運動会のかけっこで、最初の一歩をもう少し軽く出してあげたい。「よーいドン」で出遅れる姿を見た日は、なおさらそう感じます。
学校で50m走のタイムを測るときの決まりでは、小学生はスタンディングスタート(立ったままの構え)、手を地面につくクラウチングスタートは中学生からとされています。運動会のかけっこに全国共通の決まりはありませんが、小学校では多くの場合、立ったままの構えで走ります。ですから家で練習するのは、立ったままの構えのほうです。
そのうえで、家で確認できるのは大きく2つ、「よーい」の構えと、合図への反応です。本番までの短い時間に何をどれくらい入れるかは、後半のよくある質問にまとめました。学年ごとの平均タイムや、小学生と中学生でスタートのしかたが変わる点は50m走の平均タイムにまとめました。
家で1つだけやるなら、「よーい、ゴー!」で5mだけを3本です。長く走る必要はありません。
なお、走っていて痛みを訴えたときは、その日は練習を中止し、痛みが続く場合は医療機関にご相談ください。
「よーい」の構え——前足に体重、軽い前傾
低学年ほど「合図が鳴ってから走る体勢になる」子が多く、その分だけ最初の一歩が遅れる傾向があります。ピストルが鳴ってから膝を曲げ、それから前に体を倒す。裏を返せば、合図の前に出やすい構えを作っておくことは、家庭でも取り組みやすい部分です。これも一般的な傾向であって、身長・脚の長さ・発達の段階によって出方は変わります。
前後の足の位置と体の傾きが決まると、最初の一歩が出やすくなるとされています。当スクールの種目ガイドにそって、家庭で確認する手順を並べます。
- 足を前後に開く:利き足と逆の足を前にして立ちます。幅は肩幅より少し広めが目安。どちらの足が前だと走り出しやすいかは、左右を試して比べてみてください。
- 前足に体重を乗せる:前の足に体重を乗せ、体を「くの字」に軽く前へ傾けます。この軽い前傾が、一歩目の出やすさにつながると考えられています(成人での報告をふまえた考え方はかけっこの姿勢に)。
- 視線は数メートル先へ:下を向きすぎると転びやすくなります。目線は足元でなく、数メートル先の地面に。
- 「よーい、ゴー!」で5mだけ:玄関から門までくらいの距離を走り出し、3〜5回繰り返します。
前傾は「軽く」がポイントです。深く傾けすぎると、一歩目でつまずいたり、上体だけ前に倒れて足がついてこなかったりします。傾ける角度より「前足で地面を押して出る」感覚のほうが、走り出しの安定につながる傾向があります。写真つきの手順はスタートの構え(よーい)のガイドに。
くわしい整理:短い距離では、最初の数歩の比重が大きくなりやすい
短距離走は、合図への反応とスタート、加速局面、最高スピードを保つ区間、減速区間といった段階で構成されると整理されています(Mero, Komi & Gregor, 1992)。
表:短距離走の4つの局面(スプリント走の整理)
| 局面 | 主な内容 | 小学生の運動会での関わり |
|---|---|---|
| 反応・スタート | 合図に反応し、地面を押して走り出す | 出遅れると、短い距離では取り返しにくい |
| 加速局面 | 一歩ごとにスピードが上がっていく区間 | 短い競走ではスタートと加速の出来が相対的に重要 |
| 最高スピード維持 | 上がりきったスピードを保つ区間 | 到達する距離には発達や個人差がある |
| 減速 | スピードが落ちていく区間 | ゴール手前で減速する癖に注意 |
※出典:Mero, Komi & Gregor(1992)が整理したスプリント走の局面構造に基づき作成
これは成人のスプリント走を整理したもので、小学生がどの距離で最高速度に達するかには発達差があり、引用した研究のまとめだけから一律には決められません。小学校のかけっこは50〜80m程度、校庭の直線ひとつ分ほどです。そのかなりの部分は「まだ加速している途中」にあたると考えられます。ただし、速さには発達の個人差が大きく関わります。構えと反応を整えれば順位が変わる、という話ではありません。
合図への反応は、遊びで繰り返す
構えができたら、次は合図で動き出す練習です。技術というより、音を聞いてから体が動くまでの反応の練習になります。遊びの形にすると、子どもは何度でも繰り返します。
- その場で、できるだけ細かく速く足踏み(3〜5秒)。
- 保護者の「ゴー!」で、前に5〜10mダッシュ。
- 本数は2〜4本。合図のタイミングを毎回変えるのがコツです。
「よーい……(少し待つ)……ゴー!」のように間を変えると、合図をよく聞いて反応する練習になります。足踏みで軽く体を動かしておくと、止まった状態から始めるより動き出しやすくなります。合図は声でも、手をたたく音でも構いません。本番のピストルやホイッスルに近い、短くはっきりした音にしておくと当日の助けになります。
ひとつ注意したいのは、疲れてくると反応が鈍る点です。たとえば夕方の公園で、5本目あたりから足踏みがのろくなることがあります。「あと1本やりたい」くらいで切り上げると、次も前向きに取り組めます。手順はその場クイックステップ→ダッシュのガイドにもまとめました。
よくある質問
Q. クラウチングスタート(手を地面につく構え)は、今から教えたほうがいいですか。
小学生のうちは急がなくて構いません。学校で50m走を測るときの決まりでも中学生からで、小学校の運動会で使う場面も多くありません。立った構えで前足を押して出る感覚は、あとで手をつく構えに移るときの土台にもなります。リレーの第1走者も、同じ立った構えから始まります(運動会のリレーで速く走るコツ)。
Q. どちらの足を前にしますか。
利き足と逆の足を前に、が一つの目安です。ただ、当てはまらない子もいます。左右を両方試して、走り出しやすいと本人が感じたほうを選ぶ。それで足ります。
Q. 合図より先に飛び出してしまいます。
待ちきれずに出てしまう子は珍しくありません。構えを作ったら「合図が鳴るまで前足を押さない」の1点だけを約束します。練習で合図までの間を毎回変えておくと、音を聞いてから動く形に近づきます。フライングの扱いは学校ごとに違うので、気になるときは先生に確認するのが早いです。
Q. 本番まで、どれくらいやればいいですか。
当スクールでは、運動会までの期間を「土台づくり期・仕上げ期・調整期」の3段階に分けて考えています。構えと反応の練習が入るのは、主に中盤の「仕上げ期」。姿勢や着地の土台が整う前にスタートの全力走ばかり繰り返すと、崩れた動きのまま固まってしまうことがあるためです。
家庭での目安は1回10〜15分を週に2〜3回ほど。「今日はよーいの構えだけ」と1つに絞るほうが、子ども自身が何をやったか覚えている傾向があります。直前の「調整期」には新しいことを足さず、形を軽く確認する程度に。
残りの週数から3段階の配分を組み立てるならいつから始めるかを逆算するカレンダーが使えます。時期の分け方の考え方は運動会のかけっこ練習、いつから始める?にまとめました。
まとめと、次の一歩
- 引用した研究のまとめは成人のスプリント走を整理したもので、小学生が各局面に達する距離を確かめたものではありません。断定はできませんが、短い距離ではスタートと加速の出来が占める比重が相対的に大きくなります(Mero et al., 1992)。
- 学校で50m走を測るときの決まりでは、小学生は立ったままの構え、手を地面につく構えは中学生からです。運動会のかけっこに全国共通の決まりはありません。
- 「よーい」の構えは、利き足と逆の足を前に(左右を試して比べます)、前足に体重を乗せて軽く前傾、視線は数メートル先。5mだけの走り出しを短く繰り返します。
- 合図への反応は、細かい足踏み→合図でダッシュを遊びに。合図のタイミングを毎回変え、本数は少なめに、元気なうちに終えます。
- スタート練習は主に「仕上げ期」のメニュー。1つに絞り、直前は形の確認にとどめます。
- 痛みが出たときは練習を中止し、続くようなら医療機関にご相談ください。速さや結果には発達の個人差があります。
今週のうちに「よーい、ゴー!」で5mだけを3本、玄関先か公園でやってみてください。3本で終える。物足りないくらいがちょうどよい分量です。
関連リンク
- 関連ツール:運動会のかけっこ練習、いつから? 逆算カレンダー / 50m走 どのあたり?
- 関連ガイド:スタートの構え(よーい) / その場クイックステップ→ダッシュ
- 関連記事:50m走の平均タイム / 運動会のかけっこ練習、いつから始める? / 運動会のリレーで速く走るコツ
- ご家庭だけでは不安なとき:子ども向け指導のご案内
参考文献
- Mero, A., Komi, P. V., & Gregor, R. J. (1992). “Biomechanics of sprint running. A review.” Sports Medicine, 13(6), 376–392. https://doi.org/10.2165/00007256-199213060-00002
- 文部科学省「新体力テスト実施要項(6歳〜11歳対象)」(50m走のスタートのしかた)— PDF
- 文部科学省「新体力テスト実施要項(12歳〜19歳対象)」(中学生以上のスタートのしかた)— PDF
