民ランナー7.7(6.9から8.7)、ウルトラマラソンランナー7.2(単一研究のため信頼区間なし)。
走った時間をそろえて比べた故障の発生率。ケガの定義は研究ごとに違うため、幅を含めて読む数字です。ウルトラマラソンの値は単一研究のため信頼区間がありません。出典: Videbæk et al. 2015(13研究2,248人)のデータをもとに作成

1000時間あたりの発生率は、初心者ランナーで17.8(95%信頼区間 16.7〜19.1)、市民ランナーで7.7(6.9〜8.7)。著者は、初心者のほうが有意に高いと明記しています(Videbæk et al., 2015)。

部位ごとの話は、それぞれの記事にあります。シンスプリント膝の外側の痛みアキレス腱足裏・かかとの痛み。ここから先は、それらに共通する土台に絞ります。

負荷と​適応——​「休む」は​失う​時間ではない

「オーバーユース(使いすぎ)」という言葉は便利ですが、少し雑です。同じ10kmでも、体が受け止められる日とそうでない日があります。研究の側で標準になりつつあるのは、量そのものではなく、その日の体との釣り合いで見るとらえ方です。

ランニング障害の成り立ちを整理した枠組みの論文(Bertelsen et al., 2017)は、4つの要素を挙げています。①走り出す時点で、その組織がどれだけの負荷に耐えられるか。②その1回の練習で、その組織にどれだけの負荷がかかるか。③練習の途中で、耐えられる量がどれだけ下がるか。④その耐えられる量を超えること。

「使いすぎ」というより、その日の体が受け止められる量を上回った。この言い換えのほうが実際に近い、というのがこの枠組みの主張です。ただし、これは整理のための理論モデルであって、検証された因果のしくみではありません。「◯◯をすると耐えられる量が◯%下がる」といった数値は、原著にありません。

骨に絞ると、同じ論理がもっと明快に書かれています。ランナーの疲労骨折は、骨にかかる負荷の「回数」と「大きさ」の組み合わせが、その組織が繰り返しの負荷に耐える力を超えたときに起きる(Warden et al., 2021)。同じ総説には、こうもあります。唯一最適な負荷量は存在せず、そのときの状況に左右される幅がある。

だから、「週何kmまでなら安全か」という問いには、そもそも答えが用意されていません。

休むと落ちる。この前提は、研究の報告を並べてみると、思っていたほど単純ではありません。

1つめ。作り直しには時間がかかります。 健康な若年男性14人に片脚で1時間のキック運動をしてもらい、その後72時間の腱と筋を調べた研究があります(Miller et al., 2005)。腱のコラーゲンと筋のたんぱく質がつくられる速度は、運動の6時間後にはすでに上がっていました。24時間後にピークを迎え、72時間の時点では基準値に向かって下がりつつも、腱コラーゲンと筋原線維たんぱく質はなお高いままでした。

しかもこの実験では、筋に壊れた像は見られていません。壊れたから直しているのではなく、ふつうに運動しただけでも作り直しが起きている、ということです。

限界も書いておきます。対象は14人、運動はランニングではなく片脚のキックです。「走った場合も同じ時間経過になる」とは書けません。それでも、練習の翌日に体の中で何が進んでいるかを示した、数少ない実測です。

2つめ。減らしても、すぐには落ちません。 一般集団を対象にした研究を整理した短報(Spiering et al., 2021)は、こうまとめています。運動の強度(運動中の心拍数)を保てるなら、頻度を週2回まで落としても、あるいは量を33〜66%減らしても、持久的な能力と最大酸素摂取量は最長15週間維持できた。筋力と筋量は、若年層であれば週1回・1種目1セットで最長32週間維持できた。

ただし著者自身が「アスリートや軍人向けの具体的な推奨を出すにはデータが足りない」と明記しています。ランナー向けのメニューとして、そのまま当てはめられる話ではありません。

3つめ。意図的に減らすと、記録は上がる方向に動きます。 持久系アスリート174人分・14研究をまとめた解析では、計画的に量を減らす期間(テーパリング)のあと、タイムトライアルの成績が改善しました(標準化平均差 −0.45、95%信頼区間 −0.68〜−0.23。Wang et al., 2023)。下位解析では、期間8〜14日、量の削減41〜60%、強度と頻度は維持、という条件がもっとも良い結果でした。19年前のメタアナリシス(Bosquet et al., 2007)も、独立に同じ41〜60%という範囲に行き着いています。

まったく走らない場合の話も添えておきます。古いレビュー(Mujika & Padilla, 2000。26年前)では、最大酸素摂取量と血液量が比較的早く下がる一方、筋力の低下は限定的だと報告されています。走り始めて日が浅い人ほど、変化は穏やかとも書かれています。

ここまでを、2つの学会の合意声明の一文が言い換えてくれます。13年前のものですが、いまも標準的な整理として引用され続けています。「トレーニングは過負荷を含まなければならない。ただし、過剰な過負荷と不十分な回復の組み合わせは避けなければならない」(Meeusen et al., 2013、欧州スポーツ科学会と米国スポーツ医学会の合同声明)。過負荷か回復かではなく、両方をどう並べるかという話です。

休む側の各論は、別の記事にまとめています。睡眠疲労回復の基礎走った後のクールダウンフォームローラーの使い方

最後に、枠組みそのものへの留保を1つ。危険因子の系統的レビュー13本を束ねたアンブレラレビューは、59個の因子を挙げたうえで「故障は多因子的である」と結論しました(Correia et al., 2024)。同時に著者は、含まれた13本すべてが質の評価で中程度以上に届かなかったことを理由に、結果を慎重に扱うよう求めています。「危険因子を1つ見つけて取り除く」という発想自体を問い直す提案も出ています(Bittencourt et al., 2016)。

フォームが悪いから。シューズが合わないから。原因を1つに決めたくなりますが、そこは急がないほうがよさそうです。

「急に​増やす」の​何が​問題なのか

「週10%まで」。走行距離の増やし方として、いちばん広まっている目安です。

これを実際に試した比較試験があります(Buist et al., 2008)。4マイルの大会に向けて走り始めた初心者532人を、10%ルールの考え方に沿った13週間のプログラムと、標準的な8週間のプログラムに分けました。故障の発生率は20.8%と20.3%(P = .90)。差はありませんでした。

つまり、「増やしすぎはよくない」と「10%が安全の境目である」は別の主張です。後者を支える検証は、いまのところ見当たりません。この試験の詳細は走る距離の増やし方で扱いました。

では、どこからが「急」なのか。研究ごとに答えが違います。初心者874人の追跡では、週の距離を30%を超えて増やした群で、距離に関連するタイプの故障が多い傾向が見えました。ただしハザード比1.59の95%信頼区間は1.0をまたぎ(0.96〜2.66)、P = .07。有意には届いていません(Nielsen et al., 2014)。ハーフマラソンの準備期を追った261人では、週20〜60%増やした群のリスクが21日の時点でのみ高く出ました(リスク差22.6%、P = .041)。56日と98日の時点では差がありません(Damsted et al., 2019)。

「距離を増やすのと、スピードを上げるのと、どちらが危ないか」。ランダム化した比較では、両者の差を示せませんでした(Ramskov et al., 2018)。そもそも、この論点を扱った系統的レビューに入った論文は4本しかありません(Damsted et al., 2018)。研究の総数のほうが、結論よりよほど雄弁です。

風向きが変わったのは、2025年です。

GPSウォッチの記録を使った解析が、5,205人・588,071回の練習を18か月追いました(Frandsen et al., 2025)。ここで測ったのは週の合計ではありません。その日1回の距離が、直近30日でいちばん長かった1回をどれだけ超えたかです。10〜30%超えた区分でハザード率比1.64(95%信頼区間 1.31〜2.05)、30〜100%で1.52(1.16〜2.00)、100%超で2.28(1.50〜3.48)と報告されました。

読み方には注意が要ります。3つの区分は、超えるほど高くなるという並びになっていません。真ん中の区分がいちばん低い。「超えた分だけ危ない」という単純な形ではない、ということです。もう一点、これは観察研究です。「長く走ったから故障した」のか「不調のきざしがある日に無理をした」のかを、この設計では区別できません。

同じ解析で、ACWR(急性:慢性負荷比)には「高いほど故障が多い」という関係が見られず、前週比にも関連が認められませんでした。ACWRの記事では、この指標をリスクの判定装置ではなく、自分の負荷の増減に気づくための道具として扱っています。今回の結果は、その位置づけと矛盾しません。むしろ補強する側です。

この10年で変わったのは、境界の数字ではなく、見る単位のほうでした。

予防で​確かめられた​こと、​確かめられていない​こと

ここが、この記事でいちばん歯切れの悪い節です。そして、正直に書く価値がある節でもあります。

競技を問わないスポーツ集団では、予防の効果がはっきり出ています。ランダム化比較試験25本・26,610人・3,464件の外傷をまとめたメタアナリシスがあります(Lauersen et al., 2014)。統合リスク比は、筋力トレーニングが0.315(95%信頼区間 0.207〜0.480)。固有受容感覚のトレーニングが0.550(0.347〜0.869)、複合プログラムが0.655(0.520〜0.826)でした。ストレッチ単独は0.963(0.846〜1.095)で、信頼区間が1.0をまたいでいます。オーバーユース型の障害に絞ると0.527(0.373〜0.746)。筋力トレーニングだけを対象にした続報でも、同じ方向の値が出ています(リスク比0.338、6試験7,738人。Lauersen et al., 2018)。

ここで話が終わる記事は、たくさんあります。

持久系ランナーだけに絞ると、同じ結論になりません。 ランダム化比較試験9本・1,904人をまとめた解析(Wu et al., 2024)では、運動を用いた予防プログラムは、故障のリスクも発生率も有意には下げませんでした。唯一有意だったのは、指導者が付いて行われた介入に限った下位解析です。

その下位解析にも留保が要ります。含まれたのは3研究・118人以下と小さく、著者もサンプルの小ささが結果を不安定にしていることに触れています。加えて、9研究のうち7研究がバイアスリスク「高」と評価され、指導者が付かない群では取り組みの継続率が47〜72%にとどまっていました。

陸上競技の選手に絞った2025年のメタアナリシスは、介入群のほうが1000時間あたり7.63件少なかったと報告しています(95%信頼区間 3.20〜12.07減。Weerasinghe et al., 2025)。ただし統合できたのは10本中3本で、研究間のばらつきを示す指標は88%と極端に高い値です。対象も、投てきや跳躍を含む陸上競技の選手であって、市民ランナーではありません。この数字を単独で持ち出すと、実態より強く読めてしまいます。

整理します。

  • 「筋トレをすればランナーの故障が3分の1になる」とは書けません。Lauersen らの対象はランナーではないためです
  • 「ストレッチは意味がない」とも書けません。示せなかったのは故障の予防効果で、可動域や走る前の準備としての価値は別の話です(ウォームアップの記事で扱いました)
  • 「予防プログラムは無駄」とも書けません。有意差がないことと、効果がないことは違います

有意差なし、が続きました。では、ここから何を持ち帰るか。

Wu らの下位解析は、「メニューの中身より、続く形になっているかどうかが効いている可能性がある」という仮説として読めます。継続率47〜72%という数字が、その手がかりです。渡した予防メニューの半分が実行されていない状態で、中身の優劣を比べても差は出にくいはずです。

筋力トレーニングの位置づけはランナーに筋トレは必要かに、道具に何を期待できるかはテーピングとサポーターにまとめました。

現場での​組み立て​(ここからは​指導上の​目安です)

ここから先は研究の結論ではありません。上の枠組みを、週の練習にどう落とすかです。個人差がありますが、始めるときの形としては、このあたりが目安です。

  1. 翌日を「作り直しの日」として先に置く。 長い距離を走った翌日は、前日の練習に体が応えている時間だと考えて組みます。そこにもう一度強い刺激を入れるかどうかは、練習の効果ではなく、受け止められる量の側から決めます。日曜に距離を踏む方の月曜は、最初から軽い日として先に埋めてしまいます
  2. 週の振り返りで、合計だけでなく「いちばん長かった1回」を見る。 日曜の夜に記録アプリを開いて週の合計を確かめるなら、そこに1行だけ足します。「この4週間でいちばん長かった1回は何kmで、今週の最長はいくつか」。Frandsen らの結果を日曜の夜の作業に翻訳すると、こうなります
  3. 忙しい時期は、量のほうから削る。 時間が取れない週に真っ先に消えるのはポイント練習で、残るのはジョグ。ここでは逆にします。強度と頻度を残して、1回あたりの時間を短くする。Spiering らの整理は一般集団のものですが、向きとしては合っています
  4. 休める余白を、あらかじめ週の中に置く。 痛みが出てから休みをつくろうとすると、たいてい間に合いません。最初から動かせる日が2つあれば、体調の波をそこで吸収できます
  5. 予防メニューは「何をやるか」より「続く形か」を先に決める。 種目を10個渡して3週間で消えるより、2種目が半年残るほうがいい。Wu らの下位解析は、この順番を考える手がかりになります

線引きも書いておきます。私は治療の専門家ではありません。S&Cコーチとして、トレーニング側を担当する立場です。ここで扱ったのは、健康な状態で練習を組み立てるときの考え方であって、故障の診断や治療の話ではありません。痛みが続く、腫れがある、走るたびに強くなる。そうした場合は、負荷の工夫でどうにかしようとする前に、整形外科など医療機関にご相談ください。これらは例示であり、当てはまらなくても症状が続くときは受診をご検討ください。「増やし方を守っているから大丈夫」という自己判断で走り続けることは、避けていただきたいと思います。

よく​ある​質問

Q. 結局、週に何日休めばいいですか。 A. 休養日の頻度を比べた試験は、今回の調査範囲では見つかりませんでした。「週◯日」と答えられる根拠がない、というのが正直なところです。代わりに使えるのが、運動後の作り直しの時間経過(Miller et al., 2005)と、量を減らしても強度を保てば維持できたという報告(Spiering et al., 2021)。この2つから、「強い日の翌日は軽くする」「忙しい週は量から削る」という組み立てが出てきます。

Q. 休むと落ちるのが怖いです。 A. まったく走らない期間が続けば、最大酸素摂取量や血液量は下がると報告されています(Mujika & Padilla, 2000)。ただし同じレビューで、筋力の低下は限定的だとも書かれています。そして、持久系の競技者を対象にした解析では、レース前に計画的に量を減らすと記録が上がる方向に動いたという報告もあります(Wang et al., 2023)。「完全に走らない」と「量を減らす」は、分けて考えてください。

Q. 初心者のうちは、何に気をつければいいですか。 A. 走った時間あたりの故障発生率は、初心者で17.8、市民ランナーで7.7と報告されています(Videbæk et al., 2015)。ただ、「初心者だから危ない」と言うより、体がまだ走る負荷に慣れていない時期だから、と考えるほうが枠組みと合います。走り始めの組み立ては最初の1か月にまとめました。

Q. 過去に故障したことがあります。もう治っているのに関係しますか。 A. 市民ランナー224人の1年追跡では、過去のケガがある人の故障率が1.9倍(95%信頼区間 1.2〜3.2)と報告されています(Desai et al., 2021)。同じ研究で、年齢・性別・BMI・走ってきた年数・週の距離には有意な関連がありませんでした。既往を「注意して見る一点」として扱う理由にはなります。ただしこれは集団の話で、個別の状態は医療機関で確認してください。

まとめ

限界を先に書きます。この分野の研究には弱いところが多くあります。日本人を対象にした前向きのデータがなく、負荷と故障の関係はほぼ観察研究で、予防試験の質も総じて高くありません。枠組みの論文は理論であって、検証された因果ではない。そのうえで、持ち帰れるものを並べます。

  • 「ランナーの何%が故障するか」に一つの数字はありません。何をケガと数えるかが研究ごとに違うためです
  • 「使いすぎ」というより、その日の体が受け止められる量を上回った、と考えるほうが整理しやすくなります(Bertelsen et al., 2017)。骨に絞った総説では、唯一最適な負荷量は存在せず、状況に左右される幅があるとも報告されています(Warden et al., 2021)
  • 休むことは、失うことではありません。運動後の作り直しは24時間後にピークを迎え、72時間後もなお続いていたという実測があります(Miller et al., 2005)。ただし対象は14人、運動はランニングではなく片脚のキックです
  • 「週10%まで」を検証した比較試験では、故障の発生率は20.8%と20.3%で、ほとんど差がありませんでした(Buist et al., 2008)。「急に増やさない」という原則と、「10%が安全の境目」は別の主張です
  • ランナーだけに絞ると、予防プログラムが故障を有意に減らしたとは言えていません(Wu et al., 2024)。有意差がないことと、効果がないことは違います。効果が見えたのは指導者が付いた介入に限った小さな下位解析で、「中身より続く形」という仮説として読める範囲です
  • 痛みが続くときは、負荷の工夫より先に医療機関へ

直近4週間の記録を開いて、「いちばん長かった1回」の距離を確かめてみてください。今週それを大きく超える予定があるなら、そこだけ組み直す。合計を計算し直すより、先に効きます。

関連リンク

参考文献

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  3. Wu H, Brooke-Wavell K, Fong DTP, Paquette MR, Blagrove RC. Do exercise-based prevention programs reduce injury in endurance runners? A systematic review and meta-analysis. Sports Medicine. 2024;54(5):1249-1267. doi:10.1007/s40279-024-01993-7
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本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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