サブ3を​目指す練習の​考え方​——月間走行距離の​前に​確かめる​こと

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時計を見ながら速いフォームで走るランナーの線画イラスト

サブ3を目指すと決めたとき、月間走行距離はどれくらい必要なのかを、まず知りたくなると思います。結論から言うと、その形で答えを示した研究は見当たりません。この記事では、量の数字を探す前に何を確かめるか、その順番を示します。

サブ3.5前後で記録が動かなくなったとき、検索すれば週間メニュー表がいくつも出てきます。ただし、当てはめてもうまくいくとは限りません。研究が報告しているのは「速い集団にどんな特徴があったか」という関連であって、「この練習をすればこのタイムになる」という因果ではないためです。

サブ3と​いう​水準を、​まず算術で​確認する

サブ3とは、フルマラソン(42.195km)を3時間未満で走ることです。3時間は10,800秒ですから、42.195kmで割ると1kmあたり約255.95秒、つまり4分15秒/km(秒未満は切り捨て)が平均ペースの目安になります。研究の結論ではなく、割り算の結果です。練習で走るべきペースの指定でもありません。400mトラックなら1周1分42秒、それを105周ぶん続ける計算になります。

サブ4の平均ペースは5分41秒/kmでしたから、表示上の差は1kmあたり1分26秒。ただし、この差が上積みとして直線的に並ぶわけではありません。

97名の市民マラソンランナーを完走タイム帯ごとに調べた横断研究(Gordon et al., 2017)では、同じ市民ランナーの中でも最大酸素摂取量や乳酸性作業閾値などに大きな差があったと報告されています。練習側で群を分けた変数は、練習頻度と、練習時の絶対的な走速度でした。ある一時点の測定であり、練習を変えたら何が起きるかを追跡したものではありません。

1回の練習で走った距離は、完走タイム2.5〜3時間の群が16.1km(標準偏差4.2)、3.5〜4時間の群が15.5km(標準偏差5.2)、4.5時間超の群が10.3km(標準偏差2.6)。最も速い群と3.5〜4時間の群の報告値の差は0.6kmで、標準偏差の幅より小さい。97名を一時点で測った横断研究であり、練習量の推奨ではない。
完走タイム帯別に報告された1回の練習あたりの距離(出典: Gordon et al., 2017)。横ひげは平均±標準偏差で、95%信頼区間ではありません。抄録に数値のある3帯のみを示しています。97名を一時点で測った横断研究であり、練習量の推奨ではありません。

注意が2つ。2.5〜3時間の群は11名(うち女性1名)と小さいこと。1回あたりの距離では、最も速い群と3.5〜4時間群の報告値の差は0.6kmで、標準偏差の幅より小さいことです。完走者に占めるサブ3の割合を報告した査読研究も、今回確認した範囲では見当たりませんでした。

月間走行距離は、​どれくらい​必要か

先に書くと、必要量を示した研究は見当たりません。マラソンの練習要因を統合したメタ回帰(Doherty et al., 2020)は、85件の研究・137コホートを対象に7つの練習変数を扱っています。いずれもフィニッシュタイムと負の統計的関連(R² 0.38〜0.81、p値は0.001未満)が認められたという報告です。負の関連とは、その変数が大きいコホートほどタイムが速い方向だった、という意味になります。

ここは読み分けが要ります。コホート単位で観察された関連であって、個人が量を増やせばその分だけ速くなることを検証した介入研究ではありません。もともと速く走れる人ほど多くの距離を走れる、という逆向きの説明も、同じデータと矛盾しません(メタ回帰の詳細はサブ4を目指す練習の組み立て方で扱っています)。

量を動かす局面は、故障のリスクも動く局面です。ニューヨークシティマラソンに向けて練習する1,049名を16週間追跡した前向き観察研究があります(McGrath et al., 2024)。練習期間中に故障を報告したのは1,037名中398名(38.4%)、全体では1,049名中447名(42.6%)でした。期間ごとに分母が異なり、練習量との因果を検証した研究でもありません。増やし方は走る距離の増やし方ACWRという考え方、支える側はランナーに筋トレは必要かで扱っています。

生活の側の制約もあります。練習頻度は走力より先に、仕事・家庭・通勤時間・睡眠で上限が決まる。たとえば平日は退勤後の1時間半が上限で、着替えと移動を引けば走れるのは40分、という場合もあります。週に使える時間を実数で出さないまま計画だけ大きくすると、先に破綻するのは計画のほうです。

なお、痛みが出ているときに練習の組み替えで解決しようとするのは勧められません。走るたびに強くなる痛み、腫れ、数日休んでも引かない痛みがある場合は、練習計画を調整する前に医療機関にご相談ください。これらは例示であり、当てはまらなくても痛みが続くときは受診をご検討ください。

強度配分は、​型の​名前から​決めない

強度配分とは、練習の全体量を強度のゾーンに分けたときの割合のことです。低強度と高強度が中心で閾値付近が少ない形をポラライズド型、低強度が最も多く、閾値付近・高強度と段階的に減っていく形をピラミッド型と呼びます。停滞すると「ポラライズド型に切り替えるべきか」という問いが出てきますが、近年のメタ分析はそう単純な形になっていません。

解析対象主な報告
Rosenblat et al., 202513研究・348名(レクリエーション150名/競技レベル198名)ポラライズド型とピラミッド型で最大酸素摂取量(SMD = −0.06、p = 0.68)・タイムトライアル(SMD = −0.05、p = 0.34)ともに差なし。競技レベルはポラライズド型、レクリエーションレベルはピラミッド型から利益を得る可能性
Silva Oliveira et al., 202417件の対照試験(ランダム化・非ランダム化を含む)、n = 437最大酸素摂取量はポラライズド型が優位(SMD = 0.24[95%信頼区間 0.01, 0.48]、p = 0.040、n = 284)。ただしその優位は12週未満の介入と、高度に鍛えられた選手という別々のサブグループでの結果。タイムトライアル(SMD = −0.01[同 −0.28, 0.25]、p = 0.92)は差なし

表:強度配分を扱った2つのメタ分析の要約(出典: Rosenblat et al., 2025 / Silva Oliveira et al., 2024)。SMD(標準化平均差)は単位の異なる指標をそろえるための効果量で、0に近いほど群間の差が小さいことを表します。対象者も、比較の相手となる配分も、何を成果として測ったかも異なるため、2つを並べて優劣を決めることはできません。

共通して読み取れるのは、「ポラライズド型が常に優る」という形では報告されていないことと、効果の出方はレベルによって変わるかもしれない、と報告されていることです。

ここからは研究の結論ではなく、指導上の扱いです。頭打ちのときは、強度の高い日を増やす前に、楽な日が楽なままかどうかを見ます。停滞している時期には、ジョグの速度が少しずつ上がり、その疲れでポイント練習は設定に届かず、全体が中間の強度に寄っていく。この形は、上に挙げたどの型にも当てはまりません。

型の名前を決める前に、いまの練習がどのゾーンに何割入っているかを1〜2週間そのまま記録することを勧めます。型を変えたつもりで、変わったのは呼び名だけということが起きるからです。各論はLSD(ロング走)の目的とペースの目安インターバル走のやり方と強度設定ペース走・テンポ走の考え方で整理しています。

もうひとつは、量・強度・頻度を同時に上げてしまうことです。動かすのを一度に1つに絞ると、効いたかどうかを自分で判断しやすくなります。個人差があります。

レース前の​週と、​当日の​入り方

約170万人・64レースのフィニッシャーデータの分析(Smyth, 2018)を見ます。前半5kmを本人のレース全体の平均ペースより10%速く入った群は、平均ペースどおりに入った群より平均フィニッシュタイムが約37分遅い結果でした。10%遅く入った群では約29分遅い、という報告です。比較の基準は事前の目標ペースではありません。観察データでの関連であり、介入研究で確かめられた因果でもありません。

目標どおりに入ったつもりが、その日の自分の平均より速い入り方になっていることもあります。後半にどう崩れるかはマラソン後半の失速はなぜ起こるのかで扱っています。

レース前にどれだけ練習量を落とすかについては、15万8千人を超える市民マラソンランナーの練習記録の分析があります(Smyth & Lawlor, 2021)。段階的に落とす「規律のある」テーパーを3週間取った群は、最小限のテーパーと比べてフィニッシュタイム中央値が5分32.4秒(2.6%)短いという関連でした。3週間までの範囲では、長いほうが良い結果と関連していたとも報告されています。テーパーとはレース前に練習量を落とす期間のことですが、これも観察データであり、週数を指定する根拠にはなりません。

停滞期には、レース直前に不安から練習を足してしまうことがあります。それはこのデータの傾向とは逆を向いています。

よく​ある​質問

Q. サブ3には、月間走行距離はどれくらい必要ですか。

その形で答えを示した研究は見当たりません。メタ回帰(Doherty et al., 2020)が報告しているのは、研究をまとめた集団単位で見た関連です。個人が量を増やせばその分だけ速くなることを検証した介入研究ではありません。量を動かす局面は、故障のリスクも動く局面です。走るたびに強くなる痛み、腫れ、数日休んでも引かない痛みがある場合は、練習計画を調整する前に医療機関にご相談ください。増やし方の考え方は走る距離の増やし方で扱っています。

Q. サブ3のペースは、1kmあたり何分ですか。

平均で約4分15秒/kmです(秒未満は切り捨て)。3時間(10,800秒)を42.195kmで割った割り算の結果で、研究が示した目標値ではありません。400mトラックなら1周1分42秒、それを105周ぶん続ける計算になります。練習で走るべきペースの指定でもありません。

Q. ポラライズド型に変えれば、記録は伸びますか。

「ポラライズド型が常に優る」という形では報告されていません。2つのメタ分析(Rosenblat et al., 2025/Silva Oliveira et al., 2024)は、対象も比較の相手も測った成果も異なります。並べて優劣を決めることはできません。効果の出方はレベルによって変わるかもしれない、と報告されています。ここからは研究の結論ではなく、指導上の扱いです。頭打ちのときは、強度の高い日を増やす前に、楽な日が楽なままかどうかを見ます。個人差があります。

Q. レース前の週は、練習量をどれくらい落とせばいいですか。

レース前に練習量を落とす期間(テーパー)については、15万8千人を超える市民マラソンランナーの練習記録の分析があります(Smyth & Lawlor, 2021)。段階的に落とす「規律のある」テーパーを3週間取った群は、最小限のテーパーと比べてフィニッシュタイム中央値が5分32.4秒(2.6%)短いという関連でした。観察データであり、週数を指定する根拠にはなりません。停滞期には、レース直前に不安から練習を足してしまうことがあります。それはこのデータの傾向とは逆を向いています。

まとめと、​次の​一歩

ここに挙げた研究は、練習を変えたら個人に何が起きるかを追跡したものではないので、断定はできません。そのうえで、材料を並べ直します。

  • サブ3を目指すと決めたとき、月間走行距離はどれくらい必要なのかを、まず知りたくなると思います。結論から言うと、その形で答えを示した研究は見当たりません。
  • 完走タイム帯で分けた横断研究で群を分けた練習変数は、練習頻度と練習時の絶対的な走速度でした(Gordon et al., 2017)。2.5〜3時間の群は11名です。
  • 共通して読み取れるのは、「ポラライズド型が常に優る」という形では報告されていないことと、効果の出方はレベルによって変わるかもしれない、と報告されていることです。
  • 頭打ちのときは、強度の高い日を増やす前に、楽な日が楽なままかどうかを見ます。
  • 前半5kmが本人のレース平均ペースより10%速かった群は、平均どおりの群より平均フィニッシュが約37分遅かったと報告されています(Smyth, 2018。基準は目標ペースではありません)。

これから1〜2週間、練習を変えずにそのまま記録してみてください。ジョグの速度とポイント練習の設定を並べて眺めると、全体が中間の強度に寄っていないかを自分で確かめられます。

関連リンク


参考文献

  1. Gordon, D., Wightman, S., Basevitch, I., Johnstone, J., Espejo-Sanchez, C., Beckford, C., Boal, M., Scruton, A., Ferrandino, M., & Merzbach, V. (2017). “Physiological and training characteristics of recreational marathon runners.” Open Access Journal of Sports Medicine, 8, 231–241. doi:10.2147/OAJSM.S141657
  2. Doherty, C., Keogh, A., Davenport, J., Lawlor, A., Smyth, B., & Caulfield, B. (2020). “An evaluation of the training determinants of marathon performance: A meta-analysis with meta-regression.” Journal of Science and Medicine in Sport, 23(2), 182–188. doi:10.1016/j.jsams.2019.09.013
  3. Rosenblat, M. A., Watt, J. A., Arnold, J. I., Treff, G., Sandbakk, Ø. B., Esteve-Lanao, J., Festa, L., Filipas, L., Galloway, S. D., Muñoz, I., Ramos-Campo, D. J., Schneeweiss, P., Sellés-Pérez, S., Stöggl, T., Talsnes, R. K., Zinner, C., & Seiler, S. (2025). “Which Training Intensity Distribution Intervention will Produce the Greatest Improvements in Maximal Oxygen Uptake and Time-Trial Performance in Endurance Athletes? A Systematic Review and Network Meta-analysis of Individual Participant Data.” Sports Medicine, 55(3), 655–673. doi:10.1007/s40279-024-02149-3
  4. Silva Oliveira, P., Boppre, G., & Fonseca, H. (2024). “Comparison of Polarized Versus Other Types of Endurance Training Intensity Distribution on Athletes’ Endurance Performance: A Systematic Review with Meta-analysis.” Sports Medicine, 54(8), 2071–2095. doi:10.1007/s40279-024-02034-z
  5. Smyth, B. (2018). “Fast starters and slow finishers: A large-scale data analysis of pacing at the beginning and end of the marathon for recreational runners.” Journal of Sports Analytics, 4(3), 229–242. doi:10.3233/JSA-170205
  6. Smyth, B., & Lawlor, A. (2021). “Longer Disciplined Tapers Improve Marathon Performance for Recreational Runners.” Frontiers in Sports and Active Living, 3, 735220. doi:10.3389/fspor.2021.735220
  7. McGrath, T. M., Fontana, M. A., & Toresdahl, B. G. (2024). “Injury patterns and healthcare utilisation by runners of the New York City Marathon.” BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 10(2), e001766. doi:10.1136/bmjsem-2023-001766
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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