ランジやスプリットスクワットを、走りに効く形で取り入れたい。結論から言うと、「走りは片脚ずつの動作だから、片脚種目のほうが効く」という説明は、比較研究に支持されているとは言えません。かといって片脚種目が不要という話でもありません。この記事では、片脚か両脚かを選ぶ問題ではなく、どう配分するかの問題として扱います。
では、片脚種目は何のために入れるのか。そして、片脚スクワットでぐらつくのは何が原因で、どう扱えばよいのか。水平方向の動作(スプリントなど)を測ったメタ分析では、両脚・片脚のどちらも有効で、両者の差は認められませんでした(Moran et al., 2021)。この報告を手がかりに、種目の違い、ぐらつきの扱い、避けたい場面まで見ていきます。下半身トレーニング全体の見取り図は走る人の下半身筋トレ——最初に覚えたい3つの動作パターン、両脚スクワットの型はスクワットのフォームが扱います。
「片脚だから走りに効く」は研究に支持されていない
そのメタ分析(Moran et al., 2021)は、健康な参加者を対象に、両脚と片脚のレジスタンストレーニングを比べた介入研究を集めたものです。著者らは「両脚・片脚のいずれも水平方向の動作パフォーマンスの向上に有効である。しかし……片脚のほうがこれを達成するのに効果的ということはなかった」と結論しています。効果量(標準化平均差。単位の異なる指標をそろえて比べられる形にした値)は下の図をご覧ください。
ほかのメタ分析や個々の試験も、おおむね同じ方向でした。数値は下の表にまとめます。
| 研究 | デザイン・対象 | 主な報告 |
|---|---|---|
| Moran et al., 2021 | メタ分析/健康な参加者を含む介入研究 | 水平方向の動作で両脚 0.60、片脚 0.57。群間差 0.17(95%CI −0.15〜0.50、p = 0.30) |
| Liao et al., 2022 | メタ分析(14研究・392名、16〜26歳) | 片脚跳びは片脚が有利(0.89、[0.52, 1.26])、両脚での筋力は両脚が有利(−0.43、[−0.71, −0.14])。片脚での筋力(0.26、[−0.03, 0.55])・両脚跳び(−0.04、[−0.31, 0.23])・方向転換(0.31、[−0.01, 0.63])・スピード(−0.12、[−0.46, 0.21])は有意差なし |
| Kassiano et al., 2025 | メタ分析(703件から9件を採用) | 筋肥大は有意差なし(−0.21、95%CI −3.56〜3.13、P = 0.57)。両脚での筋力は両脚が(0.56、0.16〜0.96、P = 0.01)、片脚での筋力は片脚が(−0.65、−0.93〜−0.37、P = 0.001)大きい増加 |
| Speirs et al., 2016 | 5週間・週2回/アカデミーのラグビー選手18名 | 1RM・40mスプリント・プロアジリティに時間の主効果。群と時間の交互作用は観察されず(伸び方に群間の違いが見られなかった) |
| Appleby et al., 2019/2020 | 18週間・同一コホートの33名を扱った2本の報告/量と負荷をそろえ、スクワットかステップアップかだけを変更 | 行っていない側の種目への転移(両脚群のステップアップ 0.27 ± 0.39、片脚群のスクワット 0.42 ± 0.39。効果量 ± 90%信頼限界で、区間には0が含まれる)。20mスプリントは両群とも改善し群間差は不明瞭 |
表:片脚と両脚を比べた研究の要約(出典: Moran et al., 2021 / Liao et al., 2022 / Kassiano et al., 2025 / Speirs et al., 2016 / Appleby et al., 2019・2020)。値はいずれも効果量。Kassiano の筋肥大は信頼区間が −3.56〜3.13 と極めて広く、「差がないと確認された」のではなく「限られた文献では差を示す根拠が得られなかった」と読むのが妥当です。
読み取れるのは、テストした課題に近い形で伸びやすいという特異性の傾向です。片脚跳びは片脚トレーニング、両脚での筋力は両脚トレーニングが有利。一方、走る速さに近いスピードの指標では差が示されていません。かといって「片脚種目は不要」でもない、という位置づけです。
4つの種目は、何がどう違うのか
呼び名を整理します。以下の分類は研究が定めたものではなく、現場で使われている区別を本記事がまとめたものです。
スプリットスクワットは、足を前後に開いた姿勢のまま、その場で真下に沈んで立ち上がる動き。ランジはそこに移動が加わり、踏み出す・後ろへ引く・歩きながら進む・跳ぶ、と幅があります。後脚挙上スプリットスクワット(ブルガリアンスクワット)は後ろの足を台に乗せた形。ステップアップは台に片脚で乗り上がる動きです。
研究から拾えることが3つ。後脚を台に乗せる形では、前脚が鉛直方向の力全体の 84.36 ± 3.6% を負担していたと報告されています(Helme et al., 2022。男性26名・715回の反復)。体を持ち上げているのはほぼ前脚、という配分です。前後の開き幅を変えると、股関節側と膝側への負担配分が変わりました(Song et al., 2023。男子大学生20名)。ただし20名の急性の生体力学の比較であり、長期の効果を比べたものでも、個人に最適な歩幅を決める根拠でもありません。
3つめは、ランジは型で結果が変わるという報告。6週間の試験(Jönhagen et al., 2009。サッカー選手32名)では、歩行型ではハムストリングの筋力が、跳躍型ではスプリント走の成績が改善したとされています(機能テストとして30mスプリント走が用いられました。要旨には効果量の記載がありません)。なお筋活動の比較(DeForest et al., 2014。男性9名)では、大腿二頭筋のみ後脚挙上が有意に高く、ほかはおおむね同程度。ただし負荷条件はそろっておらず、1回の実施中の筋電図の比較であって、数週間・数か月続けたときの変化の差を示したものではありません。
ここからは研究が示した使い分けではなく、報告を踏まえた現場での組み立て方です。姿勢を保ったまま脚に体重を乗せる感覚を覚えたいときはスプリットスクワット、その感覚を移動の中で保ちたいときはランジ、前脚に大きな負担を集めたいときは後脚挙上、上り下りの制御を扱いたいときはステップアップ。各種目の動きの確認にはエクササイズガイドが入口になります。
片脚スクワットでぐらつく原因と、課題の戻し方
片脚種目を始めたときに戸惑いやすいのは「ぐらつく」ことです。原因を筋力不足に求めたくなりますが、支える力そのものより、いまの課題が少し難しすぎることのほうを先に疑います。床がマットか板張りか、シューズが厚底か薄いソールかでも、ぐらつき方は変わります。膝が内側に入り続けるのも、条件が合っていないという合図として扱えます。
ぐらつきを我慢して同じ課題を続けることはしません。姿勢が崩れたまま重ねた回数は、狙った場所への刺激にならないまま疲労だけを残すからです。ふらつかない条件まで課題を戻すほうが、結果的に早く進みます。
段階は、おおむね次の順につけます。これは研究で検証された順序ではなく、指導上の目安です。
- 壁や柱に指先を添えてスプリットスクワット(触れるのは指2本分で足ります)
- 支持なしのスプリットスクワット
- 前後の開き幅と沈む深さを、姿勢を保てる範囲で調整する
- 手に重さを持つ
- 後脚を台に乗せる(前脚の負担が増える)
- ランジ、そのあとに跳躍を伴う型
3の開き幅は、股関節まわりを扱いたいときは長め、膝まわりのときは短め、という目安として使い、最終的には姿勢を保てる幅に落ち着かせます。6の跳躍を伴う型は着地の衝撃が加わるので、別の管理が要ります(ランナーのプライオメトリクス)。回数・セット数・週の頻度は種目ごとではなく計画の話なので、走る人の筋トレ、何回・何セット・週何回?へ。片脚と両脚の比率も、どちらかを選ぶ問題というより計画の中でどう配分するかの問題です。本記事では重量や%1RMの設定は扱いません。
左右を別々に扱えるのは片脚種目の利点です。ただし、左右差を小さくすることが走りの改善やケガの減少につながるかどうかは、ここで引用した研究が調べた範囲の外です。左右差の数値そのものを目標にしない、というのが現場での扱いになります。
やらない方がよい場面と、痛みが出たとき
前提を書きます。片脚種目について、行わないほうがよい条件を体系的に検証した研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。以下は研究の結論ではなく、指導上の判断です。
痛みが出ている最中に、フォームの工夫で押し通そうとしないこと。膝や股関節に痛みがあるまま続けると、痛みを避ける動きが混ざって動きを評価しにくくなります。負荷や深さを下げる、支持を借りる、種目を変える。先に試せる手はいくつもあります。
疲労でフォームが崩れ始めたら、その日はそこで終えること。片脚種目は姿勢を保つ要素が大きいぶん、疲労の影響がフォームに出やすい種目です。たとえば平日の夜、ジョグから戻ってすぐに片脚種目を並べた日は、脚が残っていないぶんぐらつきが増えます。回数をこなすことより、保てる質のまま終えることを優先します。走練習の直前に片脚種目を大量に入れないのも同じ理由です。並べ方は筋トレとランニングは同じ日にやっていい?で扱いました。
線引きです。強い痛みで体重をかけられない、転倒などの外力のあとの痛み、変形や急な腫れ、しびれや力が入らない感じがある場合は、当日中を目安に受診してください。これらは注意したい状態の例であり、当てはまらなければ安全という意味ではありません。膝の外側の痛みが続く場合は膝の外側が痛い——腸脛靱帯炎(ランナー膝)、走る量を増やす時期の痛みは走りを再開するときに整える順番も参考になります。
まとめと、次の一歩
引用した研究は競技者や健康な参加者が対象で、期間も5〜18週間。市民ランナーを対象に、数年単位で比べたものではありません。その範囲での話として読んでください。
- 「走りは片脚ずつの動作だから、片脚種目のほうが効く」という説明は、比較研究に支持されているとは言えません。水平方向の動作では両脚・片脚のいずれも有効で、両者の差は認められませんでした(Moran et al., 2021)。
- 指標ごとに見ると、テストした課題に近い形で伸びやすい特異性の傾向。片脚跳びは片脚トレーニング、両脚での筋力は両脚トレーニングが有利で、スピードには差が示されていません(Liao et al., 2022)。筋肥大は差がないと確認されたのではなく、限られた文献では差を示す根拠が得られなかったという読みが妥当です(Kassiano et al., 2025)。
- 種目は目的で選び分けられます。後脚挙上では前脚が力の大半を引き受け(Helme et al., 2022)、開き幅で股関節側と膝側の配分が変わり(Song et al., 2023)、ランジは型で改善した指標が異なると報告されています(Jönhagen et al., 2009)。筋電図の比較は1回の実施中の値で、長期の変化の差を示すものではありません(DeForest et al., 2014)。
- ぐらつくときは我慢して続けるより課題を戻す、疲労でフォームが崩れたらその日は終える。これは検証された基準ではなく現場での扱いです。行わないほうがよい条件を検証した研究は見当たりませんでした。
- 強い痛みで体重をかけられない、外力のあとの痛み、変形や急な腫れ、しびれや脱力がある場合は、当日中を目安に受診してください。
今週の筋トレの最初に、壁へ指先を添えたスプリットスクワットを左右5回ずつ入れてみてください。支えを離したときにぐらつくかどうかで、いまの課題が自分に合っているかを確かめられます。
関連リンク
- 下半身トレーニングの全体像:走る人の下半身筋トレ——最初に覚えたい3つの動作パターン
- 両脚スクワットの型:スクワットのフォーム
- 量と頻度の設計:走る人の筋トレ、何回・何セット・週何回? / 走る人の筋トレ計画の立て方
- 跳躍を伴う種目へ進むとき:ランナーのプライオメトリクス
- 走練習との並べ方:筋トレとランニングは同じ日にやっていい?
- 種目の動きを確認する:エクササイズガイド
- 筋力面から走りを支える設計に取り組みたいとき:S&Cコーチングのご案内
参考文献
- Moran, J., Ramirez-Campillo, R., Liew, B., Chaabene, H., Behm, D. G., García-Hermoso, A., Izquierdo, M., & Granacher, U. (2021). “Effects of Bilateral and Unilateral Resistance Training on Horizontally Orientated Movement Performance: A Systematic Review and Meta-analysis.” Sports Medicine, 51(2), 225–242. doi:10.1007/s40279-020-01367-9
- Liao, K. F., Nassis, G. P., Bishop, C., Yang, W., Bian, C., & Li, Y. M. (2022). “Effects of unilateral vs. bilateral resistance training interventions on measures of strength, jump, linear and change of direction speed: a systematic review and meta-analysis.” Biology of Sport, 39(3), 485–497. doi:10.5114/biolsport.2022.107024
- Kassiano, W., Nunes, J. P., Costa, B., Ribeiro, A. S., Loenneke, J. P., & Cyrino, E. S. (2025). “Comparison of Muscle Growth and Dynamic Strength Adaptations Induced by Unilateral and Bilateral Resistance Training: A Systematic Review and Meta-analysis.” Sports Medicine, 55(4), 923–936. doi:10.1007/s40279-024-02169-z
- Speirs, D. E., Bennett, M. A., Finn, C. V., & Turner, A. P. (2016). “Unilateral vs. Bilateral Squat Training for Strength, Sprints, and Agility in Academy Rugby Players.” Journal of Strength and Conditioning Research, 30(2), 386–392. doi:10.1519/JSC.0000000000001096
- Appleby, B. B., Cormack, S. J., & Newton, R. U. (2019). “Specificity and Transfer of Lower-Body Strength: Influence of Bilateral or Unilateral Lower-Body Resistance Training.” Journal of Strength and Conditioning Research, 33(2), 318–326. doi:10.1519/JSC.0000000000002923
- Appleby, B. B., Cormack, S. J., & Newton, R. U. (2020). “Unilateral and Bilateral Lower-Body Resistance Training Does not Transfer Equally to Sprint and Change of Direction Performance.” Journal of Strength and Conditioning Research, 34(1), 54–64. doi:10.1519/JSC.0000000000003035
- Helme, M., Emmonds, S., & Low, C. (2022). “Is the Rear Foot Elevated Split Squat Unilateral? An Investigation Into the Kinetic and Kinematic Demands.” Journal of Strength and Conditioning Research, 36(7), 1781–1787. doi:10.1519/JSC.0000000000003727
- DeForest, B. A., Cantrell, G. S., & Schilling, B. K. (2014). “Muscle Activity in Single- vs. Double-Leg Squats.” International Journal of Exercise Science, 7(4), 302–310. doi:10.70252/mxvz7653
- Song, Q., Ma, M., Liu, H., Wei, X., & Chen, X. (2023). “Effects of step lengths on biomechanical characteristics of lower extremity during split squat movement.” Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, 11, 1277493. doi:10.3389/fbioe.2023.1277493
- Jönhagen, S., Ackermann, P., & Saartok, T. (2009). “Forward lunge: a training study of eccentric exercises of the lower limbs.” Journal of Strength and Conditioning Research, 23(3), 972–978. doi:10.1519/JSC.0b013e3181a00d98
