インターバル走の​やり方と​強度設定——初めての​本数は、​終える​基準から​決める

出典4件・すべて一次情報にリンク

前傾で力強く走るランナーの線画イラスト

初めてインターバル走をやる日、いちばん迷うのは本数です。5本なのか10本なのか、どこで止めればいいのか。本数を先に決めるより、その日の狙いを一つ決めて、崩れた時点で終える組み方のほうが、あとから読める記録になります。この記事では、初めての本数を決めるための材料を並べます。

体のことの確認点は「始める前に、体のことを確認する」の節にまとめています。走り出す前に読んでください。

なぜ「400m×◯本を◯分◯秒で」という表を作らないのか。適切な設定は走力・走歴・その週の疲労度で変わり、研究が報告しているのも「ある集団で最大酸素摂取量がどれだけ変わったか」までだからです。まず、インターバルという練習が何でできているかを分解します。

インターバル走は、​4つの​変数で​できている

インターバル走とは、高い強度で走る区間と回復の区間を繰り返す練習の総称です。高強度インターバルトレーニング(研究では HIT、HIIT とも表記されます)を整理したレビュー(Buchheit & Laursen, 2013)は、HIT のメニューづくりが最大9つの変数の操作から成ると整理しています(内訳は下の表の右列)。「インターバル走をやる」と言ったとき、実際にはこれだけの決めごとが同時に動いています。

ここからは研究の結論ではなく、指導上の整理です。9つを毎回考えるのは実務的ではないため、ここでは次の4つに束ねて扱います。

4つの変数決めること対応する研究上の変数(Buchheit & Laursen, 2013)
強度速く走る区間をどのくらいの速さで走るか高強度区間の強度、運動様式
時間1本をどのくらい続け、何本繰り返すか高強度区間の時間、反復回数、セット数
回復区間の間をどう休むか(止まる・歩く・ジョグ、どの長さで)回復区間の強度と時間、セット間の回復時間と強度
頻度週に何回、練習全体のどこに置くか(9変数の外側。練習全体の設計)

表:インターバル走を構成する変数の整理。右列は Buchheit & Laursen(2013)が挙げた9変数の対応先で、左2列はそれを実務向けに束ねた指導上の整理です。レビューが4分類を提唱しているわけではありません。「頻度」は9変数に含まれず、練習全体の設計側の話題として加えました。

束ねる理由は、一度に変えるのを1つに絞るため。強度も本数も回復も同時に動かすと、体の反応が何によるものか読めなくなります。本数の話は、この4つのうち「時間」の一部だと考えると扱いやすくなります。

初めての​本数を、​どう​決めるか

ここで挙げるのは研究が検証した手順ではなく、現場で置いている枠です。走歴・故障歴によって置き方は変わり、個人差があります。

  • 準備期間を先に置く。 一つの目安として、週の走行距離と回数が数週間維持できている状態から入ると扱いやすくなります。
  • 頻度は週1回から。 週3〜4回走る方なら、強度の高い日を多くても週1〜2回に絞り、インターバルはその中の1回として(サブ4を目指す練習の組み立て方)。
  • 初回の本数は、余力を残して終われる数から。 最後の1本を同じ質で走れるかを基準にします。設定タイムの目安づくりには、レースの記録から各強度のペースを導く枠組みが広く使われています(書評『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』)。出てきた数字も目安で、その日の体調・気温・路面で走れる速度は変わります。
  • 体調の悪い日はやらない。 睡眠不足・発熱後・強い疲労感がある日は、設定を落とすより、別の日に移すか楽なジョグに置き換えるほうが、あとで判断材料になりやすい。
  • ウォームアップを省かない。 高強度の日ほど、入る前の準備が効いてきます(ランニング前のウォームアップ走った後のクールダウンとストレッチ)。

気をつけたいのは、設定タイムを守ること自体が目的になることです。本数を守るために回復が延びれば、その日の狙いが後から読めなくなります。本数は決めて守るものではなく、その日に確かめるものとして扱います。崩れた時点で終えた記録のほうが、次の設定を決める材料になるからです。たとえば火曜の夕方のトラックで、6本目の入りが3秒遅れた日に、7本目へ行くかどうか。そこでその週の後半が変わります。

高強度を1回足せば、週全体の負荷も動きます。低強度側はLSD(ロング走)の目的とペースの目安、閾値付近はペース走・テンポ走の考え方、負荷の急な増え方は走る距離の増やし方ACWRという考え方で扱っています。

研究が​報告しているのは、​最大酸素摂取量の​変化まで

先に結論を書くと、インターバルは最大酸素摂取量の増加と結びついて報告されていますが、その値は特定の対象集団を特定の期間観察して得られたものです。

最大酸素摂取量(VO2max)とは、体が取り込んで使える酸素の量の上限で、持久的な能力を表す指標の一つ。この値が高いほどレースが速い、と1対1で対応するわけではありません。

37研究・334名を統合したメタ分析では、最大酸素摂取量が0.51 L/分(95%信頼区間 0.43〜0.60)増加したと報告されています(Bacon et al., 2013)。組み入れ条件は「健康で、座位中心からレクリエーション活動レベルまでの45歳未満」「介入期間6〜13週」「週3日以上」など。研究間のばらつきも大きい値です(I²=70)。

読み分けたい点が二つ。この0.51 L/分は練習群の前後変化を統合した値で、運動しない対照群との差ではありません。そして、すでに走り込んでいる市民ランナーや競技者は組み入れの対象に入っていません。

対照群との比較を扱ったのが、健康な18〜45歳の28件の対照試験・723名を解析したメタ分析(Milanović et al., 2015)です。対象は平均25.1±5歳、開始時の最大酸素摂取量は平均40.8±7.9 mL/kg/分でした。

最大酸素摂取量の差は、持久走と運動なしの比較で4.9 mL/kg/分(95%信頼限界±1.4)、高強度インターバルと運動なしの比較で5.5(±1.2)、高強度インターバルと持久走の比較で1.2(±0.9)と報告されている。
28件の対照試験を統合したメタ分析で報告された最大酸素摂取量の差(出典: Milanović et al., 2015)。横ひげは95%信頼限界。対象は健康な18〜45歳(平均25.1歳、開始時 平均40.8 mL/kg/分)で、競技者への推奨値ではありません。上2行は運動しない対照との比較、3行目は練習法どうしの比較で、性質の異なる推定値が同じ軸に並んでいます。

HIT と持久走の差は1.2 mL/kg/分、95%信頼限界は±0.9で、見積もりの幅が点推定と近い大きさでした。原著も図に添えたとおり、断定ではなく確からしさに段階をつけた語で表現しています。

ここまでをまとめると、上の2件が報告しているのは特定の集団における最大酸素摂取量の変化であって、ご自身のレースタイムが縮むことを示したものではありません。統合値は平均で、334名の全員が0.51 L/分ずつ増えたという意味でもない。伸びしろの大きさも、対象集団によって変わります。

始める​前に、​体の​ことを​確認する

高強度の運動は、心臓に大きな負担がかかります。米国の男性医師のコホート内で、高強度運動の最中および終了後30分以内の心臓突然死のリスクを解析した研究(Albert et al., 2000)では、その時間帯の相対リスクは16.9(95%信頼区間 10.5〜27.0)と報告されています。同時に、絶対的なリスクは高強度運動151万エピソードあたり1件であり、著者らは絶対的なリスク増加はきわめて小さく、このデータは運動プログラムへの参加を思いとどまらせるものではないとしています。習慣的に高強度の運動を行う人ほど相対リスクは小さかった、とも報告されました。対象は米国の男性医師のコホートで、市民ランナー全般に当てはまる数値ではありません。

「高強度はやめるべき」という結論ではありませんが、リスクがゼロではないことも示しています。実務的には次の3点です。

  • 心臓・血管の持病がある方、運動中に胸の痛み・強い息切れ・動悸を経験したことがある方、健診で指摘を受けている方は、高強度の練習を始める前に医療機関にご相談ください。
  • 走行中や直後に胸の痛み・意識が遠のく(または失う)・強い呼吸の苦しさがある場合は、直ちに運動を中止してください。症状が強い・治まらない・意識がはっきりしないときは、周囲に助けを求め、救急要請を含めた緊急の対応をためらわないでください。これらは注意したい症状の例であり、当てはまらなければ安全という意味ではありません。
  • 走り始めの時期に、いきなり高強度から入る組み方は勧められません。上のメタ分析の対象も、6〜13週・週3日以上の介入をこなせる健康な成人でした(走り始めの最初の1ヶ月)。

よく​ある​質問

Q. インターバル走は、何本やればいいですか。

一律の正解はありません。本数を先に決めるより、その日の狙いを一つ決めて、崩れた時点で終える組み方のほうが、あとから読める記録になります。初回は、余力を残して終われる数から始め、最後の1本を同じ質で走れるかを基準にします。研究が本数を定めたものではなく、指導上の枠です。

Q. インターバル走は、週に何回まで入れていいですか。

週1回から始める形を勧めます。週3〜4回走る方なら、強度の高い日を多くても週1〜2回に絞り、インターバルはその中の1回として置きます。ただし、これは研究が定めた回数ではありません。走歴や故障歴によって置き方は変わり、個人差があります。

Q. インターバル走を始める前に、確認しておくことはありますか。

心臓・血管の持病がある方、運動中に胸の痛み・強い息切れ・動悸を経験したことがある方、健診で指摘を受けている方は、高強度の練習を始める前に医療機関にご相談ください。走行中や直後に胸の痛み・意識が遠のく(または失う)・強い呼吸の苦しさがある場合は、直ちに運動を中止してください。症状が強い・治まらない・意識がはっきりしないときは、周囲に助けを求め、救急要請を含めた緊急の対応をためらわないでください。走り始めの時期に、いきなり高強度から入る組み方も勧められません(「始める前に、体のことを確認する」の節)。

Q. 設定タイムは、どうやって決めればいいですか。

レースの記録から各強度のペースを導く枠組みが広く使われています(書評『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』)。出てきた数字も目安で、その日の体調・気温・路面で走れる速度は変わります。インターバルで気をつけたいのは、設定タイムを守ること自体が目的になることです。

まとめと、​次の​一歩

限界を先に書きます。ここで引く研究は、市民ランナーのレースタイムを追いかけたものではありません。そのうえで要点を4つ。

  • メニューづくりは最大9つの変数の操作から成ると整理されています(Buchheit & Laursen, 2013)。ここではこれを強度・時間・回復・頻度の4つに束ね、一度に1つだけ動かします(指導上の整理で、レビューが4分類を提唱しているわけではありません)。
  • 報告されているのは特定の集団における最大酸素摂取量の変化で、対象は座位中心からレクリエーション活動レベルの成人でした(Bacon et al., 2013/Milanović et al., 2015)。レースタイムが縮むことを示したものではなく、競技者への推奨値でもありません。
  • 高強度運動の最中と直後30分の心臓突然死の相対リスクは16.9(95%信頼区間 10.5〜27.0)、絶対的なリスクは高強度運動151万エピソードあたり1件と報告されています(Albert et al., 2000。米国の男性医師コホート)。持病や胸の痛み・強い息切れの経験がある方は開始前に医療機関へ。走行中の胸の痛み・意識が遠のく感覚があれば直ちに中止し、救急要請を含めた対応をためらわないでください。
  • 初回は、準備期間を置く/頻度は週1回から/余力を残して終われる本数から、という枠を置きます(研究値の割り当てではありません)。

初回の狙いを一つだけ書き出してから走り出してみてください。「最後まで同じ入りで」でも「回復のジョグを歩きに落とさない」でも構いません。その一つが崩れた本で終える。次の本数は、その記録が決めてくれます。

関連リンク


参考文献

  1. Buchheit, M., & Laursen, P. B. (2013). “High-intensity interval training, solutions to the programming puzzle: Part I: cardiopulmonary emphasis.” Sports Medicine, 43(5), 313–338. doi:10.1007/s40279-013-0029-x
  2. Bacon, A. P., Carter, R. E., Ogle, E. A., & Joyner, M. J. (2013). “VO2max trainability and high intensity interval training in humans: A meta-analysis.” PLoS ONE, 8(9), e73182. doi:10.1371/journal.pone.0073182
  3. Milanović, Z., Sporiš, G., & Weston, M. (2015). “Effectiveness of high-intensity interval training (HIT) and continuous endurance training for VO2max improvements: A systematic review and meta-analysis of controlled trials.” Sports Medicine, 45(10), 1469–1481. doi:10.1007/s40279-015-0365-0
  4. Albert, C. M., Mittleman, M. A., Chae, C. U., Lee, I. M., Hennekens, C. H., & Manson, J. E. (2000). “Triggering of sudden death from cardiac causes by vigorous exertion.” New England Journal of Medicine, 343(19), 1355–1361. doi:10.1056/NEJM200011093431902
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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