「リレーの選手に決まった」と子どもが帰ってくる。うれしい半面、本番まで何をしてやればいいのかは、すぐには浮かびません。
リレーで差がつきやすいのは、トップスピードそのものより、カーブでふくらまないことと、バトンの受け渡しです。どちらも走る速さとは別のところにあり、家で確認できます。
そのうえで、見ておく場所はうちの子がどこを走るかで変わります。
表:走る区間でみる、家で見ておく1つ(指導上の目安)
| うちの子が走る区間 | リレーで効いてきやすいところ | 家で見ておく1つ |
|---|---|---|
| 第1走者 | 「よーい」の構えと、そのままカーブへ入るところ | 合図で出遅れていないか |
| カーブがある区間 | 外へふくらまないこと。もらう・渡すの両方がある | 線から外へふくらむか |
| 直線だけの区間 | バトンをもらった直後の立て直し | 受け取ってから速くなっているか |
| 最終走者(アンカー) | もらった直後の加速と、ゴールまで走り抜けること | ゴール手前でゆるめていないか |
| まだ決まっていない | — | ゆるいカーブを7〜8割で2本 |
※ 走る区間や順番は、当日の朝まで決まらないこともあります。決まっていないうちは、いちばん下の行から始めてください。コースの取り方は学校ごとに違うので、カーブを走るかどうかは本人か当日のコース図で確かめられます。
第1走者で合図の出遅れが気になるときは、「よーい」の構えが近い内容です。
家で1つだけやるなら、公園のゆるいカーブを7〜8割の力で2本です。線から外へふくらむかどうかを、線を基準に見てあげてください。
なお、走っていて痛みを訴えたときは、その日は練習を中止し、痛みが続く場合は医療機関にご相談ください。
カーブは、外へふくらまないだけでいい
カーブでは、同じ全力で走ってもまっすぐより速度が落ちやすいことが報告されています(Churchill, Salo & Trewartha, 2015)。ただしこれは大人の陸上選手を対象にした計測で、そのままの数値が小学生に当てはまるわけではありません。
ここから先は研究の結論ではなく、トラック種目の指導で一般的に使われる考え方をもとにした当スクールの指導上の目安です。校庭のトラックの線か、公園の曲がった縁石を1本借りるところから始められます。
- 線の少し内側を走る:はみ出して外へ膨らまないよう、線を基準にします。
- 内側の腕は小さく振る:内側(線に近いほう)をやや小さめに、外側はいつもどおり。体が自然にカーブの内側を向きやすくなります。
- 視線は少し先のカーブへ:足元でなく、進む先のカーブの出口あたりに。
- 7〜8割の力で確認する:最初から全力にせず、2〜3本にとどめます。
体が外側に振られる力がはたらくので、多くの走者は自然と少し内側に傾くものです。難しい理屈は要らず、「内側に、ほんの少しだけ傾けるイメージ」で足ります。やり方はライン走(まっすぐ走る)のガイドにまとめました(カーブでの腕振りはそのバリエーションです)。人や自転車が来ない場所を選んでください。全力に近い走りは体への負担が大きいので、よく温めてから本数は控えめに。
くわしい数字:カーブでどれくらい落ちるのか
さきほどの研究では、全力でのスプリント走を直線とカーブ(半径約38m)で比べています。平均走速度はカーブで低下し、体の傾きや左右の脚の使い方にも直線とは異なる特徴が見られたとされています。半径約38mは、陸上競技場の400mトラックのカーブに近い大きさです。
小学生のリレーを比べた計測ではないので、この数値を子どもに当てはめることはできません。読み取れるのは「カーブでは同じ力でもまっすぐより速度が落ちやすい」という傾向までで、家で見るのは秒数ではなく、外へふくらむかどうかで足ります。
バトンは、走力より段取り
バトンは走力より段取りです。手の出し方を決めて、声をかけて、歩く速さから始めます。リレーで最ももたつきやすいのがここで、走力とは別に練習で整えやすい部分と考えられています。
渡し方のルール(右手か左手か、走りながらか止まってか)は学校によって違うので、学校の指導に合わせるのが前提です。そのうえで、家で確認できるのは次の4つです。
- 受け手は前を向いて待ち、前を向いて出る:振り返って待つより、進行方向を向いて合図で走り出しながら受け取るほうが、スピードを落としにくくなります。低学年では止まって、落とさないように受け渡す形が安全な場合もあり、学年やルールに合わせてください。
- 手の出し方を決めておく:高さと向き(手のひらを上に、など)を先に決めると、渡す側が狙いやすい。右手か左手かは学校のやり方に統一します。
- 声をかける:渡す側の「はい」の一言で、受け手はタイミングを合わせやすくなります。当日の緊張のなかでも残る手がかりです。
- 速さは段階的に:最初は歩く速さで形を確認し、慣れてから上げます。いきなり全力ですれ違うと、落球しやすいからです。
小学生のリレーでは、リードを大きく取らせるのは後回しにします。「リード」(受け手が先に走り出すこと)は、はまればスピードを保ったままつなげます。ただ、タイミングが合わないと、バトンを拾いに戻ることになりかねません。落とさずに受け渡せる範囲から始めるほうが、落ち着いてつなげる傾向があります。誰と組むか、どちらの手で受けるかを本人が把握しているだけでも、当日の不安は減ります。
もらった直後は、いきなり全力にしない
バトンを受け取った直後や、カーブを抜けた先の直線は、スピードを立て直す場面です。子どものリレーは1区間が短いことが多く、その多くを「まだ加速している途中」が占めます。
家では「加速走(だんだん速く)」が取り組みやすい形です。10〜20mを、ジョグ→速歩き→走る、の3段階でイメージして、ゴール地点で最も速くなるように上げていきます。最初から全力になってしまうときは、距離を短くしてやり直すと整いやすい。手順は加速走(だんだん速く)のガイドにあります。
直線でスピードが乗らないときは、「ゴール手前で減速する癖」がついていることがあります。リレーでは自分のゴール=バトンパス地点。そこまで走り抜けるつもりで駆けるほうが、次の走者にいい状態でつながります。
よくある質問
Q. リレーの選手は、どうやって選ばれますか。
リレーの選手の選び方に、全国共通の決まりはありません。学年やクラスの事情に合わせて、学校ごとに決めています。体育の記録をもとにする学校もあれば、クラスの話し合いで決める学校もあります。うちの子の学校のやり方は、担任の先生に聞くのがいちばん早いです。いまの50m走のタイムが同じ学年のどのあたりかを知りたいときは、50m走の平均タイムと、秒数を入れて位置を見る50m走 どのあたり?があります。
Q. バトンは右手と左手、どちらで受けますか。
学校のやり方に合わせてください。ここにも全国共通の決まりはなく、低学年では止まって受け渡す形をとる学校もあります。家で練習するときは、学校で言われたほうの手に統一しておくと、当日に迷いません。
Q. カーブは、内側を走ったほうが速いですか。
走る道のりは内側のほうが短くなるので、自分のコースの内側の線に沿って走れるなら、そのぶん短く済みます。ただし急に内へ切り込むと、隣の走者と接触したり、線を踏み越えて注意を受けたりします。線を1本の目印にして、その少し内側をなぞる。それで足ります。
Q. 本番まで、どれくらいやればいいですか。
家庭での目安は、1回10〜15分を週に2〜3回ほど。「今日はカーブだけ」と1つに絞るほうが身につきやすい傾向があります。直前の週は新しいことを足さず、軽く確認する程度に。残りの週数から練習の並べ方を組みたいときはいつから始めるかを逆算するカレンダーが使えます。時期の分け方の考え方は運動会のかけっこ練習、いつから始める?にまとめました。
まとめと、次の一歩
- 引用した研究は成人スプリンターの計測で、小学生のリレーを比較したものではないため、そのままの数値は当てはめられません。そのうえで、カーブでは直線より速度が落ちやすいことが報告されています(Churchill, Salo & Trewartha, 2015)。
- 見ておく場所は、うちの子が走る区間で変わります。区間がまだ決まっていないなら、カーブから始めれば足ります。
- カーブは、体を内側にほんの少し傾け、内側の腕を小さめに振り、線の少し内側を走るのが一つの目安です。
- バトンパスは、受け手が前を向いて出る・手の出し方を決める・声をかける・段階的に速さを上げるのが基本です。手や並び順は学校のやり方に合わせます。
- 選手の選び方も、バトンをどちらの手で受けるかも、学校ごとに決められています。迷ったら先生に確認するのが早い。
- 痛みが出たときは練習を中止し、続くようなら医療機関にご相談ください。速さや結果には発達の個人差があります。
公園のゆるいカーブを1本選んで、7〜8割の力で2本だけ走ってみてください。外へ膨らむかどうかを、線を基準に見てあげてください。
関連リンク
- 子どもの靴のサイズの選び方——走る前に、足に合っているかの確かめ方
- 関連ツール:運動会のかけっこ練習、いつから? 逆算カレンダー / 50m走 どのあたり?
- 関連ガイド:ライン走(まっすぐ走る) / 加速走(だんだん速く)
- 関連記事:運動会のかけっこ練習、いつから始める? / スタートダッシュの「よーい」の構え / 50m走の平均タイム
- ご家庭だけでは不安なとき:子ども向け指導のご案内
参考文献
- Churchill, S. M., Salo, A. I. T., & Trewartha, G. (2015). “The effect of the bend on technique and performance during maximal effort sprinting.” Sports Biomechanics, 14(1), 106–121. https://doi.org/10.1080/14763141.2015.1024717
