走る​人と​成長期の​サプリメントの​考え方​——​何が​どこまで​確かめられているか

出典48件・すべて一次情報にリンク

大きな食事の皿と小さなサプリボトルを並べた線画イラスト

走ったあとに何を飲むか。成長期の子どもに何を持たせるか。サプリメントの疑問は、市民ランナーからも保護者からも、多くが「何を飲めばいいですか」という形で挙がります。

先に書いておくと、この記事は特定の製品や成分をすすめるものではありません。この記事で書けるのは、どこまで確かめられていて、どこからが未検証かという線引きだけです。ここで示すのは、商品の比較表ではなく、棚の前で自分の頭で判断するための材料です。

商品名・ブランド名は出さず、購入先の案内もしていません。個別の各論は中学生のクレアチンランナーにプロテインは必要かで扱っています。

まず順番の​話から​——​「食事が​先」は​精神論では​ありません

公的機関の枠組みは、「どれが効くか」ではなく「どの順番で見るか」でできています。下の表が、この記事全体の骨組みです。

見る順番何を確認するか根拠として置ける言葉
1食事・トレーニング・睡眠が整っているかサプリメントの利益は、それらを管理した条件のもとで検討され、示されている(Yasuda et al., 2023)
2運動量に対してエネルギーが足りているか運動によるエネルギー消費に対して摂取が足りない状態は、健康と競技力の両方に関わる(Mountjoy et al., 2023)
3不足が疑われるなら、まず医療機関へ欠乏しているかどうかは、血液検査でしか分かりません
4そのうえで、製品を検討するかどうか使用の判断より前に、完全な栄養評価を行うべきである(Maughan et al., 2018)

表:サプリメントを検討する前に確認する順番。1・2・4は公的機関の文書に書かれている順序、3は研究が検証した手順ではなく、医療との線引きとして置いているものです。(出典: Yasuda et al., 2023 / Mountjoy et al., 2023 / Maughan et al., 2018)

国際オリンピック委員会の合意声明(Maughan et al., 2018)は、栄養が競技成績に果たす貢献を「小さいが価値がありうる」とし、サプリメントはその栄養プログラムに「わずかな貢献」をしうると書いています。そのうえで、使用の判断より前に完全な栄養評価を行うべきだとしています。順序が先に決まっていて、製品の話はその後に来る構造です。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)も、「“Food First”(食事第一)で栄養素を摂取しましょう」と書いています。

では、なぜ食事が先なのか。理由を分解して書いている日本語の文書があります。国内の公的なスポーツ科学拠点の研究者がまとめた、機関としての立場を示す文書(Yasuda et al., 2023)です。ここでは4つが挙げられています。複数の栄養素や成分を同時に摂れること。心理的な充足によい影響があること。噛むことを通じて健康に寄与すること。そして、アンチ・ドーピング規則違反のリスクが小さいことです。

同じ文書には、それより重い一文があります。サプリメントを使う前に、まず食事・トレーニング・睡眠といった基本的な要素を確認するよう勧める。なぜなら、サプリメントの利益は、それらを管理した条件のもとで検討され、示されているからだ、という趣旨の記述です。食事も練習も睡眠もばらついている状態は、そもそも研究が検証した条件の外側にあります。

これはエリート選手を対象にした立場の表明であり、比較試験ではありません。ただし「研究は基本要素を管理した条件で行われている」という指摘そのものは方法の話なので、対象が誰であっても当てはまります。

競技団体も同じ順番を書いています。日本陸上競技連盟の医事委員会のQ&Aは、「スポーツ栄養の基本は食事であり、安易なサプリメントの使用は推奨されません」としています。やむを得ず使う場合も、必要性・有効性・安全性を確認するよう求めています。ジュニア期については「高校生までのジュニアの時期は、3食きちんと食事をする習慣をつけることが重要です」と書かれています。

思春期の選手を対象としたポジションステートメント(Desbrow et al., 2014)も、栄養素の必要量は補助食品ではなく中心となる食品で満たされるべきだという立場を示しています。理由として挙げられているのは、発達段階の選手に補助食品を勧めると、練習や食事といった他の工夫に比べて、補助食品が競技力を左右する度合いを過大に見せてしまう点です。

この順番は、製品の選び方にも影響します。どの種類を選ぶかを比べる前に、まず食事の側を見る。この記事で種別ごとの比較を扱わないのは、そのためです。

ここからは研究の結論ではなく、指導の現場で置いている枠です。練習が終わってから寝るまでの時間には、食事の空白が生まれやすくなります。たとえば塾や移動で夕食が21時を過ぎる、朝は食べる時間が取れない。そうした週にサプリメントを1つ足しても、埋まるのは空白のごく一部です。成分の名前を覚えるより先に、その空白を数えます(ランニングの疲労回復走る人の睡眠)。

日本の​制度では、​サプリメントは​「食品」に​分類されます

「サプリメント」という言葉が何を指すのかは、実はあいまいなままです。厚生労働省は、いわゆる「健康食品」を次のように説明しています。「法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているものです」。

機能性表示食品についても、誤解が生まれやすいところです。消費者庁はこれを、事業者が科学的根拠などを販売前に届け出れば機能性を表示できる制度だと説明しています。そのうえで、「特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります」と書いています。届け出は必要ですが、国が中身を審査した印ではない、という整理になります。

JADAの説明では、サプリメントは医薬品とは異なり、法律上は「食品」に分類されます。あわせて、食品には商品の成分表にすべての原材料を記載する義務がないとして、ラベルに表示されていない物質が含まれている可能性を指摘しています。表示されていない物質が原因でルール違反となった場合でも、責任はアスリート自身が負うと明記されています。

もう一つ、読む前に整理しておくと役に立つ区別があります。IOCの合意声明は、サプリメントと呼ばれる製品が狙っている対象を4つに分けています。微量栄養素の不足への対応。エネルギーや多量栄養素を摂りやすい形にしたもの。パフォーマンスへの直接的な利益。強度の高い練習を支えるといった間接的な利益です。

自分の関心がどれなのかを先に決めると、読む先が変わります。不足への対応はこの記事の「欠乏があるときだけ」の節と医療機関へ、摂りやすい形の話はランナーにプロテインは必要かへ、パフォーマンスへの利益は次の節へつながります。

相対的に​証拠が​ある​もの、​弱い​もの​——そして​「自分で​試す」の​限界

IOCの合意声明は、パフォーマンス向上をうたう製品群のうち「カフェイン、クレアチン、特定の緩衝剤、硝酸塩を含む少数のものだけが、利益のエビデンスが良好である」と書いています。「含む」は例示なので、この4つだけという意味ではありません。推奨でも保証でもなく、証拠の状況についての評価です。陸上競技を対象にした総説(Peeling et al., 2019)が挙げているのは、カフェイン、クレアチン、硝酸塩、β-アラニン、重炭酸(重曹)の5つです。

走る​場面に​絞ると、​話が​変わる

カフェインは、持久系でもっとも研究が多い成分です。11のレビュー(合計21のメタアナリシス)をまとめたアンブレラレビュー(Grgic et al., 2020)は、幅広い項目で運動能力を高める方向の結果を報告しています。ただし著者ら自身が2つの留保を置いています。95%予測区間まで考慮すると効果の方向が定まらない解析があること。そして、含まれる研究の多くが若い男性を対象にしていることです。

ランニングに限ると、話がもう少し具体的になります(Wang et al., 2022。21のランダム化比較試験・254名)。疲労困憊まで走り続けられた時間の効果量は0.392(95%信頼区間 0.214〜0.571)でした。効果量は差の大きさをばらつきでそろえた数値で、0.2前後が小さい、0.5前後が中くらいの目安です。一方、レースで気になるタイムトライアルの所要時間では−0.101(同 −0.190〜−0.012)にとどまりました。なお254名のうち女性は19名で、性差についてはこの記事では何も言えません。

個人差の幅も数字で見えます。46研究を統合した報告(Southward et al., 2018)では、平均パワー出力の変化は+3.03 ± 3.07%で、標準偏差が平均とほぼ同じ大きさでした。著者らは、2つの研究でタイムが遅くなり、5つの研究で平均パワーが下がったとも書いています。

硝酸塩(ビートルートジュース)はどうか。20の系統的レビュー(180の一次研究、2,672名)をまとめたアンブレラレビュー(Poon et al., 2025)は、11の領域のうち5つで有意な改善を報告しました。残りの領域では有意な改善はありません。著者らは、採用したレビューの多くが方法論の質の評価で低い〜きわめて低いに分類されたとも書いています。国内の解説(近藤, 2020)によれば、改善が報告されているのは、高強度の運動や間欠的な運動、チームスポーツで、およそ12〜40分の運動です。12分未満は不明で、40分を超える運動で有益な効果を認めた研究は限られるとされています。エリートの1500mランナーでは改善が認められなかったという報告も、この解説の引用文献に含まれています。マラソンやハーフマラソンは、研究が限られている側にあります。

重曹(炭酸水素ナトリウム)は、この節でもっとも分かりやすい例です。国際スポーツ栄養学会のポジションスタンド(Grgic et al., 2021)は、ランニングを含む高強度運動を改善するという見解を示しています。一方、持続的なランニングだけに絞り、二重盲検のランダム化比較試験に限定した2025年のメタアナリシス(Miller et al., 2025)の結果が、下の表です。

集計の範囲効果量(SMD)95%信頼区間p値
持続的なランニング全体(男女混合・11研究126名)0.18−0.01〜0.360.06
男性のみの8試験(下位解析)0.400.18〜0.63< 0.001

表:単回の経口摂取と、1〜30分の持続的なランニング課題に限定した二重盲検ランダム化比較試験のメタアナリシスの報告値。脱落と出版バイアスを調整した後の値で、参加者126名のうち84%が男性。男性のみの値は下位解析です。95%信頼区間が0をまたぐ場合、差があるとは言えません。同じ研究では、消化器症状の発生率が重曹29.5%、プラセボ2.6%と報告されています。(出典: Miller et al., 2025)

持続的なランニングに絞った重曹のメタアナリシスで、ランニング全体の標準化平均差は0.18・95%信頼区間は−0.01から0.36と0をまたぎ、男性のみの8試験の下位解析は0.40・0.18から0.63であることを示すフォレストプロット
持続的なランニングに絞ると、95%信頼区間が0をまたぎます(上段)。下段は男性のみの下位解析で、参加者126名の84%が男性という構成の偏りを反映している可能性があります(出典: Miller et al., 2025)。

著者らは、男女混合の集団では、持続的なランニングのパフォーマンスへの利益はごくわずかだと結論しています。同じ物質でも、ランニングだけに絞って集計すると、差があるとは言えなくなる例が報告されています。男性のみの8試験では有意でしたが、これは下位解析であり、参加者の84%が男性という構成の偏りを反映している可能性があります。有意差のほうは示せず、消化器の症状のほうは残りました。種目を絞ったときに何が起きるかを、この1本がよく表しています。

証拠が​弱い側は、​「何を​測ったか」が​ずれています

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は、筋肉痛との関係でよく話題になります。18のランダム化比較試験を統合したメタアナリシス(Salem et al., 2024)では、遅発性の筋肉痛の主観的な評価が24時間から96時間の各時点で下がりました(効果量−0.82から−1.82)。抄録に信頼区間の記載がないため、値のみを引きます。一方、筋損傷の指標である乳酸脱水素酵素は、どの時点でも有意差がありませんでした。

では走りはどうなるか。筋のパフォーマンスに有意差はなかったという統合(Doma et al., 2021)があり、持久系に限定した2026年の系統的レビュー(Del Guerra et al., 2026。15研究)は、持久パフォーマンスにも筋の回復にも意味のある改善をもたらさないと結論しています。生化学的な指標は動くが、走りが変わったという報告は一貫していない。これがこの節に共通する構図です。グルタミンについても、47の研究を統合した系統的レビュー(Ramezani Ahmadi et al., 2019)が、免疫・有酸素パフォーマンス・体組成のいずれにも効果がないと結論しています。

抗酸化サプリメントは、逆方向の誤解が広まっている例です。「飲むとトレーニングの適応を妨げる」という話の原典(Paulsen et al., 2014)は、54名を対象とした二重盲検のランダム化対照試験でした。ビタミンC 1000mgとビタミンE 235mgを11週間与えたところ、最大酸素摂取量はどちらの群も8 ± 5%増え、20mシャトルテストにも群間差はありませんでした。差が出たのは、ミトコンドリアに関わる細胞レベルの指標だけです(COX4はプラセボ群+59 ± 97%に対し、ビタミンを与えた群は−13 ± 54%、P ≤ 0.03)。標準偏差が平均を超える、個人差の大きい指標です。

論文の表題にある言葉も「細胞レベルの適応」で、ここから「速く走れなくなる」を導くことはできません。加えて対象は1日1000mgという高用量のサプリメントであり、食事から摂るビタミンCの話ではありません。

欠乏が​ある​ときだけ意味を​持つもの

鉄は、条件つきで数字が出ている数少ない例です。13研究449名のメタアナリシス(Šmid et al., 2024)では、血清フェリチンは上昇した一方、ヘモグロビンやトランスフェリン飽和度は変化しませんでした。そして著者らは、有益な効果が観察されたのは開始時の血清フェリチンが12 µg/L以下だった対象に限られると明記しています。鉄欠乏だが貧血ではない持久系選手に絞れば、最大酸素摂取量の効果量は0.610(95%信頼区間 0.399〜0.821)です(Burden et al., 2015)。いずれも限定を外すと別の話になります。

ビタミンDは、同じ「欠乏を埋める」でも証拠の状況が違います。3つのメタアナリシスは、いずれもパフォーマンスの有意な改善を示していません。対象は13試験532名(Farrokhyar et al., 2017)、11試験436名(Sist et al., 2023)、8試験284名(Zhang et al., 2019)です。

大事なのは、自分が欠乏しているかどうかは血液検査でしか分からないということです。鉄は摂りすぎのリスクがある栄養素でもあります。この記事は、フェリチンの値がいくつなら足すべきかを判断するものではありません。なお、大学生アスリート等122研究17,519名の統合(Thompson et al., 2025)では、53.9%が低フェリチン血症でした。著者らは、定期的なスクリーニングを可能にするガイドラインの改訂が必要だと述べています(日本のデータではありません)。気になる場合は医療機関にご相談ください。

自分で​飲んで​確かめる、と​いう​方​法の​限界

32研究1,513名を統合した系統的レビュー(Hurst et al., 2020)は、プラセボ効果の大きさを0.36と報告しています。栄養系のものに限ると0.35、効かないと思うことで下がるノセボ効果も0.37でした(抄録に信頼区間の記載がないため、値のみを引きます)。

この0.35は、前の節で並べた実成分の効果量と同じ桁にあります。対象も測ったものも違うので、並べて優劣を論じることはできません。ただ、1本飲んで速く感じたという体感からは、成分の効果とプラセボを切り分けられないということです。念のため書くと、この研究はプラセボの大きさを測ったものであって、実成分の効果を否定したものではありません。IOCの合意声明も、使うなら本番前にトレーニングや模擬競技で十分に試すよう求めています。反応は遺伝や腸内細菌のバランス、ふだんの食事といった要因により、個人間で大きく異なりうるとも書かれています。

成長期——上乗せの​前に、​時間が​味方を​しています

米国小児科学会の方針声明(LaBotz & Griesemer, 2016)は、成長期についてもっとも前向きな事実を書いています。思春期の自然な発達そのものが、大きなパフォーマンス向上をもたらす。だから多くの若年アスリートにとって、適切な栄養とトレーニング、そして思春期の発達に上乗せされる利益はごくわずかである——そう書かれています。禁止でも脅しでもなく、時間が最大の味方だという書き方になっています。

8〜20歳を対象に21の研究を集めたレビュー(De Zan et al., 2025)は、現在のエビデンスは、この集団で日常的に使うことを支持するには不十分だと結論しています。これは系統的レビューではなく、著者が選んだ研究を整理したナラティブレビューです。あわせて、利用できる証拠の多くが成人集団に由来し、小児に固有のデータは限られていると書いています。

一方で、立場が分かれている部分もあります。国際スポーツ栄養学会のポジションスタンド(Kreider et al., 2017)は、クレアチンについて別の見解を示しています。乳児から高齢者までの健康な人と多くの患者集団で、安全かつ忍容性が良好だという評価です。ただしこれは、臨床の患者集団を含めた安全性と忍容性についての記述であって、成長期の競技者に使ってよいという意味ではありません。この評価は学会としての見解であり、著者らは製造・販売企業との関係を論文中で公開しています。どちらか一方だけを引くのは公平ではないので、両方を並べます。

そのうえで、両者が食い違っていない点があります。同じ学会側の総説(Jagim & Kerksick, 2021。ナラティブレビュー)は、安全性を検討する目的で設計された研究は、これまで成人集団でのみ行われてきたと書いています。必要性に否定的な側と、安全性に肯定的な側が、「成長期を直接対象にした研究が少ない」という点では一致しているわけです。クレアチンの各論は中学生のクレアチンで扱っています。

数少ない直接データも見ておきます。10週間の競技シーズン中に行われたランダム化比較試験(Zimmerman et al., 2026)は、平均年齢15.6歳の思春期の選手22名(女性59%)が対象でした。たんぱく質の補助食品を1日2回加えた群と、同じカロリーのプラセボ群を比べています。最大酸素摂取量は両群とも改善し、介入群のほうが増加は大きい結果でした(p = 0.04)。

ただし、スプリントのタイム・筋力・体組成には群間差がなく、筋持久力はむしろ介入群のほうが低下しました(p = 0.01)。著者らは、たんぱく質の補助食品は、スプリント・筋骨格系の体力・体組成のいずれについても対照と比べて改善させなかったと結論しています。22名の小規模な試験なので、探索的な結果として読む範囲です。

たんぱく質の必要量そのものは、成長期でトレーニングをしている子どもでは、座位中心の同年代より高いと推定されています(Boisseau et al., 2007)。ただしこれは食事の総量の話であって、補助食品が必要という意味ではありません。この記事では、未成年に向けた体重あたりの摂取量は書きません。

公的な目安の数値がある数少ない領域が、カフェインです。エナジードリンクや練習前に飲むタイプの製品を考えるときの材料になります。

対象公的機関が示している目安出典
4〜6歳1日あたり最大45mgカナダ保健省(2010)/厚生労働省Q&A
7〜9歳1日あたり最大62.5mg同上
10〜12歳1日あたり最大85mg同上
子ども・青年(習慣的な摂取)1日あたり体重1kgあたり3mgEFSA(2015)
18歳以下1回の摂取で体重1kgあたり3mgを超えない量豪州・ニュージーランド(農林水産省ページ経由)
成人1日あたり最大400mgカナダ保健省(2010)

表:カフェインについて公的機関が示している目安。「1日あたり」と「1回の摂取で」は別の単位です。同じ体重1kgあたり3mgでも、かかっている条件が違います。日本では、個人差が大きいことなどから、一日当たりの摂取許容量が国際的にも設定されていません(厚生労働省)。この表は許可を示すものではなく、公的機関が示している目安として並べたものです。いずれも上限側の目安であり、摂ることを勧める量ではありません。(出典: 厚生労働省Q&A / 農林水産省 / EFSA 2015)

なお、体重が意図せず減る、疲労感が長く抜けない、月経の状態が変わった——こうした変化を伴う場合は、栄養素を足す工夫の対象ではありません。医療機関にご相談ください。

成長期について、最終的な判断は保護者の方に残ります。そのうえで、判断を1人で抱えないための相談先があります。栄養の設計は公認スポーツ栄養士、体調や既往に関わることは医師です。学校の部活動であれば、顧問の先生と情報を共有しておくと判断がずれにくくなります。

思春期は、食べ物との一生の付き合い方が形づくられる時期でもあります。仲間の影響が、食べることを含むあらゆる行動で強まる時期でもあると整理されています(Desbrow, 2021)。相談の入り口がSNSや部の先輩になることもあります。国内のジュニア選手とシニア選手を比べた調査(松本ら, 2016)では、ジュニア選手のアンチ・ドーピング意識が低かったと報告されています。だからこそ、次の節の話が関わってきます。

中身が​表示どおりとは​限らない​——22年で​変わっていない​数字

効果の話に納得したかどうかとは関係なく残る論点があります。製品の中身です。

調査調べたもの表示外の禁止物質が検出された割合
Geyer et al.200413か国215供給元から集めた634製品14.8%(94製品)
Duiven et al.(※)2021あらかじめ高リスクと判断した66製品38%(25製品)
Al-Saad et al.202644の研究を集めた系統的レビュー約9〜15%

表:サプリメントへの意図しない混入について報告されている割合。※ Duiven らの調査は、あらかじめリスクが高いと判断された製品を選んで購入したものです。市販品全体の割合ではありません。Geyer らの調査では、プロホルモンを販売する企業の製品が21.1%、販売しない企業の製品が9.6%でした。Al-Saad らは、混入がプレワークアウト・減量系・増量系の製品に多く見つかったと報告しています。(出典: Geyer et al., 2004 / Duiven et al., 2021 / Al-Saad et al., 2026)

2000年から2001年にかけて、13か国215の供給元から634製品を購入して分析した研究があります(Geyer et al., 2004)。そのうち94製品(14.8%)に、ラベル表示のないアナボリックステロイドが含まれていました。22年前の調査です。ただ、古い数字だから今は違う、とは言えません。2026年の系統的レビュー(Al-Saad et al., 2026)が44研究から報告した割合は、約9〜15%でした。意図しない混入の割合は、2004年の14.8%と2026年の約9〜15%で、22年経っても同じ桁のままです。

同じ2004年の研究には、もう一つ重い数字があります。ナンドロロン系のプロホルモンの総摂取が1 µgを超えたときに、ドーピング検査で陽性となったという記述です。1 µgは目に見える量ではありません。「少しだけなら」という発想が成立しないことを、量の桁が示しています。

前述のとおり、表示されていない物質が原因でルール違反となった場合でも、責任はアスリート自身が負うとされています。では第三者の検査を受けた製品なら安心か。JADAのガイドラインは、それが「リスクの低減のための指標」を提供するものであって、「完全なる安全を保証するものではありません」と明記しています。そもそも、そうした制度が広く知られているわけでもありません。オランダの選手を対象にした調査(Wardenaar et al., 2021)では、第三者検査の制度を知っていた割合は五輪選手で71.1%、非五輪選手で24.5%でした。

使う人の行動の側にも、報告があります。26の横断研究(ある一時点の状態を調べた調査)13,296名をまとめたメタアナリシス(Hurst et al., 2023)の報告です。ドーピングの経験はサプリメント使用者で14.7%、非使用者で6.7%、比にして2.74倍(95%信頼区間 2.10〜3.57)でした。ただし、すべて横断研究で自己申告によるものであり、因果の向きは決められません。著者ら自身が、この点を限界として明記しています。

そして同じ抄録には、サプリメントを使いながらドーピングをしない選手が大半である、という一文も置かれています。青年を2時点で追った研究(Kristensen et al., 2024。ノルウェーのエリート青年選手217名)もありますが、そこで測られているのは行為ではなく態度です。

これらは、サプリメントを使う人を疑うための数字ではありません。製品の中身を家庭だけで確認しきることはできない、という事実を示す数字です。競技会に出る可能性がある方は、JADAのサプリメントに関する解説と、所属団体・競技団体の情報をご確認ください。

よく​ある​質問

Q. 結局、何を飲めばいいのでしょうか? A. この記事で決めることはできません。書けるのは順番までです。食事・トレーニング・睡眠が整っているか、運動量に対してエネルギーが足りているか、不足が疑われるなら医療機関へ。製品の検討はその後になります。個別の設計が必要な場合は、公認スポーツ栄養士など栄養の専門職が相談先になります。

Q.「エビデンスがあるサプリメントは4つだけ」と読んだことがあります。 A. IOCの合意声明の書き方は「カフェイン、クレアチン、特定の緩衝剤、硝酸塩を含む少数」で、「含む」は例示です。4つに限るという意味ではありません。また、推奨や保証ではなく、証拠の状況についての評価です。そのうえで、ランニングに絞ると結果が変わる例が報告されています(Miller et al., 2025/Wang et al., 2022)。

Q. 中学生の子どもがサプリメントを飲みたいと言っています。 A. この記事は可否を決めるものではありません。米国小児科学会は、思春期の自然な発達そのものが大きな向上をもたらすため、上乗せされる利益はごくわずかだとしています(LaBotz & Griesemer, 2016)。日本陸連のQ&Aは、高校生までの時期は3食の習慣を重視しています。判断を1人で抱えないための相談先として、公認スポーツ栄養士、医師、部の顧問の先生があります。

Q. 第三者の検査を受けたと書かれている製品なら安全ですか? A. JADAは、そうした枠組みが「リスクの低減のための指標」を提供するものであって、「完全なる安全を保証するものではありません」と明記しています。したがって、安全な(汚染のない)サプリメントという言い方はこの記事ではしません。検査の有無にかかわらず、責任はアスリート自身が負うとされている点も変わりません。

まとめと、​今日できる​最初の​一歩

先に限界を書いておきます。ここに並べたのは、多くが成人を対象にした研究の報告と、公的機関が公開している文書です。女性を対象にしたデータは全体に不足しており、日本人を対象にした一次データもほとんどありません。読んでいる方が何を飲むべきかを決めるものではありません。そのうえで、報告されている範囲は次のとおりです。

  • 公的な枠組みは「どれを選ぶか」ではなく「順序」でできています。使用の判断より前に完全な栄養評価を行うべきだとされ(Maughan et al., 2018)、食事第一が求められています(JADA)。理由は方法にあり、食事も練習も睡眠もばらついている状態は、そもそも研究が検証した条件の外側にあります(Yasuda et al., 2023)。
  • 日本の制度上、いわゆる「健康食品」に法律上の定義はなく(厚生労働省)、機能性表示食品も国が審査するものではありません(消費者庁)。サプリメントは法律上「食品」に分類され、すべての原材料を記載する義務はないとされています(JADA)。
  • 相対的に証拠が多いとされる成分でも、走る場面に絞ると結果が変わります。カフェインをランニングに絞ると、タイムトライアルの効果量は−0.101でした(Wang et al., 2022)。持続的なランニングに限った重曹のメタアナリシスでは0.18(95%信頼区間 −0.01〜0.36、p = 0.06)でした。同じ研究で、消化器症状は29.5%対2.6%と報告されています(Miller et al., 2025)。硝酸塩は40分を超える運動での報告が限られます(近藤, 2020)。
  • 証拠が弱い側は、測ったものがずれています。BCAAは筋肉痛の評価が下がった報告がある一方、持久パフォーマンスと回復に意味のある改善はないとされています(Del Guerra et al., 2026)。抗酸化ビタミンで差が出たのは細胞レベルの指標だけでした(Paulsen et al., 2014)。鉄は、開始時のフェリチンが12 µg/L以下の対象でのみ有益な効果が観察されました(Šmid et al., 2024)。ビタミンDは、3つのメタアナリシスでパフォーマンスの有意な改善が示されていません。いずれも、欠乏しているかどうかは血液検査でしか分からず、判断は医療機関の領域です。
  • 成長期については、思春期の発達そのものが大きな向上をもたらすとされています(LaBotz & Griesemer, 2016)。日常的に使うことを支持する証拠は不十分とされ(De Zan et al., 2025)、安全性の評価は分かれます。ただし、安全性を検討する目的で設計された研究が成人集団でのみ行われてきた点では一致しています(Jagim & Kerksick, 2021)。
  • 意図しない混入は22年で改善していません(14.8%から約9〜15%)。1 µgを超える摂取で陽性となった記述があり(Geyer et al., 2004)、責任はアスリート自身が負うとされています(JADA)。第三者の検査は「リスクの低減のための指標」であって、安全の保証ではありません。

まずは今週の食事を3日だけ書き出し、たんぱく質源が入っていない食事がどこにあるかを見てみます。お子さんのことで迷っている場合は、今週のうち1日だけ、練習が終わってから寝るまでの時間割を書き出してみてください。製品を検討するのは、その空白が見えてからでも遅くありません。

関連リンク


参考文献

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本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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