練習の​強度配分と​週の​組み立て​——何を​・どれだけ・どう​並べるか

出典23件・すべて一次情報にリンク

走りながら腕時計を確認するランナーの線画イラスト

週に3回か4回。限られた練習を、できるだけ無駄なく使いたい——そう思って配分を調べ始めた方へ。先に結論を書くと、割合は、先に決めるものではありません。週に何回・何分走れるかが決まると、割合はあとからついてきます。この記事では、他人の配分に振り回されずに自分の週を組み立てるための材料を並べます。

「8割はゆっくり」「ハードの翌日はイージーに」。配分を調べると、こうした言い方に行き当たります。その数字は、週3〜4回走る自分にも当てはまるのか。よく見かける3つについて、研究から言えるところを先にまとめます。

よく見かける言い方研究から言えること
「8割はゆっくり」は自分にも当てはまる?もとになったのは、週11〜14回走る選手たちの記録です。週3〜4回の練習にそのまま縮小できる数字ではありません
ポラライズド型とピラミッド型、どちらがよい?決着していません。最新の統合では、全体としての差が示されていません
「ハードの翌日はイージーに」は正しい?ランナーを対象に同じ練習量で並べ方だけを比べた試験は、今回の調査では見つかりませんでした

表:この記事で扱う3つの言い方と、研究から言える範囲。3行とも本文で根拠(3つめは、根拠が見つからなかったこと)を示します。指導上の枠は、研究とは分けて後半に置きました。

順に、強度の分け方から見ていきます。

強度は​3つに​分けて​考える

まず全体像から。研究でも現場でも、練習の強度はおおむね3つに分けて扱われます。低強度、中強度(閾値付近)、高強度の3つ。境目は呼吸や血中乳酸の変わり方で決めますが、実験室での測定が必要です。市民ランナーが日常で使えるものさしは、呼吸と会話のほうになります。

強度ここで使うものさし週の中での置き方(指導上の枠)各論の記事
低強度会話ができる程度走る時間の大半LSD(ロング走)の目的とペースの目安
中強度(閾値付近)会話が途切れがちになる程度置くとしても週1回からペース走・テンポ走の考え方
高強度単語しか出ない多くても週1〜2回インターバル走のやり方と強度設定

表:3つの強度と、ここで使うものさしの対応。右2列は指導上の枠であり、研究が検証した配分の割り当てではありません。ゾーンの境目の決め方は研究ごとに異なります。

会話を目安にすることには、一応の裏づけがあります。よく鍛えられた自転車選手18名に、運動しながら文章を音読させた研究です(Rodríguez-Marroyo et al., 2013)。「明らかに話せない段階」は、実験室で測る2つめの閾値(呼吸性代償閾値)とよく対応していました(仕事率・心拍・主観的強度で相関0.88〜0.94)。「快適に話せるか怪しくなる段階」も、1つめの閾値とのあいだで仕事率・心拍・血中乳酸・主観的強度に差はありませんでした。ただし対象は自転車選手18名で、ランナーでの検証ではありません。

厄介なのは、同じ練習でも数え方で配分が変わることです。エリートのクロスカントリースキー選手29名の570セッションを、3通りの方法で集計した研究があります(Sylta et al., 2014)。心拍が各ゾーンに在った時間で数えると、ゾーン1は96.1%。そのセッションの狙いで1本ずつ分類すると、86.6%になりました(P < .001)。

同じことがランナーでも起きています。世界レベルの中長距離ランナー7名の50週間を、2通りのものさしで集計した研究です(Kenneally et al., 2021)。目標レースペースを基準に切ると88.5 / 7.4 / 4.1%、換気や乳酸の指標で切ると87.2 / 6.1 / 6.6%と報告されています。割合の数字は近く見えますが、型の判定は変わりました。レースペースを基準にすると全期間がピラミッド型、生理学的な指標で切ると、中距離の選手では時期によってポラライズド型とピラミッド型が入れ替わっています。

さらに、心拍そのものにも限界があります。持久系の練習経験者29名を対象にした試験では、速度やパワーで見るとポラライズド型、心拍で見るとピラミッド型と、同じ期間が指標によって別の形に表れました(Strepp et al., 2024)。著者らは、集中的な練習ブロック中は心拍が強度を過小評価すると指摘しています(心拍で見るときの前提はランニングの心拍数の目安)。

この記事で最初に渡したい読み方は、ここです。「80/20」という数字を見たら、まず何を、どう数えた80%かを確かめる。数え方が書かれていない配分の話は、数字が同じでも中身が同じとは限りません。

「8割は​低強度」は、​週11〜14回走る​人の​話

世界レベルの長距離ランナーの実像を、科学文献と実践の記録から統合したレビューがあります(Haugen et al., 2022)。トラック種目とマラソンの選手はいずれも週11〜14回の練習を行い、準備期中盤の走行距離はマラソンで週160〜220km、トラックで週130〜190km。そのうえで走行量の80%以上が低強度と記述されています。80%という割合と、この練習量は、同じ選手たちの話です。

「80/20」という言い方の出所は、2010年の総説です(Seiler, 2010)。ここでの80%はセッション(練習1回)の数にかかっており、練習時間の割合ではありません。対象は週10〜13回練習する競技者。さらにさかのぼると、ポラライズドという言葉が生まれた観察は、ジュニアのクロスカントリースキー選手11名を32日間追った384セッションの記録でした(Seiler & Kjerland, 2006)。心拍法でゾーン1は75 ± 3%。20年前の、11名の記録です。

ランナーに限ると、像は少し変わります。10論文をまとめた系統的レビューでは、高度に鍛えられた〜エリートの長距離ランナーは典型的にピラミッド型(ゾーン1 > ゾーン2 > ゾーン3)と整理されています(Casado et al., 2022)。同じレビューでは、マラソン選手はよりピラミッド型寄り、1500m選手はよりポラライズド型寄りとも記述されています。中強度と高強度のセッションは、それぞれ週に少なくとも1回ずつ用いられていました。

では、市民ランナーはどうか。マラソン完走者119,452名・151,813レースについて、レース前16週間の練習記録を解析した研究があります(Muniz-Pumares et al., 2025)。全体の練習量は週45.1 ± 26.4 km。最も速い群は遅い群の3倍を超える量を走っており、この群では80%を超える人がピラミッド型の配分でした。そして速い群ほど低強度の割合が高く、中強度・高強度に費やした時間は走力によらずおおむね一定だったと報告されています。この解析で速かったのは、速い練習が多い群ではなく、ゆっくり走る量が多い群だった、という読み方が原著に最も忠実です。ただし観察研究であり、ゆっくり走る量を増やしたから速くなったのか、速い人だから多く走れるのかは、このデザインでは区別できません。

市民ランナー48名(マラソン22名・ハーフマラソン26名)のレース前12週間を、GPSと心拍で実測した研究もあります(Bonato et al., 2026)。配分はゾーン1 69.1 ± 8.5% / ゾーン2 17.3 ± 5.2% / ゾーン3 13.6 ± 5.3%で、距離に関係なくピラミッド型でした。つまり、少なくともこれらの報告で見るかぎり、市民ランナーの配分はすでにピラミッド型でした。「80/20に変えましょう」の前に、いまの形を確かめるほうが順序として先です。

集団週の練習量報告された配分出典
世界レベルの長距離ランナー週11〜14回・130〜220km走行量の80%以上が低強度Haugen et al., 2022
マラソン完走者 119,452名45.1 ± 26.4 km最も速い群の80%超がピラミッド型Muniz-Pumares et al., 2025
市民ランナー48名(12週の実測)論文の要旨に記載なし69.1 / 17.3 / 13.6%Bonato et al., 2026

表:3件はゾーンの決め方も集計方法も対象も異なり、割合どうしを同じ確からしさで比べることはできません。3つを比べる表ではなく、前提条件がこれだけ違うことを示す表です。

どの​型が​よいかは、​2024〜2025年に​書き換わった

配分の型には呼び名があります。低強度と高強度に寄せるポラライズド型、低・中・高の順に少なくなるピラミッド型、中強度を厚くする閾値中心型の3つ。どれがよいかという議論は、この5年で見え方が変わりました。

2019年、ポラライズド型と閾値中心型を比べたランダム化比較試験の系統的レビューが出ています(Rosenblat et al., 2019)。統合(メタアナリシス=複数の研究の結果を統計的にまとめる方法)に入れられたのは、3研究のみでした。タイムトライアル成績ではポラライズド型が有利という結果でしたが、著者自身は「〜する可能性がある」と留保しています。「80/20は科学的に決着済み」という言い方の実体は、当時この規模でした。

2024年、17研究437名を統合したメタアナリシスが出ます(Silva Oliveira et al., 2024)。ポラライズド型が他の配分に優ったのは、4つの指標のうち最大酸素摂取量ひとつだけでした。

17研究437名を統合したメタアナリシスの推定値。最大酸素摂取量は0.24(95%信頼区間0.01から0.48)、タイムトライアルはマイナス0.01(マイナス0.28から0.25)、疲労困憊までの時間は0.30(マイナス0.20から0.79)、閾値での速度・パワーは0.04(マイナス0.21から0.29)。4つのうち3つは信頼区間が0をまたいでいる。
正の値はポラライズド型が有利。4つのうち3つは95%信頼区間が0をまたいでおり、差は示されていません。読者が最も気にするタイムトライアル(レースに最も近い指標)は −0.01 で、事実上ゼロです。差が出た最大酸素摂取量も 0.24(95%信頼区間 0.01〜0.48)で、下限は0のすぐ上にあります。著者らが「とくに大きかった」とする下位群は、12週未満の介入で 0.40(0.08〜0.71)、高度に鍛えられた選手で 0.46(0.10〜0.82)です。対象は持久系競技者全般(17研究437名)で、市民ランナーへの推奨値ではありません。出典: Silva Oliveira et al. 2024 の報告値をもとに作成

しかも著者らは、この最大酸素摂取量の差が、12週未満の短い介入と、高度に鍛えられた選手でとくに大きかったと述べています(数値は上の図のキャプションに置きました)。裏を返せば、それ以外の条件での差は、これより小さいということです。

2025年には、13研究348名を統合したネットワークメタアナリシスが出ました(Rosenblat et al., 2025)。各研究の平均値だけでなく、個々の参加者のデータまで集めて統合する方法です。結果は、ポラライズド型とピラミッド型のあいだに、全体としての差なし。最大酸素摂取量でもタイムトライアルでも、推定値はほぼゼロでした。

13研究348名の個人参加者データを統合したネットワークメタアナリシス。ポラライズド型とピラミッド型を比べた標準化平均差は、最大酸素摂取量がマイナス0.06(p=0.68)、タイムトライアルがマイナス0.05(p=0.34)で、いずれもほぼ0に位置する。一方、下位解析である市民ランナーと競技者の反応の差はマイナス0.63(p<0.05)で0から離れる。95%信頼区間は出典の要旨に記載が無いため描いていない。
上2つが、この研究の主たる問いへの答えです。最大酸素摂取量 −0.06(p = 0.68)、タイムトライアル −0.05(p = 0.34)で、どちらの配分が優れているとは言えません。いちばん下は別の問い(下位解析)で、348名のうち150名を占める市民レベルの競技者と、競技者との反応の差です(−0.63, p < 0.05)。著者らは、競技者はポラライズド型で、市民ランナーはピラミッド型でより改善する可能性があると述べています。下位解析であり、著者自身も「可能性がある」と書いています。「市民ランナーはピラミッド型にすべき」とは読めません。95%信頼区間は出典の要旨に記載がないため描いていません。出典: Rosenblat et al. 2025 の報告値をもとに作成

起点になった研究の読み方も、あわせて書いておきます。この論争の火付け役は2014年の4群比較試験でした(Stöggl & Sperlich, 2014)。48名が割り付けられ41名が9週間を完遂し、ポラライズド群の最大酸素摂取量は11.7%増加しています(P < 0.001)。ただし全文には、ポラライズド群と高量低強度群は、閾値中心群・高強度群より練習量が多かったと明記されています(P < 0.05〜0.001)。配分の差と量の差が分かれていません。比較相手の閾値中心群も46 / 54 / 0%という、高強度がゼロの設計でした。

型を固定するものと考えない立場もあります。よく鍛えられた男性ランナー60名を16週間、練習負荷を一定に保ったまま配分だけを操作した研究です(Filipas et al., 2022)。ピラミッド型、ポラライズド型、8週で切り替える2群の4群比較で、群と時間の交互作用が見られました。すべての指標で改善が最大だったのは、ピラミッド型からポラライズド型へ切り替えた群(5km走で約1.5%、交互作用 p = 0.0001)。対象はよく鍛えられた男性ランナーで、市民ランナーへの推奨ではありません。それでも「どちらの型か」ではなく「時期によって形が変わる」という見方を、実験で示した例になります。

当サイトの記事どうしの時系列も補足します。サブ4を目指す練習の組み立て方は、2015年のレビューとして「ポラライズド型で優れた反応が示された」と書いています。2015年時点の整理としては誤りではありません。その後の統合で、差が示されない指標のほうが多いと分かった——という順序で読んでください。

市民ランナーを直接調べた比較試験も、決着はつけていません。市民ランナー30名の10週間の試験では、両群とも10kmのタイムが改善し(5.0%と3.6%)、群間差は有意ではありませんでした(Muñoz et al., 2014)。市民ランナー38名で総負荷を揃えた8週間の比較でも、群間差は総練習時間以外に認められていません(Festa et al., 2020)。サブエリート12名・5か月の試験では、低強度中心の群のタイム改善が大きかったと報告されています(Esteve-Lanao et al., 2007)。ただし両群とも高強度をおよそ8%含んでおり、低強度だけで練習した群は検証されていません(詳細はLSD(ロング走)の目的とペースの目安)。

週の​並べ方に、​直接の​比較試験は​見つからない

ここは、最も正直に書く必要がある場所です。「ハードの翌日はイージーに」「高強度のあいだは48〜72時間空ける」。よく見る言い方ですが、同じ週間の負荷を、交互に並べた形とまとめて置いた形に組み替えて比べた、ランナー対象の試験は、今回の調査では見つかりませんでした。48〜72時間という数字も、一次研究に到達できていません。

近いものは、専門家の推奨です。先ほどの10論文のレビューは、ハードな日とイージーな日を交互に置く伝統的な期分けを勧めています(Casado et al., 2022)。準備期・試合前期はピラミッド型、試合期はポラライズド型へ移行する形です。ただしこれはレビューの著者による推奨であり、配置を比較した試験の結果ではありません。世界レベルの実践を記述したレビュー(Haugen et al., 2022)にも、週の中の並べ方を規定する記述は見当たりませんでした。記述がない、というだけのことです。

しかも、間接的な証拠には逆方向のものが混じっています。

  • よく鍛えられた自転車選手19名で、高強度を初週に5回集中させた形と、4週にわたって週2回ずつ散らした形を比べた研究があります(Rønnestad et al., 2014)。有意な改善は、集中させた側のみでした
  • エリートのスキー・バイアスロン選手15名で週間量を揃えた比較では、週4回の短いインターバルより、週2回の長いインターバルのほうが8kmのタイムトライアルが改善しました。ただし差はごくわずかです(効果量0.17。Tønnessen et al., 2020)
  • ブロック期分けの統合でも、最大酸素摂取量の改善が報告されています。ただし採用された研究の質は、10点満点で平均3.7点でした(Mølmen et al., 2019)

いずれも対象は自転車・スキーのエリートで、人数も一桁から十数名です。市民ランナーが高強度をまとめて置くべき根拠にはなりません。

日ごとに強弱をつけるという発想の出所は、1998年の観察です。競技者25名の練習を主観的な強度と時間から記録し、日々の負荷の変動が小さい(単調な)練習が体調不良と関連づけられました(Foster, 1998)。28年前の、25名の観察。比較試験ではありません。

つまり週の並べ方については、「研究がこう示している」と書けることがほとんどない。ここから先は指導上の判断です、と分けて書くしかない領域です。

では、​どう​組み立てるか

ここから先は、研究が検証した手順ではなく、この記事が提案として置く組み立ての枠です。走歴・故障歴・生活のリズムによって置き方は変わりますし、個人差があります。

  1. 割合より先に、回数と時間を決める。 週に何回、1回どれくらい走れるか。ここが決まらないうちに配分の話をしても、絵に描いた週になります。
  2. 速い練習は週1〜2回から。 週3〜4回走る方なら、強度の高い日を多くても週1〜2回に絞る。インターバル走ペース走・テンポ走で使っているのと同じ枠です。残りは会話ができる程度で。
  3. 一度に変える要素は1つに絞る。 量を増やすのか、速い日を1回足すのか。同時に動かすと、体の反応が何によるものか読めなくなります。量の増やし方は走る距離の増やし方、負荷の波の見方はACWRという考え方へ。
  4. 翌日のジョグで読む。 仕事帰りに走った翌朝、普段どおり足が動き出すか。その週の置き方が成立していたかどうかは、設定を守れたかよりも、翌日の入りに出ます。
  5. 本番が近づいたら、増やすより整える。 これは次の段落の観察と方向が一致しますが、そのまま当てはめる手順ではありません。

研究の側から一つ。ボストンマラソン参加者917名にレース1か月前に調査した前向きの観察研究では、直近4か月で週の練習回数を減らした人のほうが、維持・増加した人より記録が速い傾向でした(およそ3分の差、p = .035。DeJong Lempke et al., 2026)。同じ研究は、走行距離や練習回数が多い人ほど記録が速いことも同時に報告しています。自己申告のアンケートに基づく観察であり、参加標準記録を満たした集団(週64〜68km)の話です。回数を減らしたから速かったのか、仕上がっていたから減らせたのかは、このデザインでは区別できません。

週の形は決めて守るものではなく、その週の生活に合わせて置き直すものとして扱います。崩れたときに戻せる形のほうが、長い目で見て続けやすいためです。たとえば、木曜の夜に速い練習を置いていて金曜の朝がいつも重い、という形です。そういうときは、練習の中身よりも置き場所のほうを先に動かします。金曜に走れなかった週に、そのまま週末へ長い1本を足しにいく形は避けます。

高強度を扱う以上、体のことも書いておきます。心臓・血管の持病がある方、運動中に胸の痛み・強い息切れ・動悸を経験したことがある方、健診で指摘を受けている方は、高強度の練習を始める前に医療機関にご相談ください。走行中や直後に胸の痛み・意識が遠のく(または失う)・強い呼吸の苦しさがある場合は、直ちに運動を中止してください。症状が強い・治まらない・意識がはっきりしないときは、周囲に助けを求め、救急要請を含めた緊急の対応をためらわないでください。これらは注意したい症状の例であり、当てはまらなければ安全という意味ではありません。痛みが続いているときは、配分を工夫する前に医療機関へ。

まとめと、​次の​一歩

限界を先に書きます。この分野はゾーンの決め方が研究ごとに異なり、比較試験の多くは10〜60名規模です。13研究を統合した最新の解析でも、348名のうち女性は52名。日本人ランナーの配分を測った研究は、今回の調査では見つかりませんでした。そのうえで要点を5つ。

  • 「8割は低強度」は、週11〜14回・週130〜220kmを走る選手たちの観察です(Haugen et al., 2022)。週3〜4回の練習にそのまま縮小できる数字ではありません。
  • 同じ練習の記録が、時間で数えるとゾーン1が96.1%、その日の狙いで数えると86.6%になりました(Sylta et al., 2014。対象はスキー選手29名)。80/20という数字は、数え方とセットでなければ中身が定まりません。
  • 型の優劣は決着していません。17研究437名の統合でポラライズド型が優ったのは4指標のうち1つで、残る3つは信頼区間が0をまたいでいます(Silva Oliveira et al., 2024)。13研究348名の統合では、ピラミッド型との差が示されませんでした(Rosenblat et al., 2025。ただし下位解析では市民と競技者で反応が異なり、著者は「可能性がある」と留保しています)。
  • マラソン11.9万人の解析では、速い群ほどゆっくり走る時間の割合が高く、中強度・高強度の時間は走力によらずほぼ一定でした(Muniz-Pumares et al., 2025。観察研究です)。市民ランナー48名の実測配分も、すでにピラミッド型でした(Bonato et al., 2026)。
  • 週の並べ方(ハードとイージーの交互配置)を同じ量で比べた試験は、今回の調査では見つかりませんでした。ここは研究の結論ではなく、指導上の判断として扱う領域です。

来週の予定表に、「走れる回数」と「1回に使える時間」だけを先に書き込んでみてください。配分は、そこから決まります。速い日を1回置くかどうかは、そのあとで。

次に読む1本(いまの状態別)

関連リンク


参考文献

  1. Bonato, M., Villacaro, D., Faelli, E. L., Panascì, M., Marmondi, F., La Torre, A., & Filipas, L. (2026). “Training intensity distribution, load management, and performance in recreational long-distance runners.” International Journal of Sports Physiology and Performance, 21(7), 783–791. doi:10.1123/ijspp.2025-0348
  2. DeJong Lempke, A. F., Ackerman, K. E., Stellingwerff, T., et al. (2026). “Training volume and training frequency changes associated with Boston Marathon race performance.” Sports Medicine, 56(1), 243–256. doi:10.1007/s40279-025-02304-4
  3. Rosenblat, M. A., Watt, J. A., Arnold, J. I., Treff, G., Sandbakk, Ø. B., Esteve-Lanao, J., et al. (2025). “Which training intensity distribution intervention will produce the greatest improvements in maximal oxygen uptake and time-trial performance in endurance athletes? A systematic review and network meta-analysis of individual participant data.” Sports Medicine, 55(3), 655–673. doi:10.1007/s40279-024-02149-3
  4. Muniz-Pumares, D., Hunter, B., Meyler, S., Maunder, E., & Smyth, B. (2025). “The training intensity distribution of marathon runners across performance levels.” Sports Medicine, 55(4), 1023–1035. doi:10.1007/s40279-024-02137-7
  5. Silva Oliveira, P., Boppre, G., & Fonseca, H. (2024). “Comparison of polarized versus other types of endurance training intensity distribution on athletes’ endurance performance: A systematic review with meta-analysis.” Sports Medicine, 54(8), 2071–2095. doi:10.1007/s40279-024-02034-z
  6. Strepp, T., Blumkaitis, J. C., Sareban, M., Stöggl, T. L., & Haller, N. (2024). “Training intensity distribution of a 7-day HIIT shock microcycle: Is time in the ‘red zone’ crucial for maximizing endurance performance? A randomized controlled trial.” Sports Medicine - Open, 10, 97. doi:10.1186/s40798-024-00761-1
  7. Casado, A., González-Mohíno, F., González-Ravé, J. M., & Foster, C. (2022). “Training periodization, methods, intensity distribution, and volume in highly trained and elite distance runners: A systematic review.” International Journal of Sports Physiology and Performance, 17(6), 820–833. doi:10.1123/ijspp.2021-0435
  8. Haugen, T., Sandbakk, Ø., Seiler, S., & Tønnessen, E. (2022). “The training characteristics of world-class distance runners: An integration of scientific literature and results-proven practice.” Sports Medicine - Open, 8, 46. doi:10.1186/s40798-022-00438-7
  9. Filipas, L., Bonato, M., Gallo, G., & Codella, R. (2022). “Effects of 16 weeks of pyramidal and polarized training intensity distributions in well-trained endurance runners.” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 32(3), 498–511. doi:10.1111/sms.14101
  10. Kenneally, M., Casado, A., Gomez-Ezeiza, J., & Santos-Concejero, J. (2021). “Training intensity distribution analysis by race pace vs. physiological approach in world-class middle- and long-distance runners.” European Journal of Sport Science, 21(6), 819–826. doi:10.1080/17461391.2020.1773934
  11. Festa, L., Tarperi, C., Skroce, K., La Torre, A., & Schena, F. (2020). “Effects of different training intensity distribution in recreational runners.” Frontiers in Sports and Active Living, 1, 70. doi:10.3389/fspor.2019.00070
  12. Tønnessen, E., Hisdal, J., & Rønnestad, B. R. (2020). “Influence of interval training frequency on time-trial performance in elite endurance athletes.” International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(9), 3190. doi:10.3390/ijerph17093190
  13. Rosenblat, M. A., Perrotta, A. S., & Vicenzino, B. (2019). “Polarized vs. threshold training intensity distribution on endurance sport performance: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” Journal of Strength and Conditioning Research, 33(12), 3491–3500. doi:10.1519/JSC.0000000000002618
  14. Mølmen, K. S., Øfsteng, S. J., & Rønnestad, B. R. (2019). “Block periodization of endurance training – a systematic review and meta-analysis.” Open Access Journal of Sports Medicine, 10, 145–160. doi:10.2147/OAJSM.S180408
  15. Stöggl, T., & Sperlich, B. (2014). “Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training.” Frontiers in Physiology, 5, 33. doi:10.3389/fphys.2014.00033
  16. Sylta, Ø., Tønnessen, E., & Seiler, S. (2014). “From heart-rate data to training quantification: A comparison of 3 methods of training-intensity analysis.” International Journal of Sports Physiology and Performance, 9(1), 100–107. doi:10.1123/IJSPP.2013-0298
  17. Rønnestad, B. R., Hansen, J., & Ellefsen, S. (2014). “Block periodization of high-intensity aerobic intervals provides superior training effects in trained cyclists.” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 24(1), 34–42. doi:10.1111/j.1600-0838.2012.01485.x
  18. Muñoz, I., Seiler, S., Bautista, J., España, J., Larumbe, E., & Esteve-Lanao, J. (2014). “Does polarized training improve performance in recreational runners?” International Journal of Sports Physiology and Performance, 9(2), 265–272. doi:10.1123/ijspp.2012-0350
  19. Rodríguez-Marroyo, J. A., Villa, G., García-López, J., & Foster, C. (2013). “Relationship between the talk test and ventilatory thresholds in well-trained cyclists.” Journal of Strength and Conditioning Research, 27(7), 1942–1949. doi:10.1519/JSC.0b013e3182736af3
  20. Seiler, S. (2010). “What is best practice for training intensity and duration distribution in endurance athletes?” International Journal of Sports Physiology and Performance, 5(3), 276–291. doi:10.1123/ijspp.5.3.276
  21. Esteve-Lanao, J., Foster, C., Seiler, S., & Lucia, A. (2007). “Impact of training intensity distribution on performance in endurance athletes.” Journal of Strength and Conditioning Research, 21(3), 943–949. doi:10.1519/R-19725.1
  22. Seiler, K. S., & Kjerland, G. Ø. (2006). “Quantifying training intensity distribution in elite endurance athletes: Is there evidence for an ‘optimal’ distribution?” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 16(1), 49–56. doi:10.1111/j.1600-0838.2004.00418.x
  23. Foster, C. (1998). “Monitoring training in athletes with reference to overtraining syndrome.” Medicine & Science in Sports & Exercise, 30(7), 1164–1168. doi:10.1097/00005768-199807000-00023
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

記事の内容を自分の走りに当てはめて見てほしい方へ——指導のご案内(現在はキャンセル待ちでの受付です)。

← 練習法・フォームの記事一覧へ