レースタイム換算持ちタイムから、他の距離を幅で見る
いま持っている記録を、別の距離に言い換えるとどうなるか。ひとつの数字ではなく、幅で表示します。使っている係数がどこから来た数字なのかと、どの距離で外れると報告されているかも、同じ画面に出します。
これは換算であって、練習で走るペースの指定でも、レース当日に走れる速さの予告でもありません。
入力した内容はお使いの端末の中だけで計算され、サーバーには送信・保存されません。
この数字は換算です。練習で走るペースの指定でも、レース当日に走れる速さの予告でもありません。
幅は、係数の取りうる値を入れ替えて計算した結果の広がりです。この中に必ず収まる、という意味ではありません。幅の外側にも値は続きます。
この幅は、性格の違う2つの数字からできています
換算に使う係数(疲労係数k)には、出どころの違う2組の値があります。どちらかが正しい値というものではないため、両方を並べて表示します。
この数字を、どう読むか
- 換算値は、目標ではなく現在地の別の表し方として置く。「その日に走れる速さ」ではなく、「いまの走力を別の距離で言い換えるとこうなる」という読み方に寄せます。
- 幅の広さは、当たる確からしさではありません。係数を動かすとどれだけ数字が動くかを示したものです。当日の気温・コース・単独走か集団の中だったかは、この計算に入っていません。
- 換算値に届かないことは、練習が足りないことを意味しません。これは記録に係数をかけた算術の結果であって、達成すべき基準ではありません。
この3点の根拠と、それぞれの研究がどこまで確かめたのかはレースペースの決め方——持ちタイムから何が分かるかにまとめています。
この数字を確かめるために記録を取り直そうと考えたときは、その1本も全力走です。心臓・血管の持病がある方、運動中に胸の痛み・強い息切れ・動悸を経験したことがある方、健診で指摘を受けている方は、走る前に医療機関にご相談ください。
この換算から先、練習をどう決めるか
このツールは、練習で走るペースを出しません。記録から各強度のペースを導く枠組みはいくつも公開されていますが、その枠組みに沿って練習した群としなかった群を比べた試験は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。数字を出せてしまう以上、出さない理由のほうを書いておきます。
そのうえで、練習の強度を決めるときに何を見るかは、種類ごとに記事にしてあります。
- 練習の強度配分と週の組み立て——週の中に、強い日と楽な日をどう置くか
- LSD(ロング走)の目的とペースの目安——ゆっくり走る日に、何を見るか
- ペース走・テンポ走の考え方——閾値付近の一本を、時間で管理する
- インターバル走のやり方と強度設定——高強度を入れるかどうかの判断から
- ランニングの心拍数の目安——心拍を見てペースを決めるときの前提
- マラソン後半の失速はなぜ起こるのか——換算値どおりに入って崩れる側の話
- レース当日のチェックリスト——当日の段取り
- 対面指導: パーソナル指導 S&C/ランニング(キャンセル待ち)——自分の練習として組み立てるところまで
使っている式と係数
換算には T2 = T1 ×(D2 ÷ D1)kを使っています。T1が持っている記録のタイム、D1がその距離、D2が知りたい距離、T2がその見積もりです。kは疲労係数と呼ばれ、距離が延びるにつれて速度がどれだけ落ちるかを表す量と説明されています。
このツールでは、kを1つに決めていません。出どころの違う2組の値を使い、その両方を含む幅として表示しています。
- 1.06〜1.08——市民ランナー2,303名(インターネットでの自己申告。女性890名、年齢の中央値35歳)の記録で、予測と実測のそろい方を調べた研究が使った値です。1.06は世界記録から導かれた値と記述され、1.08はリーゲルがエリートに挙げた値として引用されています(Vickers & Vertosick, 2016/Blythe & Király, 2016)。なお1.06の出どころについて、2本の論文の記述は完全には一致していません。
- 1.10〜1.15——英国の公式競技記録164,746名・1,417,432記録から、ランナー一人ひとりの係数を推定した結果の分布です(中央値1.12、5・95パーセンタイル1.10〜1.15)。主要な解析は男性101,775名で、著者は対象を英国のランナーの上位25%と記述しています。女性の分布は示されていません(Blythe & Király, 2016)。
この2組目の使い方は、論文がやったことではありません。一人ひとりの係数を集めた分布を、そのまま「一人の予測がどれだけ動きうるか」の幅として当てはめたのは、当サイトの判断です。あなたの係数を測った数字ではありません。また、日本人ランナーの係数を推定した研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。
この幅は、外れ方の全部ではありません。マラソンで予測が速い側に外れると報告されているずれは、係数の取り方とは別の原因で生じます。予測式そのものも1本に絞れる段階になく、マラソン成績の予測式を集めた系統的レビューは36研究から114の式を同定し、推定の標準誤差は0.27分から27.4分まで報告されています。著者らの結論は、すべてのランナーに正確な単一の式は存在しない、というものでした(Keogh et al., 2019)。
入力できるタイムの範囲は、入力ミスを見つけるためのものです。式が使える範囲を示したものではありません。リーゲル式の適用範囲を時間で示した一次情報には、今回到達できていません。
出典
- Blythe, D. A. J., & Király, F. J. (2016). "Prediction and quantification of individual athletic performance of runners." PLOS ONE, 11(6), e0157257.doi:10.1371/journal.pone.0157257
- Vickers, A. J., & Vertosick, E. A. (2016). "An empirical study of race times in recreational endurance runners." BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation, 8, 26.doi:10.1186/s13102-016-0052-y
- Keogh, A., Smyth, B., Caulfield, B., Lawlor, A., Berndsen, J., & Doherty, C. (2019). "Prediction equations for marathon performance: A systematic review."International Journal of Sports Physiology and Performance, 14(9), 1159–1169.doi:10.1123/ijspp.2019-0360
- Riegel, P. S. (1981). "Athletic records and human endurance." American Scientist, 69(3), 285–290.PMID: 7235349(査読誌ではなく科学一般誌。今回の調査では本文に到達できていません)