サブ4を​目指す練習の​組み立て方​——週3回で​何を​優先し、​何を​捨てるか

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走りながら腕時計を確認するランナーの線画イラスト

サブ4を目指して週3回しか走れないなら、その3回は、強度の高い日を原則1回に絞り、残りは会話ができる程度に抑える枠から組み立てることを勧めます。この記事で週間メニュー表を作らないのは、研究が報告しているのが「速い集団にどんな練習の傾向があったか」という関連であって、「この練習をすればこのタイムになる」という因果ではないためです。

既成のメニュー表を当てはめても、うまくいくとは限りません。この記事では、表の代わりに、限られた練習日の振り分けを自分で決める材料を示します。算術での確認、研究が報告している練習の特徴、強度の置き方、当日の入り方の順に並べます。

サブ4と​いう​課題を、​算術で​確認する

サブ4とは、フルマラソン(42.195km)を4時間未満で走ることです。4時間は14,400秒ですから、42.195kmで割ると1kmあたり約341秒、つまり5分41秒/km(秒未満は切り捨て)が平均ペースの目安になります。研究の結論ではなく、割り算の結果です。時速に直せばおよそ10.5km、この平均を最後まで保てば3時間59分台でフィニッシュする勘定になります。

ただし、レースでこの平均が全区間そのとおりになることはまずありません。給水で減速し、上りで落ちる。だからこそ前半に「貯金」を作りたくなりますが、大規模なデータではその選択が高くつく傾向が報告されています(後述)。

この平均ペースを42.195km続けられるかどうかは、走力・走歴・週に使える時間・故障歴によって大きく変わります。「これをやればサブ4に届く」という形で示した研究は見当たりません。さらに上の水準はサブ3を目指す練習の考え方で扱っています。

研究が​報告しているのは​「関連」であって、​練習の​指示ではない

先に結論を書くと、速いフィニッシュタイムと関連が報告されている練習変数は複数あります。ただしいずれも観察された関連であり、その練習を行えば同じタイムになることを示したものではありません。

マラソンの練習要因を統合したメタ分析・メタ回帰(Doherty et al., 2020)は、85件の研究・137コホート(25%が女性)を対象にしています。共変量は、週あたりの走行距離や練習回数、32km以上のランの本数など7つの練習変数です。いずれもフィニッシュタイムと負の統計的関連(R² 0.38〜0.81、p値は0.001未満)が認められたという報告でした。負の関連とは、その変数が大きいコホートほどタイムが速い方向だった、という意味になります。

ここは読み分けが要ります。コホート単位で観察された関連であって、ある個人が走行距離を増やせばその分だけ速くなることを検証した介入研究ではありません。もともと速く走れる人ほど多くの距離を走れる、という逆向きの説明も、同じデータと矛盾しません。

では、市民ランナーは実際にどれくらい走っているのか。3,835名の回答のうち適格条件を満たした2,864名の自己申告を集計した質問紙調査(Knechtle et al., 2021)では、レース距離別に次の値が報告されています。

週あたりの練習距離の自己申告値は、ハーフマラソンで女性34.8km・男性38.8km、マラソン/ウルトラで女性50.9km・男性60.7km。標準偏差は18.65から28.23と大きい。
レース距離別に自己申告された週あたりの練習距離(出典: Knechtle et al., 2021)。横ひげは平均±標準偏差で、95%信頼区間ではありません。マラソンとウルトラマラソンは1つの群に統合されています。この調査は練習量と完走タイムの関連を示したものではなく、練習量の推奨でもありません。

同じ調査で、マラソン・ウルトラ群の練習頻度は中央値で週4回、週あたりの練習時間は女性5時間33分・男性6時間38分と報告されています。値はすべて自己申告、マラソンとウルトラマラソンは1つの群に統合、回答者の大半は欧州在住。そしてこの調査は練習量とタイムの関連を検討したものではありません。標準偏差も18.65〜28.23と大きく、平均値は「多くの人がそこに集まっている値」ではありません。

週3回で​組むなら、​強度を​どう​置くか

強度配分(training intensity distribution)とは、練習の全体量を強度のゾーンに分けたときの割合のことです。低強度・閾値付近・高強度の3ゾーンで表すことが多く、どのゾーンにどれだけ置いているかで練習の形を見ます。

持久系競技者の強度配分をまとめたレビュー(Stöggl & Sperlich, 2015)は、多くの研究がピラミッド型を報告していると整理しています。ピラミッド型とは、低強度が大きな割合を占め、閾値付近・高強度と割合が下がっていく形です。一部の世界トップ選手が時期によって採るポラライズド型(低強度と高強度が中心で、閾値付近が少ない形)は、しばしば80対20、あるいは低強度75〜80%・閾値5%・高強度15〜20%と表されます。

局面ゾーン1(低強度)ゾーン2(閾値付近)ゾーン3(高強度)
準備期84〜95%2〜11%2〜9%
シーズン平均70〜94%4〜22%2〜11%

表:持久系競技者で報告されている強度配分の範囲(出典: Stöggl & Sperlich, 2015)。対象は各種持久系競技のよく鍛えられた競技者〜エリート競技者で、市民ランナーへの推奨として報告された値ではありません。研究ごとにゾーンの決め方(心拍と血中乳酸のどちらを基準にするか、時間で数えるかセッションで数えるか)が異なるため、数値どうしを同じ確からしさで比べることはできません。

同レビューは、よく鍛えられた個人と市民レベルの個人を対象とした前向きのランダム化研究で、高量低強度中心の配分や閾値中心の配分と比べ、ポラライズド型で持久系の変数に優れた反応が示されたとも記述しています。同時に、レビュー自身が研究上のギャップを課題として挙げており、どの配分が最適かが決着したわけではありません。

ここからは研究の結論ではなく、指導上の扱いです。週3〜4回走る市民ランナーの場合、強度の高い日を多くても週1〜2回(週3回なら原則1回)に絞り、残りは会話ができる程度に抑えるという枠から始めます。上の研究の割合を再現する数値ではなく、すべての練習がなんとなく中強度に寄ってしまうのを避けるための実務的な分類です。走歴・故障歴によって置き方は変わり、個人差があります。各論はインターバル走のやり方と強度設定LSD(ロング走)の目的とペースの目安で扱っています。

週3回で組むなら、ポイント練習は1回に絞ります。2回に増やした週は、2回目が中途半端な速さで終わりやすいからです。たとえば木曜の夜、退勤が遅れて残り時間は40分。それでも設定どおり走ろうとすると、崩れやすくなります。

練習が伸び悩むときに起こりやすいのは、楽な日が楽でなくなっていることです。ジョグのつもりが少し速くなり、その疲れでポイント練習は設定に届かず、結果として全部が中間の強度に寄っていく。速い日と楽な日の差をはっきりつけるほうが、それぞれの練習の意図が保たれやすくなります。

当日の​入り方と、​量を​増やす順番

約170万人・64レースのフィニッシャーデータを分析した研究(Smyth, 2018)を見ます。前半5kmを本人のレース全体の平均ペースより10%速く入った群は、平均ペースどおりに入った群より平均フィニッシュタイムが約37分遅い結果でした。10%遅く入った群では約29分遅い、という報告です。比較の基準は事前の目標ペースではありません。観察データでの関連であり、介入研究で確かめられた因果でもありません。後半失速の要因はマラソン後半の失速はなぜ起こるのかで詳しく扱っています。

序盤は同じ体感のまま、サブ4の平均ペース(5分41秒/km)より数十秒速く刻めてしまうことがあります。この「気持ちよく走れてしまう」感覚が、後半の失速につながる場合があります。

そのうえで、組み立ての手順は3つです。いずれも研究が検証した手順ではなく、材料の並べ方です。

  1. 現在地を1〜2週間そのまま記録する。 目標から逆算する前に、いま週に何km・何回走れているかを出します。研究値と比べるためではなく、増やし方の基準を自分の中に持つためです。
  2. 増やすのは一度に1つ。 距離・強度・頻度を同時に上げない。考え方は走る距離の増やし方ACWRという考え方で整理しています。
  3. レースペースを体感で持ち、支える側も並行して置く。 5分41秒/kmを時計を見ずに刻めるかどうか。ペースと歩数の関係はピッチとストライド、筋力面の位置づけはランナーに筋トレは必要か、順序立てた進め方は走る人の筋トレ入門にまとめています。

なお、痛みが出ているときに練習の組み替えで解決しようとするのは勧められません。走るたびに強くなる痛み、腫れ、数日休んでも引かない痛みがある場合は、練習計画を調整する前に医療機関にご相談ください。これらは例示であり、当てはまらなくても痛みが続くときは受診をご検討ください。

よく​ある​質問

Q. サブ4は、週3回の練習で目指せますか。

週3回という枠で組むことはできます。ただし、研究が報告しているのは「速い集団にどんな練習の傾向があったか」という関連です。週◯回でサブ4に届くという因果を示したものではありません(Doherty et al., 2020)。回数そのものより、その3回で強度の差をつけられているかを見ます。

Q. サブ4のペースは、1kmあたり何分ですか。

平均で約5分41秒/kmです。これは4時間(14,400秒)を42.195kmで割った算術の結果で、研究が示した目標値ではありません。給水や上りで区間ごとに前後するため、全区間をこの平均どおりに刻む前提で組むものではありません。

Q. サブ4を目指すなら、月に何km走ればいいですか。

「月◯km走ればサブ4に届く」という距離の目標値を報告した研究は見当たりません。市民ランナーの自己申告では、マラソン・ウルトラ群の練習頻度は中央値で週4回でしたが(Knechtle et al., 2021)、この調査は練習量とタイムの関連を検討したものではありません。距離は目標値から逆算するより、いまの距離を基準に少しずつ増やす考え方を走る距離の増やし方で扱っています。

Q. 週3回のうち、速い練習は何回入れればいいですか。

強度の高い日を原則1回に絞る枠から始めます。これは研究が示した比率の割り当てではなく、すべての練習が中間の強度に寄るのを避けるための実務的な分類です。走歴や故障歴によって置き方は変わり、個人差があります。

まとめと、​次の​一歩

ここに挙げた研究は、どれも練習を変えたら個人に何が起きるかを追跡したものではないので、断定はできません。そのうえで、材料を並べ直します。

  • サブ4を目指して週3回しか走れないなら、その3回は、強度の高い日を原則1回に絞り、残りは会話ができる程度に抑える枠から組み立てることを勧めます。この記事で週間メニュー表を作らないのは、研究が報告しているのが関連であって因果ではないためです。
  • サブ4の平均ペースは5分41秒/km(14,400秒÷42.195km)。算術の結果であって、到達の方法ではありません。85研究・137コホートのメタ回帰(Doherty et al., 2020)が報告しているのもコホート単位の関連です。個人が量を増やせば速くなることを検証した介入研究ではありません。
  • 市民ランナーの自己申告では、マラソン・ウルトラ群の練習頻度は中央値で週4回でした(Knechtle et al., 2021)。マラソンとウルトラは1群に統合され、タイムとの関連は検討されていません。標準偏差も大きく、平均値を目標に置き換えることはできません。
  • 強度配分は多くの研究でピラミッド型が報告され、ポラライズド型は80対20などと表されます(Stöggl & Sperlich, 2015)。対象はよく鍛えられた競技者〜エリート競技者で、市民ランナーへの推奨値ではなく、どの配分が最適かも決着していません。指導上は、週3回なら強度の高い日を原則1回に絞る枠から始めます(研究値の割り当てではありません)。
  • 前半5kmが本人のレース平均ペースより10%速かった群は、平均どおりに入った群より平均フィニッシュが約37分遅かったと報告されています(Smyth, 2018。観察データでの関連です)。
  • 練習が伸び悩むときに起こりやすいのは、楽な日が楽でなくなっていることです。

これから1〜2週間、練習を変えずに距離と回数を書き出してみてください。週3回のうちどれが速い日でどれが楽な日か、記録の上で分かれているかを確かめるところから始められます。

関連リンク


参考文献

  1. Doherty, C., Keogh, A., Davenport, J., Lawlor, A., Smyth, B., & Caulfield, B. (2020). “An evaluation of the training determinants of marathon performance: A meta-analysis with meta-regression.” Journal of Science and Medicine in Sport, 23(2), 182–188. doi:10.1016/j.jsams.2019.09.013
  2. Knechtle, B., Tanous, D. R., Wirnitzer, G., Leitzmann, C., Rosemann, T., Scheer, V., & Wirnitzer, K. (2021). “Training and racing behavior of recreational runners by race distance—results from the NURMI study (step 1).” Frontiers in Physiology, 12, 620404. doi:10.3389/fphys.2021.620404
  3. Stöggl, T. L., & Sperlich, B. (2015). “The training intensity distribution among well-trained and elite endurance athletes.” Frontiers in Physiology, 6, 295. doi:10.3389/fphys.2015.00295
  4. Smyth, B. (2018). “Fast starters and slow finishers: A large-scale data analysis of pacing at the beginning and end of the marathon for recreational runners.” Journal of Sports Analytics, 4(3), 229–242. doi:10.3233/JSA-170205
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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