ランニングフォームの​基本——接地と​重心に​ついて、​研究が​示している​範囲

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姿勢を確かめて立つランナーの線画イラスト

かかとから着くのか、前足部から着くのか。ランニングの着地はどっちが正しいのか、はっきりさせたいと思って調べた方は多いはずです。先に結論を書くと、レースで実際に数えた調査では、速い集団でも踵から接地する走り方が多数派でした。この記事では、自分の着地を変えるべきかどうかを、いまの状態から判断するための材料を示します。

フォームの話題で最初に挙がりやすいのが、この着地です。国際レベルのハーフマラソンで分類された283名のうち、踵接地は74.9%。4人に3人でした(Hasegawa et al., 2007)。

かかとと​前足部、​どっちで​着地しているのか

まず、言葉をそろえておきます。

接地パターンは通常、かかとから着く踵接地(リアフット)、足の中ほどから着く中足部接地(ミッドフット)、母趾球のあたりから着く前足部接地(フォアフット)の3つに分けられます。

冒頭の数字は、オリンピアンを含む国際レベルの選手のハーフマラソンで、15km地点の283名を分類した調査のものです(Hasegawa, Yamauchi & Kraemer, 2007)。内訳は踵接地74.9%、中足部接地23.7%、前足部接地1.4%。通過順で最上位の50名でも62.0%・36.0%・2.0%で、踵接地が多数派でした。速い群ほど中足部接地の割合は高く、著者らは接地パターンは走速度と関係していると述べています。

国際レベルのハーフマラソン15km地点で分類された283名では踵接地74.9%・中足部接地23.7%・前足部接地1.4%、最上位50名では62.0%・36.0%・2.0%。いずれの群でも踵接地が多数派。
国際レベルのハーフマラソン15km地点で分類された接地パターンの割合(出典: Hasegawa, Yamauchi & Kraemer, 2007)。速い群ほど中足部接地の割合が高い一方、どちらの群でも踵接地が多数派です。同一の研究の中での群の比較であり、他の研究の割合と並べたものではありません。特定の接地パターンを推奨する図ではありません。

市民〜サブエリート中心の936名を10km地点で分類した調査では、踵接地88.9%、中足部接地3.4%、前足部接地1.8%、左右で接地が異なる非対称5.9%(Larson et al., 2011)。マラソン参加者286名では32km地点で踵接地の頻度が増え、接地パターンとレースタイムとの間に有意な関係は見られなかったと報告されています。

この2つの調査は、対象も地点も分類の枠組みも異なります。割合を横に並べて「エリートは◯%、市民は◯%」と比べることはできません。またHasegawaの結果は速度の異なるランナー群の横断比較で、同じ人が速度を変えたときの変化を直接示したものではありません。読み取れるのは、接地は速度や疲労と関連して変わりうるという点です。

「正しい​フォーム」は、​研究では​決まっていない

ランニングエコノミーとは、一定の速度で走るのに必要なエネルギーの量です。同じ速度をより少ないエネルギーで走れる状態を「経済性が高い」と表します(筋トレとランニングエコノミー)。

走りの動作と経済性の関係を整理した総説(Moore, 2016)は、上下動が小さいこと、腕振りを維持することなど、有利と見られる要因を挙げています。ただし同総説は、他の多くの動作要因は経済性と一貫しない関係を示したとし、異なる集団どうしの横断比較、変数を単独で取り出した評価、急性〜短期の介入という方法論上の問題から、一般的な経済的ランニング技術を推奨することには慎重に取り組むべきだと結論しました。

挙げられた要因は検証された手順ではなく、関連が報告された要因の整理です。抄録に並ぶ中に、接地パターンは含まれていません。扱われているのは経済性であって、故障の起こりにくさでもレースの記録でもない。

前寄りに​変えると、​負担は​消えるのではなく​移る

踵接地と非踵接地(中足部・前足部接地)を比べた53件の研究を統合した体系的レビューとメタ分析(Anderson et al., 2020)は、故障していない踵接地のランナーに接地パターンの変更は勧められないと結論しています。理由は、故障リスクとの関係が後ろ向きの研究に限られて判定できないこと、経済性の改善を支持するエビデンスがないこと、そして負荷のかかる場所が移ることです。

前寄りの接地では、膝側の一部の力学指標が下がる一方、足関節・足関節底屈筋側の力学的要求が高くなると報告されています。負荷をなくす変更ではなく、行き先を動かす変更です。報告された数値は下の表にまとめました。

領域Anderson et al., 2020(53研究)で報告された内容
故障後ろ向きに調べた研究では、非踵接地は反復性ストレス障害の報告率の低さと関連(軽度 SMD 3.25[95%信頼区間 2.37〜4.12]、中等度 3.65[2.71〜4.59]、重度 0.93[0.32〜1.55])。著者らはいずれも「限られたエビデンス」と位置づけ、前向きに比較した研究は不足していると明記
経済性習慣的な踵接地と非踵接地のあいだでは、時速10.8〜11.0km・12.6〜13.5km・14.0〜15.0kmのいずれでも差なし。踵接地の人に非踵接地を課した直後は、時速10.8kmと12.6kmでむしろ低下(SMD −1.67[−2.82〜−0.52]、−1.26[−2.42〜−0.10])
力学非踵接地は垂直方向の負荷率(平均・ピーク)が低く、膝の屈曲可動域が小さく、膝蓋大腿関節にかかるストレスが小さい。一方で足関節の底屈筋がつくるモーメントのピークは大きい

表:接地パターンを比べた統合結果(出典: Anderson et al., 2020)。標準化平均差(SMD)は、単位の異なる測定値どうしを比べられるようにそろえた、効果の大きさの指標です。後ろ向きの調査はすでに故障した人に過去を尋ねる形になるため、原因と結果の順序を確かめられません。特定の組織の故障につながるかを検証したものでもありません。

関連する部位の一般情報はアキレス腱の張り・痛みと負荷の管理シンスプリントで、道具の側で同じ構図が起きる話はランニングシューズの選び方で扱っています。すでに痛みがある状態で接地を自己流に変えるのは、負荷の行き先を動かす操作になるため勧められません。

着地の​型より​先に、​歩数を​見る

ここから先は、研究が検証した手順ではなく、指導上どう扱っているかの話です。個人差があります。

故障していない方の着地には、無理に触らないことを勧めます。変えて得られるものは研究で示されていない一方、負荷の行き先が変わることは示されているからです。触るとしたら、型より先に歩数から入ります。

健康な市民ランナー45名が、速度を保ったまま歩数を±5%・±10%変えた研究(Heiderscheit et al., 2011)では、歩数を増やした条件で膝が受け止める力学的エネルギーが減り、歩幅、重心の上下動、ブレーキ方向の力積、膝屈曲角のピークも減ったと報告されています。測られたのは直後の力学的な変化であって、故障が減るかどうかではありません。測り方と変え方はピッチとストライドにまとめています。

上下動は歩数の結果として動く量です。「跳ねないように」と主観で抑えにいくより、歩数を手がかりにするほうが扱いやすくなります。たとえば火曜の夜、駅からの帰り道の200mだけ歩数を上げてみる。そのくらいの区間から入る形を勧めます。一度に何か所も変えると、どこが効いたのか本人にも分からなくなります。変えるのは一度に一つ、短い区間からにします。

姿勢と腕振りは、直しにいく対象というより崩れを見る窓です。終盤に肩が上がる、腰が落ちる。その日の負荷が上限に近いサイン。支える土台は体幹トレーニング走る人の下半身の筋トレで扱っています。

なお、初心者ランナー320名を無作為に2群へ割り付けた試験では、計測器つきトレッドミルで自分の走りに関する情報をその場で表示されながら走った群の12か月後の故障発生が16%、表示なしの群が38%でした(Chan et al., 2018。ハザード比0.38、95%信頼区間 0.25〜0.59)。ただし機器と指導つきの介入で、接地パターンを変える介入でも、自己流でフォームを変えることを検証したものでもありません。

押すと一点が痛む、腫れがある、走るたびに痛みが強くなる、数日休んでも引かない。こうしたときは、フォームを調整する前に整形外科などの医療機関にご相談ください。これらは例示であり、当てはまらなくても痛みが続くときは受診をご検討ください。

よく​ある​質問

Q. かかと着地と前足部着地、どっちが正しいのですか。

一律にそう言える根拠は見当たりません。レースで実際に数えた調査では、国際レベルの283名でも踵接地が74.9%と多数派でした(Hasegawa et al., 2007)。走りの動作と経済性を整理した総説の一覧にも、接地パターンは含まれていません(Moore, 2016)。「正しい型」がまず決まっていて、そこへ寄せていく、という構図にはなっていないのが現状です。

Q. 前足部接地に変えたほうが、ケガをしにくくなりますか。

53件を統合した体系的レビューは、故障していない踵接地のランナーに接地パターンの変更は勧められないと結論しています(Anderson et al., 2020)。前寄りに変えると膝側の一部の力学指標は下がりますが、足関節・底屈筋側の要求は高くなります。負荷が消えるのではなく、行き先が移る変更だと報告されています。接地パターン間で故障リスクを前向きに比較した研究は不足しており、どちらが安全かは断定できません。

Q. フォームを直すなら、まず何から見ればいいですか。

ここは研究が定めた順番ではなく指導上の扱いですが、この記事では着地の型より先に歩数を見ることを勧めます。歩数を増やした条件で、膝が受け止める力学的エネルギーや重心の上下動が減ったという報告があるためです(Heiderscheit et al., 2011)。姿勢と腕振りは、直しにいく対象というより崩れを見る窓として扱っています。歩数そのものの測り方と変え方はピッチとストライドにまとめました。

Q. いま痛みがあるのですが、フォームを変えて様子を見てもいいですか。

押すと一点が痛む、腫れがある、走るたびに痛みが強くなる、数日休んでも引かない。こうしたときは、フォームを調整する前に整形外科などの医療機関にご相談ください。これらは例示であり、当てはまらなくても痛みが続くときは受診をご検討ください。

まとめと、​次の​一歩

  • 接地パターン間で故障リスクを前向きに比較した研究は不足しているため、どちらが安全かは断定できません。そのうえで53件を統合した体系的レビューは、故障していない踵接地のランナーに変更は勧められないと結論しています(Anderson et al., 2020)。負荷は膝側から足関節・底屈筋側へ移ると整理されています。
  • レースで数えた調査では、国際レベルの283名で踵接地74.9%、最上位50名でも62.0%、市民〜サブエリート中心の936名で88.9%(Hasegawa et al., 2007/Larson et al., 2011)。対象も地点も分類の枠組みも違う調査どうしで、割合を横に並べて比べることはできません。
  • 総説は、一般的な経済的ランニング技術を推奨することには慎重であるべきと結論しています(Moore, 2016)。抄録の一覧に接地パターンは含まれていません。
  • 着地の型より先に歩数を見ることを勧めますが、これは研究が定めた順番ではなく指導上の扱いです。歩数の操作で膝の受け止めるエネルギーや上下動が減ったという報告はありますが、故障の減少を検証したものではありません(Heiderscheit et al., 2011)。

次のジョグで30秒だけ歩数を数えてみてください。着地の型をどうするかは、その数字を見てからでも遅くありません。変えるなら一度に一つ、短い区間から。痛みがあるときは、フォームを調整する前に医療機関にご相談ください。

関連リンク


参考文献

  1. Moore, I. S. (2016). “Is there an economical running technique? A review of modifiable biomechanical factors affecting running economy.” Sports Medicine, 46(6), 793–807. doi:10.1007/s40279-016-0474-4
  2. Hasegawa, H., Yamauchi, T., & Kraemer, W. J. (2007). “Foot strike patterns of runners at the 15-km point during an elite-level half marathon.” Journal of Strength and Conditioning Research, 21(3), 888–893. doi:10.1519/R-22096.1
  3. Larson, P., Higgins, E., Kaminski, J., Decker, T., Preble, J., Lyons, D., McIntyre, K., & Normile, A. (2011). “Foot strike patterns of recreational and sub-elite runners in a long-distance road race.” Journal of Sports Sciences, 29(15), 1665–1673. doi:10.1080/02640414.2011.610347
  4. Anderson, L. M., Bonanno, D. R., Hart, H. F., & Barton, C. J. (2020). “What are the benefits and risks associated with changing foot strike pattern during running? A systematic review and meta-analysis of injury, running economy, and biomechanics.” Sports Medicine, 50(5), 885–917. doi:10.1007/s40279-019-01238-y
  5. Heiderscheit, B. C., Chumanov, E. S., Michalski, M. P., Wille, C. M., & Ryan, M. B. (2011). “Effects of step rate manipulation on joint mechanics during running.” Medicine & Science in Sports & Exercise, 43(2), 296–302. doi:10.1249/MSS.0b013e3181ebedf4
  6. Chan, Z. Y. S., Zhang, J. H., Au, I. P. H., An, W. W., Shum, G. L. K., Ng, G. Y. F., & Cheung, R. T. H. (2018). “Gait retraining for the reduction of injury occurrence in novice distance runners: 1-year follow-up of a randomized controlled trial.” The American Journal of Sports Medicine, 46(2), 388–395. doi:10.1177/0363546517736277
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人に対する医学的助言・診断・治療を目的とするものではありません。体調や既往症に不安がある方は、必ず医師等の専門家にご相談ください。運動実施による結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。

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