フォームローラーの​選び方​——硬さ・​表面・振動に​ついて​研究が​報告している​ことと、​用途から​決める​順番

出典9件・すべて一次情報にリンク

フォームローラーの線画イラスト

せっかく買うなら、自分に合う1本を選びたい。ところが売り場に立つと、硬さも表面の形も振動の有無も違うものが並んでいて、何を基準にすればいいのか迷います。報告されている変化は関節可動域と痛みの感じ方が中心で、振動タイプが要るかどうかは、研究の側では決着していません。この記事では、価格差のどこに払うのかを決めるための材料を並べます。

商品の順位づけはせず、商品名・ブランド名も出しません。転がし方や当てる部位といった使い方はフォームローラーの使い方で扱います。

報告されているのは、​可動域と​痛みの​感じ方

効果量(Hedgesのg、標準化平均差=SMD)は、単位の違う測定値をそろえて比べる指標です。0に近いほど群間の差が小さいことを表します。慣例的な目安としては、0.2前後が小さい、0.5前後が中程度、0.8前後が大きい。効果量0.1が偏差値1ぶんほどに当たると考えると、大きさの見当がつきやすくなります。

21件の研究を統合したメタ分析(Wiewelhove et al., 2019)は、運動前に転がす場合(14件)と運動後(7件)を分けて整理しています。運動前で目立つのは柔軟性のわずかな改善(+4.0%、g = 0.34)で、ジャンプや筋力への効果は無視できる程度でした。運動後では、筋の痛みの感じ方が和らいだ(+6.0%、g = 0.47。+は改善方向を表す原著の表記)ほかは、いずれも小さな変化にとどまりました。著者らは、効果は概して小さく一部は無視できる程度だが、場合によっては意味がありうるとしています。そのうえで、「証拠は、回復の道具としてよりもウォームアップの活動としての広い使用を正当化するように見える」と結論しています。なお、このメタ分析の要旨には各効果量の95%信頼区間が報告されていません。指標ごとの内訳は使い方の記事で扱います。

1回転がしたときの可動域については、26件を統合したメタ分析(Wilke et al., 2020)が、何もしない条件と比べて大きな改善(SMD 0.74、95%信頼区間 0.42〜1.01)を報告しました。一方、ストレッチと比べると優位ではなかった(SMD −0.02、95%信頼区間 −0.73〜0.69)とも報告しています。信頼区間は推定値の幅を示すもので、0をまたぐ場合は「差があるとは言えない」方向の読み方になります。

数週間続けた場合はどうか。11件・290名を統合したメタ分析(Konrad et al., 2022)では、対照群と比べて中程度の可動域の増加が報告されました(ES = 0.823、95%信頼区間 0.325〜1.322)。ただし当てた筋によって結果が違い、ハムストリングスと大腿四頭筋では可動域が増えた一方、下腿三頭筋に当てたときの足関節背屈では改善が見られなかったとされています。

この3件は対象も設計も指標も異なり、横に並べて比べることはできません。共通して読めるのは、主な報告対象が可動域と痛みの感じ方であり、パフォーマンスへの効果は概して小さいと評価されていることです。なお、フォームローラーで体脂肪が減る、いわゆるセルライトが改善するといった主張を検証した研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。

振動タイプは​必要か​——表面・振動・硬さで​比べた​研究

表面の形と振動の有無を比べた研究はありますが、いずれも直後の測定を扱った少人数の試験で、結果は一方向に決着していません。

もう一つ用語を。圧痛閾値(PPT)は、押されて「痛い」と感じ始める圧の大きさで、単位はkPa(キロパスカル)です。値が大きいほど痛みを感じにくい状態を表します。

表面の形。36名を3群に無作為に割り付け、硬さ(密度)は同じで表面の形だけが違う3種類を2分間転がした試験があります(Cheatham & Stull, 2019)。平らな面のものは、膝の他動的な可動域+3°(p = 0.015)・大腿四頭筋の圧痛閾値+14 kPa(p = 0.562)。複数の高さの凹凸があるものは+5°・+179 kPa、格子状の凹凸があるものは+6°・+182 kPa(いずれもp < 0.001)と報告されています。これは1件の試験で、2分間の直後の測定です。長く使い続けたときにどうかを測ったものではありません(なお原著は各群を製品名で呼んでいますが、ここでは形状の説明に言い換えています)。

振動の有無。45名を3群に無作為に割り付けた試験(Cheatham, Stull & Kolber, 2019)もあります。2分間の介入で、圧痛閾値の増加は振動ローラー+180 kPa、非振動ローラー+112 kPa、何もしない対照+61 kPa(いずれもP < .001)。群間では振動と非振動の差が有意でした(P = .03)。一方、膝屈曲の可動域は振動+7°、非振動+5°、対照+2°で、振動と非振動の差は有意ではありませんでした(P = .31)。著者らは、振動ローラーは非振動ローラーより痛みへの耐性を高める可能性があるとしたうえで、この技術についての今後の研究の出発点と考えるべきだと述べています。

2分間の介入後の圧痛閾値の増加は、振動ローラー180 kPa、非振動ローラー112 kPa、何もしない対照61 kPa(いずれもP<.001)。振動と非振動の差は有意(P=.03)だが、同じ試験の可動域では両者の差は有意でなかった(P=.31)。
45名を3群に割り付けた試験で報告された、大腿四頭筋の圧痛閾値の増加(出典: Cheatham, Stull & Kolber, 2019)。介入直後の測定であり、長期の効果でも、製品の優劣を示す値でもありません。同じ試験で可動域については、振動と非振動の差は有意ではありませんでした(P = .31)。

メタ分析の水準で見ても、振動の上乗せ分の評価は揃っていません。8件230名を統合したメタ分析(Park et al., 2021)は、可動域の改善で振動ありが振動なしを上回ったと報告しています(SMD 0.53、95%信頼区間 0.29〜0.77)。ただし著者ら自身が、含まれた8件の方法論的な質を「fair(可)」と評価しています。一方、前述のWilke et al.(2020)は、振動ありと振動なしを統合した比較では有意差が出なかったと報告しています(SMD 0.66、95%信頼区間 −1.5〜2.8)。この2件は組み入れた研究も解析方法も異なり、どちらが正しいという形で比べることはできません。

硬さ。25名が柔らかい・中程度・硬いの3種類を転がし、そのつど痛みの強さを0〜10の数値評価スケール(NPRS)で申告した研究があります(Cheatham, Stull & Kolber, 2018)。好みの1本を選ぶこの手続きを3セッション行ったところ、目隠しをして見た目の影響を除いた条件でも、選ばれる1本はセッション間で有意な違いがありませんでした(t(24) = .00、p = 1.00)。一方、申告された痛みと圧痛閾値の関係は「fair」にとどまっています(Rho = 0.34〜0.49。いずれも有意ではありません)。これは硬さと効果の関係を検証した試験ではありません。著者らも両者は独立に使うべきだとしています。

太さと長さ。直径や長さの違いを比べた研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。専門家への調査はありますが、これは意見の分布です(次節で触れます)。

用途・体格・​痛みの​感じ方から​決める​順番

ここからは研究の結論ではなく、指導上どう扱っているかです。検証された手順ではありません。個人差があり、体格や競技レベルによって置き方は変わります。

  • 何に使うかを1つ決める。練習前の準備なのか、練習後に張りを扱うのか、可動域そのものを変えたいのか。前節のメタ分析(Wiewelhove et al., 2019)は「回復の道具としてよりウォームアップの活動として」と結論しています。
  • 硬さは「息が止まらない範囲」から選ぶ。体重をかけたときに呼吸が止まる、力が抜けない、翌日に押し跡のような不快感が残る。このあたりは、硬さが合っていないときのサインとして扱います。前節の研究は硬さを決めるための試験ではなく、これは現場の扱いです。体重が軽い方や、圧を痛く感じやすい方は、柔らかい側から試すことを勧めます。
  • 長さは当てたい部位で決める。背中や太もも全体を面で扱うなら長いもの、ふくらはぎや殿部を一点で狙うなら短いものが扱いやすくなります。参考までに、1042名の医療・フィットネス専門職への調査(Cheatham, 2019)では、49%がフルサイズを勧め、48%が中程度の密度が最も効果的だと考えていると回答しています。理学療法専門職685名への別の調査でも、51%が中程度の密度が最も効果があると答えました(Cheatham, Stull & Ambler-Wright, 2018)。これは専門職の意見の分布であって、効果を検証したデータではありません。
  • 表面の凹凸と振動は「決め手」にしない。凹凸のあるものが大きい直後の変化を示した報告はありますが(Cheatham & Stull, 2019)、36名・2分間・直後という条件の1件です。振動についても報告は一致していません(Cheatham, Stull & Kolber, 2019/Park et al., 2021/Wilke et al., 2020)。価格差に見合うかは目的次第です。圧をかけられるのが苦手で力が抜けない場合に、振動付きを検討する余地はあります。ただし、検証された向き不向きではありません。
  • 置き場所と携行性を先に考える。仕様を比べる前に、置き場所を決めます。部屋の隅に立てておける長さかどうか、遠征や合宿があるなら荷物に収まるかどうか。フローリングだと滑る、マットがないと背中が痛いといった環境側の事情もあるので、買う前に「どこで、何の上で使うか」まで決めておくほうが現実的です。

ジュニア世代では、体重が軽いぶん圧が入りにくいため、道具より遊びや動きの量を優先します。硬すぎると感じたときに、痛みを我慢して続けることを支持する報告は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。当てる時間を短くする、体重のかけ方を変える。いずれも買い替える前に試せます。

面が広すぎて狙えないなら、ボールや棒状の道具も選択肢になります。ただし、道具の形で結果が変わる可能性は報告されました。前述のメタ分析(Wiewelhove et al., 2019)は、21件のうち14件がフォームローラー、7件が棒状のローラーマッサージャーを使っていたとしたうえで、運動後の筋力の回復についてはフォームローラーのほうが大きい効果を示す傾向があった(+5.6%、g = 0.27 対 −0.1%、g = −0.01)としています。一方で、「運動前に使う場合の道具間の差は実用上の意味がなさそうだ」とも述べています。これは含まれた研究をまとめた傾向であって、特定の製品の優劣ではありません。

ウォームアップ全体の組み立てはランニング前のウォームアップ、練習後の位置づけは走った後のクールダウンとストレッチで扱っています。道具を1つ足す前に、睡眠や栄養といった土台のほうが動くことも多くあります。そちらはランニングの疲労回復にまとめました。用途を先に決めるという順番は、GPSランニングウォッチの選び方ランニングシューズの選び方でも同じです。

痛みが出ている状態を、道具で解決しようとしない。押すと一点が痛む、腫れがある、走るたびに痛みが強くなる、しびれや感覚の異常がある。こうしたときは、整形外科など医療機関にご相談ください。強い痛みで体重をかけられない、転倒などの外力のあとの痛み、変形や急な腫れ、しびれや力が入らない感じがある場合は、当日中を目安に受診してください。これらは注意したい状態の例であり、当てはまらなければ安全という意味ではありません。治療中の病気がある方、血液を固まりにくくする薬を含め服薬中の方、妊娠中の方、皮膚に傷や炎症がある方は、自己判断で始める前に主治医にご相談ください。痛みそのものの扱いは膝の外側が痛い(腸脛靱帯炎)足底腱膜炎で整理しています。

まとめと、​次の​一歩

ここで挙げた研究は、対象も設計も指標も別々で、横に並べて比べることはできません。そのうえで言えるのは、次のところまでです。

  • 報告されている変化は関節可動域と痛みの感じ方が中心です。21件のメタ分析では、運動前の柔軟性+4.0%(g = 0.34)、運動後の筋の痛みの感じ方が和らぐ(+6.0%、g = 0.47)などが報告されています。著者らは、効果は概して小さく一部は無視できる程度だとしています(Wiewelhove et al., 2019)。体組成を変えることを検証した研究は見当たりませんでした。
  • 1回の可動域改善は、何もしない条件に対しては大きいと報告されています(SMD 0.74[0.42〜1.01])。一方、ストレッチと比べて優位ではなかったとされています(SMD −0.02[−0.73〜0.69]。Wilke et al., 2020)。数週間続けた場合は中程度の増加でした(ES 0.823[0.325〜1.322])。ただし当てる筋によって結果が違い、下腿三頭筋に当てたときの足関節背屈では改善が見られませんでした(Konrad et al., 2022)。別々の研究のため、横に並べて比べることはできません。
  • 硬さをそろえて表面の形だけを比べた試験では、平らな面が可動域+3°・圧痛閾値+14 kPa(p = 0.562)と報告されています。凹凸のあるものは+5〜6°・+179〜182 kPa(p < 0.001)でした(Cheatham & Stull, 2019)。36名・2分間・直後の測定です。振動の試験では、圧痛閾値で振動ありが上回ったと報告されています。一方、可動域では振動と非振動の差は有意ではありませんでした(P = .31。Cheatham, Stull & Kolber, 2019)。メタ分析の水準でも、振動の上乗せ分は報告が一致していません(Park et al., 2021/Wilke et al., 2020)。
  • 直径や長さの違いを比べた研究は見当たりませんでした。専門職への調査で「フルサイズ」49%・「中程度の密度」48%という回答分布は報告されています(Cheatham, 2019)。ただし、これは意見の分布であって効果の検証ではありません。
  • ここでは、用途を1つ決める→息が止まらない硬さから選ぶ→当てたい部位で長さを決める→表面と振動は決め手にしない→置き場所と携行性を確認する、という順番を置いています。これは検証された手順ではなく指導上の扱いです。すでに痛みが出ている場合は、道具を替える前に医療機関にご相談ください。

買う前に、置き場所を1か所決めてしまってください。そこに立てておける長さかどうかで、候補はかなり絞れます。

関連リンク


参考文献

  1. Wiewelhove, T., Döweling, A., Schneider, C., Hottenrott, L., Meyer, T., Kellmann, M., Pfeiffer, M., & Ferrauti, A. (2019). “A meta-analysis of the effects of foam rolling on performance and recovery.” Frontiers in Physiology, 10, 376. doi:10.3389/fphys.2019.00376
  2. Wilke, J., Müller, A. L., Giesche, F., Power, G., Ahmedi, H., & Behm, D. G. (2020). “Acute effects of foam rolling on range of motion in healthy adults: A systematic review with multilevel meta-analysis.” Sports Medicine, 50(2), 387–402. doi:10.1007/s40279-019-01205-7
  3. Konrad, A., Nakamura, M., Tilp, M., Donti, O., & Behm, D. G. (2022). “Foam rolling training effects on range of motion: A systematic review and meta-analysis.” Sports Medicine, 52(10), 2523–2535. doi:10.1007/s40279-022-01699-8
  4. Cheatham, S. W., & Stull, K. R. (2019). “Roller massage: Comparison of three different surface type pattern foam rollers on passive knee range of motion and pain perception.” Journal of Bodywork and Movement Therapies, 23(3), 555–560. doi:10.1016/j.jbmt.2019.05.002
  5. Cheatham, S. W., Stull, K. R., & Kolber, M. J. (2019). “Comparison of a vibration roller and a nonvibration roller intervention on knee range of motion and pressure pain threshold: A randomized controlled trial.” Journal of Sport Rehabilitation, 28(1), 39–45. doi:10.1123/jsr.2017-0164
  6. Park, S. J., Lee, S. I., Jeong, H. J., & Kim, B. G. (2021). “Effect of vibration foam rolling on the range of motion in healthy adults: A systematic review and meta-analysis.” Journal of Exercise Rehabilitation, 17(4), 226–233. doi:10.12965/jer.2142322.161
  7. Cheatham, S. W., Stull, K. R., & Kolber, M. J. (2018). “Roller massage: Is the numeric pain rating scale a reliable measurement and can it direct individuals with no experience to a specific roller density?” The Journal of the Canadian Chiropractic Association, 62(3), 161–169. PMID: 30662071
  8. Cheatham, S. W. (2019). “Roller massage: A descriptive survey of allied health professionals.” Journal of Sport Rehabilitation, 28(6), 640–649. doi:10.1123/jsr.2017-0366
  9. Cheatham, S. W., Stull, K. R., & Ambler-Wright, T. (2018). “Roller massage: Survey of physical therapy professionals and a commentary on clinical standards - Part II.” International Journal of Sports Physical Therapy, 13(5), 920–930. doi:10.26603/ijspt20180920
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