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筋トレと​ランニングは​同じ​日に​やっていい?​——並行トレーニングの​考え方

出典2件・すべて一次情報にリンク

ダンベルとシューズを見比べる人の線画イラスト

筋トレとランニングは、同じ日にやってもいいのか。走る人が筋トレを始めると、次に挙がりやすい疑問です。同じ日にやってはいけない、と言い切る研究はありません。ただし、筋トレとランニングの間隔をどれくらい空けるかで、その日の練習の質は変わりうると報告されています。この記事では、自分の1週間のどこに筋トレを置くかを、目的から選ぶための材料を示します。

背景にあるのは「干渉効果」と呼ばれる現象です。筋トレと持久系トレーニングを同じ時期に続けると、狙った適応が部分的に打ち消し合うことがある、という報告があります。まず何がどれだけ削られたのかを見て、そのうえで並べ方の話に移ります。

干渉効果とは、​ふたつの​適応が​競合する​こと

先に、用語の確認から。並行トレーニング(concurrent training)とは、筋力トレーニングと持久系トレーニングを同じ期間に並行して行うこと。干渉効果(interference effect)とは、この2つを組み合わせたときに、片方だけを行った場合に比べて狙った適応が小さくなる現象を指します。

なぜそうなるのか。ごく単純化すると、筋力を伸ばす方向の体の反応と、持久力を伸ばす方向の体の反応は、細胞レベルで一部が別の方向を向いているためだと考えられています。もうひとつ、片方の練習で生じた疲労が、もう片方の練習の質を下げるという現実的な要因。この2つは時間軸が違うので、あとで分けて扱います。

削られたのは、​筋肉・筋力・パワーの​側だった

並行トレーニングの研究を21件・422の効果量で統合したメタ分析を見てみます(Wilson et al., 2012)。

適応(何が伸びたか)筋トレのみ筋トレ+持久(併行)持久のみ
筋肥大の効果量1.230.850.27
パワーの効果量0.910.550.11
筋力の効果量(群内SMD)1.761.44—(対象外)

表:筋トレのみ・併行・持久のみで、筋肥大/パワー/筋力の伸び(効果量)を比較したもの。効果量は大きいほど伸びが大きいことを示す。表の数値は点推定値の比較であり、筋トレ単独との統計的有意差は項目ごとに異なる。同メタ分析では、持久系の様式が「ランニング」のとき筋肥大・筋力に統計的に有意な低下がみられ「自転車」では明確な低下がみられなかったこと、持久系トレの頻度(相関 −0.26〜−0.35)と継続時間(−0.29〜−0.75)が多いほど干渉が大きくなる負の相関も報告されている。(出典: Wilson et al., 2012)

ここで走る人にとって大事なのは、このメタ分析が「何を測ったか」です。測定されたのは筋肥大・筋力・パワーで、そこに併行時の伸びの縮小が観察されました。裏を返せば、持久側(走力)と同じ土俵で測って、どちらがより削られるかを対称的に比べた研究ではありません。「筋トレ側だけが削られ、走力側は無傷」と読むのは行き過ぎで、あくまでこの3つの項目で縮小が観察された、と受け止めるのが正確なところです。

ここまでが研究の結論。ここから先は指導上の目安として読んでください。走る人にとって、干渉が強く出た様式がまさに「ランニング」だという点は避けようがありません。だからこそ、走る量が多い時期ほど、筋力や筋肉量の伸びはゆっくりになりうると見込んでおくほうが現実的です。ただしそれは失敗ではありません。走る人の筋トレの主眼は、そもそも筋肉を大きくすることではなく、持っている力を出しやすくすることにあります(ランナーに筋トレは必要か)。狙いが違えば、干渉の受け止め方も変わります。

筋トレと​ランニングの​間隔は、​何時間​空ければ​いいのか

結論から言えば、「何時間空ければ大丈夫」という数字は確立していません。分かっているのは、間隔が足りないと後の練習の質が落ちうる、という方向だけです。

筋トレ1回分が持久系パフォーマンスに与える急性の影響を検討したレビューがあります(Doma, Deakin & Bentley, 2017)。1回の筋力トレーニングが残存疲労を生み、十分な回復を挟まずに持久系トレを行うと、そのパフォーマンスが低下しうると整理されています。想定される仕組みは、神経系の動員パターンの乱れ、動きの効率の低下(フォームが変わって酸素コストが増える)、筋肉痛、筋グリコーゲンの減少です。影響が残る時間は、数時間から数日と幅があります。

つまり干渉には、数か月かけて適応が削られる長い話と、重い筋トレの数時間後に走るとフォームや燃費が乱れる短い話の、2つの層があるということ。日々の練習で実感しやすいのは後者です。朝に筋トレ、仕事帰りにジョグなら、間はおよそ10時間。同じセッションで連続させるより、これくらい離せる日を選ぶほうが、走りの側は守りやすくなります。

その​日いちばん守りたい​練習を​決める

完璧な時間割を探すより、「その日いちばん守りたい練習の質を落とさない」という発想で組みます。崩れやすいのは順番の細部ではなく、主役のはずの練習に疲労がかぶさった日だからです。たとえば水曜のインターバルに向けて、火曜の夜に重いスクワットを入れると、当日「脚が入らない」ということが起こります。

迷ったときの手がかりは、次のような整理です。一つの目安であり、個人差があります。

  • その日の主役を決める。インターバルや距離走を最良の状態でやりたい日は、その前に重い筋トレを積み重ねない。Doma らの言う残存疲労を、守りたい練習にかぶせない発想です。
  • 間隔と回復を確保する。同一セッションで連続させるより、時間を空ける。
  • 始めたばかりの時期ほど粗くていい。「重い筋トレの翌日に、いちばん大事な走練習を置かない」くらいの管理から始めて構いません。順番を細かく最適化するより、続けられる形にするほうが先です。

研究が示すのは「干渉は起こりうる、条件で変わる」という集団の傾向で、そこから先の当てはめ方は、走る量・使える時間・回復力を見ながら決める個別の判断になります。負荷が積み上がりすぎていないかを客観的に見る方法は練習の「詰め込みすぎ」を数字で見る——ACWRという考え方に、回復そのものの土台は走る人のための睡眠にまとめてあります。

なお、慢性的な痛みや強い張りが続く場合は、練習の並べ方の問題として自己判断で押し切らず、医師などの専門家にご相談ください。

まとめと、​次の​一歩

  • 「何時間空ければ大丈夫」という確立した数字はありません。分かっているのは方向だけ、という前提で以下をお読みください。
  • 並行トレーニング(筋トレ+持久系トレ)では、互いの適応を部分的に打ち消す「干渉効果」が起こりうると報告されています。
  • このメタ分析(Wilson et al., 2012)が測定したのは筋肥大・筋力・パワーで、併行時にはこれらの伸びが小さくなる傾向が報告されました。持久系の様式が「ランニング」のとき(自転車では見られず)、また持久系の頻度・継続時間が多いほど、その縮小は大きくなる傾向でした。ただし持久側(走力)と対称的に比較した研究ではないため、「筋トレ側だけが削られる」と読み過ぎないでください。
  • 別のレビューでは、1回の筋トレが残す疲労が、間隔を十分空けずに行う持久系トレの質(フォーム・燃費など)を下げうるとされています(Doma, Deakin & Bentley, 2017)。数か月単位の適応の話と、その日の疲労の話は、分けて考えると整理しやすい。
  • 指導上の目安としては「その日いちばん守りたい練習の質を落とさない」を軸に、間隔を空ける、質の高いポイント練習の前後に高強度筋トレを密着させない、といった調整が考えられます。最適な並べ方には個人差があります。

今週の予定を見て、いちばん質を守りたい練習を1つだけ選んでみてください。その前日と当日から重い筋トレをどかす。並べ方の調整は、そこから始まります。

関連リンク


参考文献

  1. Wilson, J. M., Marín, P. J., Rhea, M. R., Wilson, S. M. C., Loenneke, J. P., & Anderson, J. C. (2012). “Concurrent Training: A Meta-Analysis Examining Interference of Aerobic and Resistance Exercises.” Journal of Strength and Conditioning Research, 26(8), 2293–2307. doi:10.1519/JSC.0b013e31823a3e2d
  2. Doma, K., Deakin, G. B., & Bentley, D. J. (2017). “Implications of Impaired Endurance Performance following Single Bouts of Resistance Training: An Alternate Concurrent Training Perspective.” Sports Medicine, 47(11), 2187–2200. doi:10.1007/s40279-017-0758-3
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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